私の人生に貴方はもういらない

三同もこ

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大金持ちになった私

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「ジョアンナには言わなかったが、ヴィジエールがここへ来ても恐らく上手くはいかなかっただろうな」
「あら、どうして?」


 レオンの馬に乗せて貰いながら、ジョアンナはレオンに聞く。
 先程、レオンからプロポーズされた時にはパニックになってしまったけれど、今ではもうすっかり元通りだ。
 レオンは、返事は急がないと言ってくれた。
 ジョアンナはホッとする。
 正直、婚約が解消されたばかりで直ぐに結婚は考えられなかったし、レオンはジョアンナの家族みたいな人で、大切だけど急に一人の男性として見る事なんて難しかった。

「直ぐに選べなんて言わないけど、忘れないでくれ」

 そう耳元で囁かれた時、心臓が跳ねたのは気付いていたけれど。

(私って惚れっぽいのかしら?)

 自分のチョロさに少々不安を感じながら、いつも通りに戻ってくれたレオンに馬へ乗せて貰った。
 先ほどはドキドキしていたけれど、レオンとくっついているのは安心できる。
 屋敷に戻る道中、すっかり寛いでいたジョアンナに、レオンはヴィジエールの事を話し始めた。

「ヴィジエール様は色々と男爵領の事を考えてくれていたと思うけど…」
「それは少し違う。アイツは男爵領の事を考えていた訳じゃない。アイツは自分の事ばかり考えていた」

 レオンは顔を顰める。

「自分だったらこうする、ああする…そう言って、働いている領民たちの仕事に口を出していた。でも、それは全部実現できるような事ではなかった」
「どういう事?」
「例えば、傾斜を均して、大掛かりな農業地帯を作るとか言っていたな。最先端の機械を導入すれば、直ぐに実現可能なんだとさ」
「へぇ、成程………それで、そのお金は? 機械も均す為の人件費も掛かると思うけど」
「それは全く考えてない」
「え?」
「つまり、そういう事。アイツはこの領に何が必要かは分かってる。そのやり方も知ってるんだろう。だけど、理想を追うばかりで余りにも現状が見えていない。一度オレが、じゃあどうやってやるんだ? 機械を買ってくれるのか? って聞いたら、だんまりだった。それは男爵が用意するべきもので、アドバイスしただけだと抜かしやがる。口先で言うだけなら、誰だってできるさ」
「ああ、そうだったんだ…」

 いつも真剣な顔で話してくれてたから、きっと実現させるための方法まで掘り下げてくれているんだと思っていた。まさか、全く考えていなかったとは。

「それに一生懸命働いている領民たちにいつも上から目線で駄目出ししてたしな。自分では何一つせずにだ。お前に気を遣って誰も何も言わなかっただろうけど、相当不満は溜まってたぜ」
「そうだったんだ…」

 何も知らなかった。
 殆ど領にいなかったレオンすら皆の不満を知っていたのに。

「私、駄目な領主だね」
「ジョアンナは駄目なんかじゃないさ。勿論、ディンプル男爵家も。いつだって一生懸命領民の事を考えてくれてる。だからこそ皆、貧しくてもここの領が好きなんだよ。まぁ、男を見る目はダメダメだったけどな」

 レオンはそう言って、笑いながら頭をグシャグシャと撫でてくれた。
 ちょっと痛かったけど、少しだけ沈んでいた気分が向上する。

「レオン、この領に何があればいいかな? どうすれば皆を幸せに出来るだろう?」
「そうだなぁ…ザックリ言えば、何か名産品とか名物とか、名所とかあればいいんだけど。何もないしな、ここ」
「例えば、鉱山から新しい特産品が発掘されたり、突然変異のとっても美味しい果実が取れたり?」
「そうだったらいいのにな。後は、湖に何かお宝が隠されてたり、温泉が吹き出たり?」
「凄い! それなら、あっという間に領を立て直せちゃうね!」
「ははは、そうだな」


「お、おおお、お嬢様ぁぁぁぁぁ!! 間違えた! ご領主様ぁぁぁぁぁぁ!!」


 二人で夢みたいなことを話していると、屋敷の方からハンスが物凄い勢いで走って来た。

「た、大変です! 大変ですぞ!」
「ど、どうしたのハンス?」
「ハンスの爺さん、そんなに慌てると怪我するぞ」

 私が馬から降りると、ハンスは凄い勢いで私を引っ張っていく。
 私とレオンが驚きながら屋敷へと入ると、そこには戸惑いながらも満面の笑みを浮かべた領民たちが集まっている。

「え、皆、どうしたの?」
「お嬢様…いえ、ご領主様」
「は、はい!」

 緊迫した雰囲気に、真面目な顔で答えれば、次いで領民たちは次々に叫ぶように話し始めた。


「すっかり掘り尽くしたと思っていた鉱山から、新たに希少な宝石が掘り出されました!ドサドサどんどんと発掘されてます!!」
「今日、畑を見て回っていたら、見た事もない美味しそうな果物があって、食べたらまるで夢の様な美味しさで…これっ、これです!!」
「魚もいないとガッカリしていた湖が塩湖という塩が取れる湖だと判明しました! それも、現在の最高品質の塩より更に良いものが取れる可能性が!!」
「温泉です! お嬢様、温泉が湧いてきたんです! 作物も育たない不毛な土地だと思っていた場所を自棄になって掘り返していたら温泉がコンコンと湧き出してきたんです――――!!」
「え、えええええええええええ!!?」


 帰省して一週間。
 気が付けば、金持ちになっていたようです。
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