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第十四章
捨て置きたモノ
しおりを挟むさぁ、絶望しろ
傷を負い…腫れた顔を覗き込む。
シアンは瞼をおろしており、タラン侍従長と視線が合うことはなかった。
だが耳はしっかり聞き取った筈だ。
王弟がずっと幼い頃から、すでにタランの計画は始まっていたのだと。
彼を貶めんとする者の手で、王位継承権を手放す前から…カラダは王族として否定されていたのだと。
王族として……いや、男として、人として
不完全な " 何者か " に、成り下がっていたのだと。
「‥‥‥‥‥クク」
では何故この男は、それでも王弟を殺そうと目論んだ?
「クッ…ククク……──ははははははは!!」
「……は?」
「ハッ!‥クク、ははっ、はははは!」
次の瞬間 狂ったかのように笑いだしたのはシアンだった。
これまで聞いた事のない声量で高らかに笑う彼は、その場の男達を凍り付かせた。
「ははははっ‥‥ふっ、ククク‥!!」
ギロッ‥‥
「…ッ…!?」
シアンの瞼があがる。
たっぷりと濡れた熱っぽい瞳が、目の前のタランを睨み据える。
「なん だ……貴様……!!」
「はは‥‥ッ、‥‥ハッ」
ひとしきり笑い飛ばし…口から血の塊を吐き出したシアンは、さも可笑しそうに、嬉々とした目で男を見上げた。
「…ッ…あなたが言う " 薬 " 、…僕は…よぉく…知っています よ」
「……!?」
「昔 娼館で同じようなモノを見た。それはそれは…高価な 薬で ね、……ふふ、女将に取り入って…手に入れるのに、苦労…しました…」
「まさ か‥‥、自ら‥‥!?」
「なのに………なんだ………
あんな苦労、する必要がなかったらしい」
馬鹿馬鹿しい。腹の底から……馬鹿馬鹿しい。
男でもなく女ですらない
だからどうした?それを嘆くのがせめてもの…… " 人 " が持つべき矜持なのか?
そんなモノは、とうの昔に捨て置きた。
そうでなければ…ただ客ウケが良いからと、自ら子種を殺したものか。
かつての彼がその選択をするのに、躊躇は無かったと言い切れる。
いったい……どこまで
どこまで堕ちれば気が済むのか
「‥‥貴方にも‥‥いらぬ苦労を‥‥かけました ね 」
「…っ…何が可笑しい!…貴様っ貴様!貴様あ!」
嘘のない狂った笑顔を魅せるシアンに、タランは確実に怯えていた。
得体の知れない──
理解のしようがない
だから恐ろしいのだ。
「ふざけたコトを口走りおって…!! 何にそれほど笑っている??貴様は何を考えている!」
シアンの髪を掴む手も、すぐに振り払う。
けれど今度は──シアンも顔を下げない。男を睨む視線をそらさない。
「…ッ…忌まわしい…!穢らわしい小僧め…!」
「じ、侍従長様!落ち着かれてくださいっ」
「黙れ!」
取り乱すタランを手下が心配するが止められるわけもなかった。
逆上を強めたタランは、勢いよく立ち上がり、手下のひとりに命令した。
「 " 例の物 " を連れて来い…牢の中へ運べ!」
「侍従長様…っ…本気で御座いますか? アレ はあまりに…!!」
「行け、今すぐにだ」
「か、かしこまりました」
シアンを鞭打っていた片方の男が、躊躇いがちに牢を去る。
…そしてすぐに、控えていた ソレ を連れて牢の前に戻ってきた。
グルルル・・・バウ!
ガルルルル・・・・!
地下に響く唸り声
ポタポタと…牙の隙間からしたたる唾液
荒々しく逆立つ黒色の毛
手下の男が連れてきたのは、興奮状態にある大きな体躯の猟犬だった。
「卑しい貴様に相応しい罰を与えてやる…」
「ハァ‥‥‥ハァ‥‥‥」
「牢へ放て!」
空腹かに見える猟犬は、実はそうでは無い。
それは特殊な刑罰の為にヤク漬けにされた獣。刑囚を犯し、尊厳を剥ぎ取るための道具。
獣と繋がるものは、獣だ。
人間ではない。陽の国にも もちろん行けない。死後の永遠は……業火で焼かれる運命。
「 " 人 " を捨てた貴様はここで…獣として死ね…!」
牢に放たれた猟犬がシアンの上に被さる。
「どうせ腹の中身は家畜どもの体液だろう?油を塗りこむ必要もないな」
ガルルッ!ガルルッ!
前足でシアンの腰を捕まえ、硬く勃った陰茎を押し当てる。その必死さは、まるでシアンの色気にあてられたかのようだ。
もどかしそうに吠える犬は、ようやく目的の孔を探り当て、突き入れる
「‥ッ‥!」
そこから高速で腰を振り出した。
斜め下から突き上げられ、うつ伏せで横たわるシアンの尻が上がる。大きく背をしならせて首をそらす。
パチュンパチュンと水音も聞こえるのは、彼の体内に注がれた淫液が暴れているのだろう。
ガルルッ!ガウ!ガルルル!ガルルル!
馬乗りになった猟犬は無我夢中で彼を犯した。
タランの部下達は目の前の光景に怯えて後ずさる。ひとりは吐き気をもよおして、慌てて口を抑えた。
この行為には愛や嗜虐といった感情の類いが抜け落ちている。
ただの交尾なのだ。
「‥フッ…!! ぅッ……ぅッ‥…は…‥あ……!!」
「貴様……!」
そして何より醜怪なのは……
発情した獣に蹂躙される青年の、その美しい顔から笑みが消えないことであった──。
異常だ
その後 タラン達が地下を去った後も、発情を誘うシアンの甘い鳴き声が──喉が枯れるまで、響き続けた。
──…
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