私の人生に貴方はもういらない

三同もこ

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頼もしい助っ人を手に入れた私

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 ジョアンナが領地に戻って一ヶ月が経った。
 その間、鉱山からはドンドンと希少な宝石の原石が掘り起こされ、畑で発見された突然変異の果物は葉を広げて多くの実を付け、塩湖も温泉も枯れる様子はなく、コンコンと湧き出し続けている。

「―――さて。これをどうしたら皆が豊かに暮らせるかな?」

 ジョアンナは毎日そんな事を考えていた。
 それをレオンは優しく見守っている。

「ジョアンナがやりたいようにすればいいさ。皆もそれを望んでいるからな」

 レオンが何でもないようにそんな事を言う。
 領民も皆、ジョアンナに従うと言っていた。
 だから、今日もジョアンナは一生懸命頭を捻るのだ。


「宝石の原石や果物を売りたいけれど、信用できる商人に伝手なんてないし…塩を精製したいけど知識もない。温泉も今は領民たちが使うだけ…どうしたらいいのかしら…?」


「それならば、我が商会がお役に立てるでしょう」
「え?」
「げっ!」


 澄んだ声が部屋に響き渡る。
 振り返ったジョアンナは、顔を綻ばせた。

「ナタリー! 帰って来ていたの?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません、ジョアンナ様。ディンプル男爵の継承、誠におめでとうございます」
「何しに来たんだよ、姉貴」

 レオンが嫌そうな顔をすれば、レオンの姉であり、プレジール商会の跡取りであるナタリーはニヤリと笑う。

「何しに来たとはご挨拶だな、レオン。騎士になっても、お前はちっとも礼儀がなっていない」
「イタタタタタ! こ、この暴力女! だから、嫁に行けないんだよ!」
「はっはっは、そんなに姉に逢えて嬉しいか。そうかそうか」
「割れる割れる! 頭から手を放せ! 割れるから!」

 ギリギリとレオンの頭を掴んでいたナタリーは、ニコニコと姉弟を見守るジョアンナに、恭しく跪いた。

「ジョアンナ様、益々お美しくなられましたね。お会いできて光栄です」
「ナタリーも益々素敵になったわ! まるで王子様みたいよ!」

 興奮したようにジョアンナが言えば、ナタリーは二ッと凛々しく笑う。
 ナタリーは弟のレオンと同じく、整った中性的な美貌を持つ女性だ。
 だが、その仕草は女性というより男性寄りで、女性にしては少し低めの声で囁かれると誰もが腰が砕けると言われる様な美男子ぶりだった。
 そんなナタリーに普通に対応できるのは、家族とディンプル男爵家のもので、それ故、昔からナタリーはジョアンナを実の妹のように可愛がっている。

「ナタリーも、お祝いに駆け付けてくれたの?」
「ああ、勿論。それから、何か力になれないかと思ってきたんだが、丁度良かったみたいだね」

 ナタリーはジョアンナの手と取り、楽しそうな目でジョアンナを見つめた。

「我がプレジール家はディンプル男爵家に返しきれない程の恩がある」
「それは違うわ。いつだって、プレジールの方達は私達を助けてくれている。感謝しているのは私達の方だもの」
「いいや。ジョアンナ、それは違うよ。ディンプル男爵家こそ、大商会と謳われるプレジールが唯一忠誠を誓う家だ。父は貴女の御父上に何度も助けられた。母は貴女の御母上に。祖父も祖母も―――そして、私達姉弟も」

 ナタリーは堂々と胸を張って言う。


「今こそ、恩を返す時。父はそう言って私をここへ送った。――――全てはディンプル男爵家と、ジョアンナ様の為に」


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