謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く 【R18】

弓月

文字の大きさ
6 / 143
第一章

入隊

しおりを挟む



「聞いてくれ貴族さま!」

「客足が遠のいて仕事にならない!なのに今月ぶんの支給は無しだなんて…うちの村はみな飢え死にだ。麦がねぇと家畜も死んじまう!」


 青年が王都ジゼルの中心部に近付くと、とある門の前に人だかりができていた。

「待て、貴様」

 腕や身体に押しつぶされながら前列に飛び出した時、槍を持った二人の近衛兵が青年の前方に現れた。

「この先へ行けると思うな。ここはクオーレ地区。貴様ら平民は立入禁止だ」

「貴方は?」

「俺はこの門を警備している。見ての通り、食糧を寄越せとコジキ共が群がってくるのでな。貴様もそれが目的だろうが」

「食糧……なるほど」

「…貴様…ここでは見ない顔だな…。外の村から来たのか?」

「そうですね。それなりに、遠くから」

「なら無駄骨だったというわけだ。大人しく諦めて帰るがいい」

 追い返そうとした衛兵だったが、青年はひるまず話しかける。

「僕は志願兵です」

「志願?ああ民兵か。それなら駐屯地はジゼルではなく隣のウッダ村だ、マヌケ者」

「いえ……民兵ではなく近衛兵に」

「は?」

 門に手をかける人々を押し返しながら、衛兵は呆れた声をあげる。

「何を寝ぼけた事を言っている」

「寝ぼけてはおりません」

「近衛隊は、我ら子爵や男爵から構成される由緒正しき兵団であるぞ!王族に遣える者として、幼き頃より教育を受けてきた。貴様のような薄汚れた小僧が夢見たところで、叶うわけもないわ」

「ですが」

「チッ……帰らない気か……
 ええい!うっとおしいコジキ共め!」

 いくら押し返せど諦めない人々に痺れを切らした衛兵が、力任せに槍を振るった。

「これ以上手をかけるようなら片っ端から切り捨てるぞ!」

 衛兵の大声に怯えて、人ごみは四方に散っていった。



 一気に静かになった門の前で、残ったのは青年だけだ。

 二人の衛兵はますます呆れた様子だ。

「まだ諦めないか?切り捨てられたいか」

「いいえ、僕は殺されに来たわけではありません。ただ入隊を認めて頂けるまでは帰れない」

「生意気な奴だ。いったい誰の入れ知恵か知らんが……

 ──…待て、その手にあるのは何だ?」

 衛兵が槍の先を青年に向けた時だった。

 青年は一通の手筒テガミを取り出したのだ。


「──…僕宛に届けられたものです」

「それは…」


 手筒を衛兵へ差し出す。

 赤い封蝋フウロウに刻まれた紋章を見た衛兵達が顔色を変えた。

「推薦状だな──…。何故貴様がこれを持っている?」

「ですから、送られてきたのです。送り主の名はわかりませんでしたが」

「……」

 確かに、送り主の名は書かれていなかった。

 例外的にではあるが、貴族がこうやって気に入った者を隊に推薦する事があるのだ。それを許されているのは伯爵以上の高貴な身分の者だけだ。


「──…『 シアン 』

 ここに記されているのが、貴様の名か?」


「……ええ、間違い御座いません」


《 ──して、シアンと名乗る此の者を、近衛騎兵師団へ推薦するものとする 》


 短い文面の最後はその一文で締めくくられていた。

 そこに記された通り、青年は自らを『シアン』と名乗った。

 家名を持たぬ身分故──ただ、シアンとのみ答えるしかない。

「上官殿へつないでもらえませんか」

「……!」

 衛兵達が手筒を読み終えて少しの沈黙が流れた。

 そして互いに顔を見合わせた彼等は、どういうわけか、突然笑い出す。

「……くくく」

「……」

「ああそうかそうか!疑って悪かったなぁ新人!案内してやろう。付いて来い」

 突然機嫌をよくしたひとりが、もうひとりをその場に残して門の中へ進んだ。

 青年──シアンというその青年は、何食わぬ顔で後へ続く。

 門の内側はクオーレ地区と呼ばれる貴族の居住地だ。

 爵位を持たない者は住むことを許されず、仕事をこなす間だけ、例外的に足を踏み入れられる場所。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...