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第4章 集まれ仲間達
行動開始 -9-
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「まぁまぁ、それは大変ですこと。王妃様が誤って巻き込まれておられないか、ご安全を確認して来なければ。エンディミオン殿下、皆様方。少しの間、失礼いたしますわね」
わたくし達の話しを黙って聞いていたクリシュナ侍女長が、物凄くにこやかにそう言って、わたくし達に一礼すると紅薔薇宮殿から下がってゆかれました。
「あれ、ぜったい、ちちうえがどんなめにあってるのか、みにいったんだよね?」
「でしょうね。なんか、メッチャたのしそうだったもの。こえが」
「おうひさまとごいっしょに、たいへんなことになっているへいかをみて、ふだんのりゅういんをさげるのですよ、きっと」
「じゃあたぶん、さいしょうかっかもまだいるわね。さっきだって、いいぞもっとやれって、こころのこえが、きこえてきそうなかおしてたもの」
「あ、あの……チビせいれいちゃんたちを、とめなくてよいのですか?」
エンディミオン殿下とお姉様と共にそんな取り留めもないことを話しているとリリエンヌ様が、戸惑ったお声で、そう問いかけていらっしゃいました。
「べつにいいんじゃない? チビせいれいだから、なにされても、おおきなけがしたり、しんだりするようなことはないし? チビたちだって、ちからふるわせてあげないとミニせいれいにしょうかくできるだけのちからが、いつまでたってもえられないしね」
「そうなのかい?」
「そうよ? せいれいってね、せいれいかいで、うまれたてのときは、みんなチビなの。で、いろんなせかいで、せいれいとしてのちからをふるうことで、じぶんのちからをどんどんつよくしてくんですって」
「そうなのですね。そこまでくわしいおはなしは、しりませんでしたわ」
「ぼくも」
お姉様の説明にエンディミオン殿下とリリエンヌ様が、感心したお声で相槌めいた言葉を口にされました。
世界の理に関わるお話しは、流石に ”花キミ” 内の知識や設定資料集情報だけでは足りず、サーシャエール様に甘味神託で教えていただいていることの1つでした。
精霊は、まず下位精霊に分類されるチビ→ミニ→小と来て、普段、わたくし達が6属性の力を行使する時、補助してくれたり、魔法を具現化するための精霊力を世界に供給してくれる主だった精霊である、中位精霊が属性ごとに3段階。
例えば火の精霊の中位3段階は、火、炎、焔。
その上は上位精霊1種、最上位精霊1種、精霊王1体となるので覚えやすい。
お姉様が言っている昇格というのは、精霊達にとって振るえる力が増える、世界に及ぼすことが出来る影響が強まる、というだけでなく、位階が上がり、自分の所属する精霊界で一人前として認められたり、その精霊界を担うに足る存在になれたと認められることを意味する。
それは言ってみれば、人の立身出世に印象が似ていました。
貧民が平民になって、商人になって、富豪になって、叙爵されて貴族になって、みたいな。
「ま! リリエンヌをイジメてた、ちちおやとにいさんボコって、へいかをボコったあと、コイツをボコればっ! チビもミニにちかづけるんじゃない?」
コイツをボコれば、と言った所で、お姉様が、氷の檻に靴底で蹴りを入れてネストールを一睨みなさいました。
蹴りを入れられたくらいでどうにかなる檻ではありませんが、それでも思い切り「ガン!」と音が鳴って、わたくしとエンディミオン殿下以外の者がビクッと身を震わせておりました。
「アリィ、あぶないよ。いくらフランのつくったまほうのおりが、がんじょうなのをしんようしてるからっていっても、もし、キミがケガでもしたらどうするんだい?」
本当に心配して言っているのか、あまりにも淑女を逸脱しているお姉様の行為をやんわりと窘めておられるのか、ちょびっと謎な調子でエンディミオン殿下が仰いました。
さりげにネストールの安全は眼中にない辺りが、彼らしいといえば、とても「らしい」です。
「はぁい♡ エンディがそういうならぁ♡ きをつけまぁす♡」
こんな時ばかり女主人公ぶりっ子を挟んでくる所は、流石にお姉様と言わざるを得ません。
安定のエンディミオン殿下最推しぶりです。
感心するような、溜息をつきたくなるような光景を眺めていた時。
「よー。ざいりょうあつめてきたぜー? ついでにリリエンヌのどうぐがはいったきばこ、おうぐんのつめしょから、かっぱらってきたー」
案内の侍女さんと女性騎士を伴って、リリエンヌ様のお部屋にやってきたのは、素材集めを終えて尚、一仕事こなしてこられたらしいエルドレッド様でした。
こちらへやって来た彼は、頭の少し上に浮かせていた木箱をチラッと見上げてから、足元へと音もなく下ろして、すぐ、わたくし達の方に目を向けたのですが。
「エルドレッドさまっ!」
少しの距離を駆け寄って行ったリリエンヌ様が、彼の前で止まり、胸元で手を組んで1度深呼吸してから彼を見上げ、笑顔を見せて言いました。
「おかえりなさいませ。エルドレッドさま」
まるで、家に帰って来た夫を出迎える新妻みたいなセリフを宣ったリリエンヌ様に、一瞬、全ての動きを止めたエルドレッド様が、スーッと後ろに傾いでゆき、バタッと音を立てて倒れ込みました。
「エルドレッドさま⁈」
「エル⁈ どうしたんだい? ケガでもしたの? だいじょうぶ⁈」
「えっ⁈ ケガ⁈ エルドレッドさまっ!」
心配して、彼の傍へ行こうとしたリリエンヌ様とエンディミオン殿下を他所に、彼は両手で顔を覆って右を向いたり左を向いたりしながら無言のままゴロゴロと身体を丸めて全身で転げ回っていて、お2人はどうしていいのか分からず立ち尽くしてしまわれました。
室内に居る他の侍女さんやメイドさん、女性騎士さん、果てはネストールまでもが目の前で何が起きているのか理解出来ていない顔をしていましたが。
「ヤッバイ、わっかるぅ……」
「やるわね、リリエンヌ。まだ3さいとはいえ、さすがは、にんきじょういキープキャラのはかいりょくよ……」
「エルドレッドさま、かんぜんなふいうちクリットをしかも、ましょうめんから、まともにくらいましたわよ?」
「いきしてる? アイツのりせい?」
わたくしとお姉様だけが、彼が床で何をしているのかが分かってしまい、そっと共感を示すと共に崩壊してしまった彼の理性の心配をしていました。
ま、最推しに食らった萌モーションに何も反応せず我慢しろとか、所詮、わたくし達には無理なお話し。
仕方ございませんわよね。
わたくし達の話しを黙って聞いていたクリシュナ侍女長が、物凄くにこやかにそう言って、わたくし達に一礼すると紅薔薇宮殿から下がってゆかれました。
「あれ、ぜったい、ちちうえがどんなめにあってるのか、みにいったんだよね?」
「でしょうね。なんか、メッチャたのしそうだったもの。こえが」
「おうひさまとごいっしょに、たいへんなことになっているへいかをみて、ふだんのりゅういんをさげるのですよ、きっと」
「じゃあたぶん、さいしょうかっかもまだいるわね。さっきだって、いいぞもっとやれって、こころのこえが、きこえてきそうなかおしてたもの」
「あ、あの……チビせいれいちゃんたちを、とめなくてよいのですか?」
エンディミオン殿下とお姉様と共にそんな取り留めもないことを話しているとリリエンヌ様が、戸惑ったお声で、そう問いかけていらっしゃいました。
「べつにいいんじゃない? チビせいれいだから、なにされても、おおきなけがしたり、しんだりするようなことはないし? チビたちだって、ちからふるわせてあげないとミニせいれいにしょうかくできるだけのちからが、いつまでたってもえられないしね」
「そうなのかい?」
「そうよ? せいれいってね、せいれいかいで、うまれたてのときは、みんなチビなの。で、いろんなせかいで、せいれいとしてのちからをふるうことで、じぶんのちからをどんどんつよくしてくんですって」
「そうなのですね。そこまでくわしいおはなしは、しりませんでしたわ」
「ぼくも」
お姉様の説明にエンディミオン殿下とリリエンヌ様が、感心したお声で相槌めいた言葉を口にされました。
世界の理に関わるお話しは、流石に ”花キミ” 内の知識や設定資料集情報だけでは足りず、サーシャエール様に甘味神託で教えていただいていることの1つでした。
精霊は、まず下位精霊に分類されるチビ→ミニ→小と来て、普段、わたくし達が6属性の力を行使する時、補助してくれたり、魔法を具現化するための精霊力を世界に供給してくれる主だった精霊である、中位精霊が属性ごとに3段階。
例えば火の精霊の中位3段階は、火、炎、焔。
その上は上位精霊1種、最上位精霊1種、精霊王1体となるので覚えやすい。
お姉様が言っている昇格というのは、精霊達にとって振るえる力が増える、世界に及ぼすことが出来る影響が強まる、というだけでなく、位階が上がり、自分の所属する精霊界で一人前として認められたり、その精霊界を担うに足る存在になれたと認められることを意味する。
それは言ってみれば、人の立身出世に印象が似ていました。
貧民が平民になって、商人になって、富豪になって、叙爵されて貴族になって、みたいな。
「ま! リリエンヌをイジメてた、ちちおやとにいさんボコって、へいかをボコったあと、コイツをボコればっ! チビもミニにちかづけるんじゃない?」
コイツをボコれば、と言った所で、お姉様が、氷の檻に靴底で蹴りを入れてネストールを一睨みなさいました。
蹴りを入れられたくらいでどうにかなる檻ではありませんが、それでも思い切り「ガン!」と音が鳴って、わたくしとエンディミオン殿下以外の者がビクッと身を震わせておりました。
「アリィ、あぶないよ。いくらフランのつくったまほうのおりが、がんじょうなのをしんようしてるからっていっても、もし、キミがケガでもしたらどうするんだい?」
本当に心配して言っているのか、あまりにも淑女を逸脱しているお姉様の行為をやんわりと窘めておられるのか、ちょびっと謎な調子でエンディミオン殿下が仰いました。
さりげにネストールの安全は眼中にない辺りが、彼らしいといえば、とても「らしい」です。
「はぁい♡ エンディがそういうならぁ♡ きをつけまぁす♡」
こんな時ばかり女主人公ぶりっ子を挟んでくる所は、流石にお姉様と言わざるを得ません。
安定のエンディミオン殿下最推しぶりです。
感心するような、溜息をつきたくなるような光景を眺めていた時。
「よー。ざいりょうあつめてきたぜー? ついでにリリエンヌのどうぐがはいったきばこ、おうぐんのつめしょから、かっぱらってきたー」
案内の侍女さんと女性騎士を伴って、リリエンヌ様のお部屋にやってきたのは、素材集めを終えて尚、一仕事こなしてこられたらしいエルドレッド様でした。
こちらへやって来た彼は、頭の少し上に浮かせていた木箱をチラッと見上げてから、足元へと音もなく下ろして、すぐ、わたくし達の方に目を向けたのですが。
「エルドレッドさまっ!」
少しの距離を駆け寄って行ったリリエンヌ様が、彼の前で止まり、胸元で手を組んで1度深呼吸してから彼を見上げ、笑顔を見せて言いました。
「おかえりなさいませ。エルドレッドさま」
まるで、家に帰って来た夫を出迎える新妻みたいなセリフを宣ったリリエンヌ様に、一瞬、全ての動きを止めたエルドレッド様が、スーッと後ろに傾いでゆき、バタッと音を立てて倒れ込みました。
「エルドレッドさま⁈」
「エル⁈ どうしたんだい? ケガでもしたの? だいじょうぶ⁈」
「えっ⁈ ケガ⁈ エルドレッドさまっ!」
心配して、彼の傍へ行こうとしたリリエンヌ様とエンディミオン殿下を他所に、彼は両手で顔を覆って右を向いたり左を向いたりしながら無言のままゴロゴロと身体を丸めて全身で転げ回っていて、お2人はどうしていいのか分からず立ち尽くしてしまわれました。
室内に居る他の侍女さんやメイドさん、女性騎士さん、果てはネストールまでもが目の前で何が起きているのか理解出来ていない顔をしていましたが。
「ヤッバイ、わっかるぅ……」
「やるわね、リリエンヌ。まだ3さいとはいえ、さすがは、にんきじょういキープキャラのはかいりょくよ……」
「エルドレッドさま、かんぜんなふいうちクリットをしかも、ましょうめんから、まともにくらいましたわよ?」
「いきしてる? アイツのりせい?」
わたくしとお姉様だけが、彼が床で何をしているのかが分かってしまい、そっと共感を示すと共に崩壊してしまった彼の理性の心配をしていました。
ま、最推しに食らった萌モーションに何も反応せず我慢しろとか、所詮、わたくし達には無理なお話し。
仕方ございませんわよね。
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