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逃走
逃走_3
しおりを挟む「…銀狼…っ」
何処かに出掛けていたのだろうか。
出口の洞窟、その暗闇から銀狼が姿を現した……。
道を譲る狼達の間を縫い、彼はセレナの目の前に足を運んだ。
「逃げようとは、愚かな事をしたものだ」
「……ッ」
俯く彼女は脚を折り曲げて自らの裸体を隠す。
そんなセレナの無様な姿を銀狼がフッと嘲笑った。
「……泥だらけだな」
布にくるんだ荷物を片手に持つ銀狼は、空いている方の手をセレナに差し出す。
「……いや!」
しかしセレナはその手を拒絶し、身体を丸めて縮こまった。
「まさか…それで抵抗のつもりなのか」
そうとも。そんな可愛い拒絶の仕方ではなんの意味もない。銀狼は怯えるセレナに構うことなく彼女を片腕で担ぎ上げた。
「やぁ!…離して…っ…!! 離してください!」
「……五月蝿い娘だ」
脚をばたつかせ暴れてみるも男の力には敵わない。
出口が遠ざかり、抱えられたセレナは逆の方向へ運ばれてしまった。
──銀狼が向かう先には、滝、そして湖がある。
「……!? 」
それを見たセレナの顔が益々強張る。
“ ……何?…何をされるの…!? ”
「待って……っ」
「少し、黙れ……」
湖のほとり……
岩場の上に持っていた荷物を落とすと、銀狼は彼女を抱えたままゆっくりと水に身を沈めた。
「きゃあ!!…ッ…冷たい…」
バシャッ バシャ …ッ
セレナを両腕で抱きかかえ、銀狼は湖の中心へと進んでいく。
それに合わせ、水に浸かった彼の衣がセレナの身体に纏わり付く。
「……離して!……ケホッ……ハァ…」
「暴れるな鬱陶しい」
抵抗するセレナが水面を叩く度にあがる水飛沫が二人の顔にかかり、水を飲んだセレナはそのたびに咳き込んでいた。
──だがその抵抗も、滝壺が近付くにつれて弱くなる。
「……っ」
「……フン」
真っ白に泡立ち騒いでいる滝壺。
大人しくなった彼女を馬鹿にするように笑った銀狼が腕の力を弱めると…たまらずセレナは彼の首に手を回す。
泳ぎ方など知らないセレナは、こんなところで彼に離されたら溺れてしまう。
それを承知の上で敢えて、男は意地悪く笑うのだろう。
「離せと言うのは…娘、お前であろう?」
「──…!! 」
「……やはり死ぬのは嫌か。だからそうやって、憎い私にしがみつくのか」
試すように脅すように
彼女の矛盾を指摘する。
確かに……死んでしまいたいと、昨夜そう口にしたのはセレナ自身だ。
そんな彼女が、無理やり処女を奪ったこの憎い男に今、必死にしがみついている──。
「──…それでいい」
「……んっ…!! 」
「そのまま私に掴まっていろ…」
滝壺近く、渦巻く水の中
銀狼の指がセレナの身体を這い始めた。
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