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第十九章
空虚なる交錯
しおりを挟む深い所に楔を打ち込まれる刹那を想像して腸壁が浅ましくひくつき、それを見計らって硬い屹立が前進する。
「‥ぅあ‥!!‥…ああ‥‥あっあ‥‥//」
「はぁ……!く、そ」
両手で捕らえた細腰は先ほどから痙攣を繰り返していた。筋肉のひきつけが指先から伝わり、精を搾り取ろうとするかのように収縮する。
喰い千切られそうだ──。アシュラフは歯を食い縛り、滴る汗を散らした。
一度奥まで挿入してから、ゆっくりと律動を刻み始める。
腰を細かく動かしたり、あるいはそれで中をかき回すようにしてシアンを責め立てた。その動きに合わせて泣くような声で腰を揺らすシアンは、淫乱な男娼のようでいて、初めての快楽を無邪気に貪ろうとするこどもにも見える。
「アッ‥、はぁっ…‥」
「フゥー……!!
ああ……!?…ここ…っ…なのか?」
「そ‥‥そこ‥ッッ‥‥‥」
「ここが…良いって…っ…!?」
一番イイ所に当たったらしい。
ひときわ跳ねたシアンの声がそれを教える。
押し込まれ…擦られるたびに腰骨が痺れて、下肢ぜんたいが溶け落ちる。
そんな場所をごりごりと抉られ、シアンは全身で悦びを訴えた。相手をしめつけ、その媚肉で嬉しそうにしゃぶる。
「クッ……!」
苦痛に堪えるかのような呻き声と共に、男の精が内奥にぶちまけられた。
ドクッ...
ドクッ.....!!
「‥ッ─あああ‥‥」
「ハァ……ハァ……なんて、奴だ……!!」
「ぁ‥ッッ‥…だ め‥‥‥ぬいては‥‥だめ、です‥‥//‥‥もっと‥‥」
「……!」
「まだっ‥‥足りません‥‥!!」
「……ふっ」
吐精後の男根をずるりと抜くと、必死な顔でシアンがすがりついた。
なんて憎らしい奴だろうか──。
笑ったアシュラフは彼の上にのしかかり、敷布の上に弱った躰を捕らえた。
「勘違いを犯すな……強情なお前に慈悲などやらないっ…!ただ……俺に弄ばれて泣き喚け……!」
そしてシアンの喉元に喰らいつく。
喉仏に舌を這わし、顎の裏側を吸う。そのまま耳の下を噛むと、シアンは健気に震えた。
違う、それじゃないと哀願するシアンだが、桃色に尖った胸の突起を舐めて転がすと、先ほどまでと同じように吐息を甘く濁らせる。
「‥‥違‥ッ、いゃだ」
「…っ…何が違う?……コレも好きなのだろう……!?…心地良さげな顔をして……」
「…‥んん‥」
期待しているのかぷっくりと膨らんだ乳暈に舌を押し当てられただけで、じくじくと疼く快感にむせび鳴く。
「それ か……ここを責めぬいてやっても、良いんだぞ……!」
「‥‥ッぅあ!‥‥そん な‥‥//」
「…なぁ?」
「ひっ‥ぃゃ‥!!…‥ソコは‥‥いけませ ん」
アシュラフは舌で乳首を嬲りながら、片手でシアンの男根を掴んだ。
蜜を零す鈴口を包み、音を立てて揉み込む。
そしてとろとろになったソコを掌で撫で回してやった。
「‥ハァっ‥やだ‥‥ああっ…ああっ」
「…ッ…ハッ、嫌がっても無駄だ。生殺しは……ツラいだろうが……」
乱暴ではない優しい手つきで、しかし執拗に撫で回す。
先端だけに与えられる責め苦はどれほど苛烈であれ、根元を扱いてやらなければ極みには届かない。
そんな…達する前のぎりぎりのところを味わわす。
逃げようと腰が動くので、仕置きとばかりにくびれを指ではさみ、そこも責めた。
「ひっ‥あ‥//」
抵抗する手は顔の横に固定して、指を絡めて握る。
反対側の義手が不器用に男の肩を押し返そうとするが、もうろくに力もはいっていなかった。
顔どころか肌の全てを朱に染めて悶える姿は
惨めで、哀れで
「……ッ……苦しい、か?」
痛々しくもあるのに、嬲る手を止められない。
虹彩を揺らがせて…縋るように投げかけられる瞳も
すっかり弱って開ききった唇から吐き出される吐息さえも、眩暈がするくらい艶やかで、強烈な媚薬だった。
焦点を失った……朧げな目
呂律が回らない舌
「はぁ‥‥はぁ‥‥!!」
──嫌だ
「達したいのか?」
「‥‥あ、ぅぅぅ‥‥!!‥‥そうでは、なくて」
違う
「違う‥‥あああ‥//…‥お許し‥くださ‥ッッ」
「…っ」
欲しいのはコレではない
「お許しください‥‥っ、あ‥‥
あ‥‥‥‥‥ 兄 上 」
「──…!」
「‥‥ひとりは‥‥イヤ です‥‥」
違う……コレではない
ひとりで悦くなっても意味が無い
「‥‥ぁ‥‥、あに‥‥う‥え‥‥!!」
「お前……」
かろうじて聞き取れるかどうかの声でシアンが叫ぶ。
この瞬間、せきが切れたかのように彼の口から想いが溢れた。
ひとりで得る快楽など虚しい。寂しい。
寂しいのはもう嫌だった。
孤独なのだ。
ひとりになるのはもう──…堪えられなかった。
「僕は‥‥二度と、貴方‥と‥‥‥‥!!」
「…………!?」
涙をためた目でシアンが言うと
言葉を無くしたアシュラフが、心の臓をわしづかまれたかのような顔をする。
──…
《 兄さまー!兄さまー! 》
何故、ここまで傷付けてしまったのだろう
《 約束です 》
いつの自分を正せば
あの日の約束を果たせたのだろうか
《 この先何が起ころうと……
僕は兄さまのそばを離れません 》
離れたくなどなかった筈だ
《 この国の君主となられる貴方をいつまでも
…いつまでも支え続けると、約束します》
疑いたくなどなかった
記憶の中の顔は、いつも此方を真っ直ぐと…ただひたむきに見つめていたのに
《 僕は、兄さまを、愛しておりますから 》
これほど愛した存在は、この広大な砂漠の地の……何処を探そうと見つかりはしないのに
「………っ」
眉間を寄せて瞼を下ろしたアシュラフは
数秒の後、長い睫毛を震わせて目を開けた。
そしてシアンの後孔へ再び自身を突き挿れる。
それだけでは足りない──。さらに繋がりを深くするため、絡んでくるシアンの脚を持ち上げて肩に担いだ。
「あ‥!!」
重たく突き刺され、刺激が背筋から脳天へと一気に駆け上がる。
身体中が痙攣するように引き攣り、シアンはまた絶頂の波間に囚われた。
「‥ああっ‥‥ああっ‥‥あ」
喘ぎすぎて枯れた喉が、待ちわびた瞬間に歓喜する。
やっと繋がれた悦びで満たされる。
熱を持った塊に押し広げられ、慣らされて、カタチを覚えさせられ、そこで相手を愛撫する──そうするように自分の身体を作り替えた相手がこの男であったならば、もっと幸せだったかもしれないと、今さら叶わない願望がシアンの脳裏にチラついた。
今さら……
今さらすぎる。
男娼としてのこれまでの生き方を悔やむ気持ちがあるなんて。
だがそんな後悔も一瞬で、すぐにシアンは与えられる快楽に陶酔した。
「‥‥はぁっ‥ぁっ‥‥ぁ…‥!」
「ハァッ…ハァッ……!!」
速さも増して力任せに打ち付けると、肉と肉がぶつかる音が部屋に響き──
すでに注いだ愛欲が結合部からぐちぐちと卑猥に漏れ出て、シアンの白い尻たぶを濡らした。
そうでなくともシアンの下半身は彼自身の白蜜ですっかり汚れていたが、…だが気にとめる余裕はどこにも無い。
彼等は必死だった。
長い孤独だった。互いを想いながら切り離されていた時間は、涙を忘れるほどに長かった。
それでもやっと繋がれたのに……この奇跡は有限で、残された時間は少ない。それに彼等は気付いていたから。
だから綺麗でなくともいい。
結び目は歪で構わなかった。
「ハァッ……ハァッ……ハァッ…──出す、ぞ」
アシュラフの声が快楽で上擦り、シアンを包み込む。
泣き所を突いている先端がナカでひと際大きく膨れあがり、もうすぐ精が弾けそうに脈打っている。
シアンが両手を上げて訴えると、アシュラフは頷き、彼を抱き締めた。
そして彼の中に精を放つ。
火傷しそうなほどの熱い迸りを最奥に叩きつけられ…濡らされた時、シアンはこれまでにないほどの強烈な絶頂を味わった。
・・・・
オイルランプの灯りでたゆたう影は…それから暫く、重なったまま離れなかった。
語らう声があるわけでなく、深い呼吸だけがそこに長く留まっている。
互いに肌の境目さえわからなくなるほど陶酔し──結ばれた二人。
どうか……このまま
切り離さないでくれまいか。
どうかこの夜だけは、このままで──。
分かち難く抱き合う彼等は、沈みかけの意識の片端で乞い願う。
ランプの焔が消えようとも…それは変わらなかっただろう──。
───…
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