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銀狼
銀狼_2
しおりを挟む次に彼女が目を開けた時、その瞳は先程までとはうって変わり、不思議と据わっていた。
「──…!」
肌と耳が、風を感じる。
注意深く岩壁を観察し始めたセレナは、苔や蔦に覆われゴツゴツとしたそこに、──小さな穴を見付けた。
それは絶壁のすそにあり、入り口は確かに小さいがどうやら奥に長く続いているようだ。
風はそこから吹き出していた……つまり、この穴は何処か外へ続いているのだ。
“ ラインハルトの森から、出られる……? ”
彼女の胸に灯ったのは蝋燭のような頼りない希望。けれどそれが最後の頼みの綱で、大きく唾を呑み込んだセレナはその中に身体を滑らせた。
彼女の胸ほどの高さの洞穴を、前屈みで進む。
奥に行けば行くほど穴は広くなり、彼女の背丈ほどに、さらには直径数メートルまでに広がってとうとう横に大きく広がる地底空間へと変わった。
鍾乳洞だろうか…。
セレナのたてる足音が静かに響き渡る。
洞穴の暗闇の中──水音も鼓膜に響いてくる。
セレナは壁に手を付き水音を追って歩いた。
ガサッ
“ ……あっ……これ、…蔓? ”
壁づたいに歩いていくとセレナの手に植物の蔓が触れる。
そこだけが不自然に茂っているから奇妙に思えて立ち止まったセレナは
「……え?…水音が…」
壁である筈のその奥から、水音と…確かに風の動きを感じた。
それ等はまるで、此方に漏れぬように蔓によって蓋をして守られているような──。
勘を働かせたセレナは、茂る蔓におそるおそる腕を入れる。
そうすれば怪奇な状況にもすぐ説明がついた。
この蔓の奥に抜け道があるのだ。
気付いたセレナは迷わず奥へ進んだ。
彼女の希望が、風に揺れる頼りない蝋燭からランタンほどの大きさへと徐々に変わっていく。
──
そして抜け道を暫く歩いたセレナの目に見えたのは出口を指し示す……眩い光。
“ まだ夜の筈なのに…… ”
その明るさを異様に感じながら彼女は出口までたどり着いた。
そこでセレナが目にしたのは──。
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