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リッチモンド公爵令嬢との会話は周りに聞こえないように小声で話していたため、エルネストにも聞こえていなかった。今日は生徒会の仕事がないらしく、クローデットと一緒に馬車で帰っているので、リッチモンド公爵令嬢との約束の件を伝えた。
「へぇ~、今度の休日にキャサリン嬢と野菜クッキーを作るのか。それはまた急な話だね。まぁ、でも問題ないんじゃないかな。リッチモンド家は政敵でもないし、マクシミリアン殿下の従姉妹であっても、あの家は権力は全く求めてないし。それに、あの家の方々はなんていうか、本当自由だよな。クゥも楽しみなんだろ?」
「楽しみよ。そうね、思っていたようなイメージとは全然違う方だわ。でも、仲良くなれそうだと思うの」
「そっか~、クゥと過ごせないのは残念だけど、それなら次の休日は楽しんでね」
「えぇ、ありがとう。作った野菜クッキーは翌日渡すわね?」
「あぁ、ありがとう。翌日はクゥに会いに来るからね」
休日はすぐだった。リッチモンド公爵令嬢は約束の時間通りにアルトー公爵家のタウンハウスに現れたが、お菓子作りをするという目的があるためか、動きやすさが重視されたシンプルで色味の抑えられたドレスを纏っている。
「ごきげんよう。本日はお招きありがとう~」
「ごきげんよう、リッチモンド様。では早速キッチンに案内させていただきますわ」
「私のことはキャサリンで良いわよ~」
「わかりましたわ、キャサリン様。どうぞ私のこともクローデットと」
「えぇ、よろしくね~クローデット様」
キャサリンを連れて、アルトー家の厨房ではなく、別途クローデット用に用意された広めのキッチンに案内する。このキッチンはクローデットの要望通りに設計されているため、オーブンも複数用意されており、この世界では流通していないような様々な調理器具も揃っていてお菓子作りには最適なキッチンとなっている。
「まぁ、素敵なキッチンね~」
「ありがとうございます。私の要望通りに作ってもらったのですわ」
「いいわね~」
「あ、キャサリン様。クッキーには小麦粉なども使いますので、お召し物が汚れないようにこちらを上から着ていただけますか?」
「えぇ、わかったわ~。初めて見るものだけれど、なんていう服かしら?」
「これは割烹着と呼ばれるもので、エプロンの一種ですわ。料理やお菓子作りの際に汚れないように衣服の上に着用するものですが、ドレスにも合うようにフリルをつけたり、可愛く見えるように工夫して作りましたの」
「あら、売り物ではなくクローデット様が考えられたものなのね。機能性と可愛さが両立していてとても素晴らしいわ~」
エプロンではドレスが汚れてしまう可能性があったため、クローデットは前世の記憶を活用して割烹着を作っていた。首元から膝下までと両腕が覆われるため、汚れ防止には最適である。ただ、前世の割烹着は着物の上から着るというイメージが強く、それをドレスの上から羽織ると不恰好になってしまうので、形を少し変えてワンピース風で、スカート部分はふわりと、ゆとりを持たせるように工夫をした。ドレスではなくワンピースの上から着られるタイプなど、幾つかのパターンは製作してある。
手も洗って準備も出来たので、早速お菓子作りにとりかかる。野菜クッキーに必要なものは、薄力粉、砂糖、卵、バター、それに野菜。
差し入れにと考えられていたので、うずまきと市松模様のアイスボックスクッキーを作ることにした。通常の野菜クッキーのレシピも渡す。
作り方の手順をキャサリンに説明しながら、一緒に作っていく。
まずは、紫芋は茹でて皮を剥いて潰してペースト状に、人参は皮を剥いてすりおろす。ボールに室温に戻したバターを入れて、泡立て器でクリーム状になるまで混ぜて、そこに砂糖を加えて混ぜる。さらに卵を3回ほどに分けて入れて混ぜて、それを4つに分ける。2つはプレーンのまま、1つは人参、もう一つは紫芋を入れ、ふるった薄力粉を入れてそれぞれ切るように混ぜ合わせる。にんじんとプレーンの一つは長方形の棒状に、紫芋ともう一つのプレーンは少し伸ばして平たく正方形に成形して、それぞれをラップで包んで冷蔵庫で冷やす。
待ち時間にはキャサリンと雑談をした。
「では、お休みの日は騎士団の見学に行ってるんですか?」
「そうよ~。ご迷惑にならないように月に一度程度かしら。その時に差し入れも持っていくの~」
「どなたかお目当ての騎士様がいるのですか?」
「えぇ! ラギエ副騎士団長よ~! 剣術大会で彼の剣捌きを見てから大ファンなの~。それから騎士団の見学に行くようになったわ。鍛えられた身体もとても魅力的だけど、部下達に飴と鞭を使い分けた指導をされていてすごく素敵な方ですわ~」
「え、ルイスですか?」
「そういえば、クローデット様はラギエ副騎士団長の従姉妹でしたわね。とても羨ましいですわ~。私がラギエ副騎士団長の大ファンということは内緒にしてもらえるかしら? ラギエ副騎士団長は、おそらくそういうのは苦手でしょう~? ご迷惑にはなりたくないから、静かに見学させていただいてるのよ~」
まさかキャサリンの目当てがルイスとは意外である。確かにルイスはモテる。が、モテすぎて、学生の頃からキャーキャー騒ぐ令嬢ばかりで、うるさい令嬢は好きではないと昔から言っていた。ただ外面はよく、そういう令嬢にも当たり障りのないように対応していたはずである。そこに気づいているとは流石だ。
話しているとすぐに時間が経ったので冷蔵庫から生地を取り出して、長方形にしたものは4等分で縦横1cmずつの長方形に切り、繋ぎ目に卵を塗って市松模様となるようにプレーンと人参の生地を重ねる。平たい紫芋とプレーンはさらに伸ばし、こちらも卵を塗って少しずらして重ね合わせる。端からクルクルと巻いて形を整えて再度冷蔵庫へ。
規定時間を冷やした後に5mm程度の厚さに切ってオーブンで焼く。
出来上がりを試食してみたが、見た目も味も問題なかった。キャサリンもとても気に入ってくれたようだ。そしてなぜかクローデットは今度の休日に一緒に騎士団の見学に行くことになってしまった。
「へぇ~、今度の休日にキャサリン嬢と野菜クッキーを作るのか。それはまた急な話だね。まぁ、でも問題ないんじゃないかな。リッチモンド家は政敵でもないし、マクシミリアン殿下の従姉妹であっても、あの家は権力は全く求めてないし。それに、あの家の方々はなんていうか、本当自由だよな。クゥも楽しみなんだろ?」
「楽しみよ。そうね、思っていたようなイメージとは全然違う方だわ。でも、仲良くなれそうだと思うの」
「そっか~、クゥと過ごせないのは残念だけど、それなら次の休日は楽しんでね」
「えぇ、ありがとう。作った野菜クッキーは翌日渡すわね?」
「あぁ、ありがとう。翌日はクゥに会いに来るからね」
休日はすぐだった。リッチモンド公爵令嬢は約束の時間通りにアルトー公爵家のタウンハウスに現れたが、お菓子作りをするという目的があるためか、動きやすさが重視されたシンプルで色味の抑えられたドレスを纏っている。
「ごきげんよう。本日はお招きありがとう~」
「ごきげんよう、リッチモンド様。では早速キッチンに案内させていただきますわ」
「私のことはキャサリンで良いわよ~」
「わかりましたわ、キャサリン様。どうぞ私のこともクローデットと」
「えぇ、よろしくね~クローデット様」
キャサリンを連れて、アルトー家の厨房ではなく、別途クローデット用に用意された広めのキッチンに案内する。このキッチンはクローデットの要望通りに設計されているため、オーブンも複数用意されており、この世界では流通していないような様々な調理器具も揃っていてお菓子作りには最適なキッチンとなっている。
「まぁ、素敵なキッチンね~」
「ありがとうございます。私の要望通りに作ってもらったのですわ」
「いいわね~」
「あ、キャサリン様。クッキーには小麦粉なども使いますので、お召し物が汚れないようにこちらを上から着ていただけますか?」
「えぇ、わかったわ~。初めて見るものだけれど、なんていう服かしら?」
「これは割烹着と呼ばれるもので、エプロンの一種ですわ。料理やお菓子作りの際に汚れないように衣服の上に着用するものですが、ドレスにも合うようにフリルをつけたり、可愛く見えるように工夫して作りましたの」
「あら、売り物ではなくクローデット様が考えられたものなのね。機能性と可愛さが両立していてとても素晴らしいわ~」
エプロンではドレスが汚れてしまう可能性があったため、クローデットは前世の記憶を活用して割烹着を作っていた。首元から膝下までと両腕が覆われるため、汚れ防止には最適である。ただ、前世の割烹着は着物の上から着るというイメージが強く、それをドレスの上から羽織ると不恰好になってしまうので、形を少し変えてワンピース風で、スカート部分はふわりと、ゆとりを持たせるように工夫をした。ドレスではなくワンピースの上から着られるタイプなど、幾つかのパターンは製作してある。
手も洗って準備も出来たので、早速お菓子作りにとりかかる。野菜クッキーに必要なものは、薄力粉、砂糖、卵、バター、それに野菜。
差し入れにと考えられていたので、うずまきと市松模様のアイスボックスクッキーを作ることにした。通常の野菜クッキーのレシピも渡す。
作り方の手順をキャサリンに説明しながら、一緒に作っていく。
まずは、紫芋は茹でて皮を剥いて潰してペースト状に、人参は皮を剥いてすりおろす。ボールに室温に戻したバターを入れて、泡立て器でクリーム状になるまで混ぜて、そこに砂糖を加えて混ぜる。さらに卵を3回ほどに分けて入れて混ぜて、それを4つに分ける。2つはプレーンのまま、1つは人参、もう一つは紫芋を入れ、ふるった薄力粉を入れてそれぞれ切るように混ぜ合わせる。にんじんとプレーンの一つは長方形の棒状に、紫芋ともう一つのプレーンは少し伸ばして平たく正方形に成形して、それぞれをラップで包んで冷蔵庫で冷やす。
待ち時間にはキャサリンと雑談をした。
「では、お休みの日は騎士団の見学に行ってるんですか?」
「そうよ~。ご迷惑にならないように月に一度程度かしら。その時に差し入れも持っていくの~」
「どなたかお目当ての騎士様がいるのですか?」
「えぇ! ラギエ副騎士団長よ~! 剣術大会で彼の剣捌きを見てから大ファンなの~。それから騎士団の見学に行くようになったわ。鍛えられた身体もとても魅力的だけど、部下達に飴と鞭を使い分けた指導をされていてすごく素敵な方ですわ~」
「え、ルイスですか?」
「そういえば、クローデット様はラギエ副騎士団長の従姉妹でしたわね。とても羨ましいですわ~。私がラギエ副騎士団長の大ファンということは内緒にしてもらえるかしら? ラギエ副騎士団長は、おそらくそういうのは苦手でしょう~? ご迷惑にはなりたくないから、静かに見学させていただいてるのよ~」
まさかキャサリンの目当てがルイスとは意外である。確かにルイスはモテる。が、モテすぎて、学生の頃からキャーキャー騒ぐ令嬢ばかりで、うるさい令嬢は好きではないと昔から言っていた。ただ外面はよく、そういう令嬢にも当たり障りのないように対応していたはずである。そこに気づいているとは流石だ。
話しているとすぐに時間が経ったので冷蔵庫から生地を取り出して、長方形にしたものは4等分で縦横1cmずつの長方形に切り、繋ぎ目に卵を塗って市松模様となるようにプレーンと人参の生地を重ねる。平たい紫芋とプレーンはさらに伸ばし、こちらも卵を塗って少しずらして重ね合わせる。端からクルクルと巻いて形を整えて再度冷蔵庫へ。
規定時間を冷やした後に5mm程度の厚さに切ってオーブンで焼く。
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