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第十四章
捨て置きたモノ
しおりを挟む「──…さて、拷問の時間だ」
話が終わりタラン侍従長が片手で合図を送ると、後ろに控えていた王宮警備兵の男ふたりが牢に入った。
「全て引き剥がせ」
「は!」
男達はシアンを牢の中心へ引ったて、かろうじて残っていた衣服の残骸を奪っていく。
ビリ!ビリ ビリ!
左の義手を残し丸裸にされたシアンは、うつ伏せで転がされた。
「侍従長様!やはり書状は見当たりません」
「そうか。まぁよい、続けろ」
晒された肌を、男の持つ鞭が襲う。
鞣された皮を使ったその鞭は、細くなるよう編みこまれ、よって受ける痛みも強い。
「‥…ッ‥!!」
シアンが喉の奥で呻いた。
「死ぬ前に教えろ…──ハナム王妃に渡された書状はどこだ?」
「ハァッ‥ハァッ‥」
「近衛兵宿舎で貴様の部屋の中を探させたが、それらしき物は出なかった。今も持っていないとなると…何処かへ隠したな」
「…‥そ‥…んな物‥‥僕は、知らない」
「嘘は良くない」
「‥ぅあ゛!!」
タランが顎をしゃくると、また鞭が飛んだ。
打たれた箇所は赤色に浮き上がる。シアンの肌に蛇のような模様を刻んだ。
「王妃との密会現場は見張らせていたと伝えたろう…。そこで貴様が受け取ったもの。九年前に貴様を陛下の寝室へ呼び寄せた物だ。言え」
「……っ……罪を認めるおつもりか」
「それ以前の問題だ。ハナム王妃の思惑が何であれ…私の足枷になりようものなら早めに詰んでおく」
「貴方ともあろう人が……余裕が 無いですね」
「そうか?そうやもしれぬな……ククク」
シュッ─バシ!
バシ!
「ぐァ‥!!」
「私はこれでも動揺しているのだ……!殺したハズの王弟殿下が、のこのこと戻ってきたと知り」
「ハァハァ‥‥ッ‥‥!?」
「今日は一日反省したとも。あの近衛兵──バヤジットが " 指 " のひとつを切り落として戻った時、すぐにでも追手をかけるべきであった。どうせ野垂れ死ぬと見誤った…私のミスだ」
“ 初めの五年間…音沙汰がなかったため、やはり王弟は死んだのだと見誤った ”
“ 仮に生き長らえたとして、なんの脅威にもなり得ぬ小僧だと、見誤った ”
“ 命の危険を犯してまで王都に戻るはずが無いと、見誤った ”
タラン侍従長は己の過失を反省した。余裕な態度をよそおいながら、その心中は完全に穏やかとはいかない。
今、九年も前に謀殺した王子が、王都…クオーレ地区の中枢にまで潜り込んでいる。これが現実だ。
肌の色も髪の色も当時の面影はない。その為に《 神に捨てられた子 》としての道を選んだと考えればつじつまが合う。
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何よりも信じられないのが、王族という高貴な生まれの少年が《クルバン》という最底辺の扱いを…自ら選んだコトである。
“ 復讐への執念──…いや、狂気か ”
人心を手玉に取る切れ者のタランでさえ、まったく予想しえない狂気だったのだ。
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