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第5章 女神の間にて
亜梨沙の場合 -2-
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流れて来る曲に合わせて一緒に歌い踊り始めた亜梨沙さんを見て、俺達転生組は、真の勇者を見た気がして彼女を眺めた。
親世代組もエンディミオン殿下、アルフレッドの2人も何が起こっているのか、よく分かっていない感じで瞬きながら亜梨沙さんを眺めている中、マックスとリリエンヌだけが、彼女のオン・ステージを拍手と笑顔と共に楽しんでいた。
「ルナさま、おうたもおじょうずだったのですね。すごいです!」
「歌姫と呼ばれる方々に匹敵する歌声です、ルナ様!」
それは褒め過ぎ。
でも映画が変わり、家でのDVD鑑賞に変わり、数家族合同でのカラオケ風景に変わりしながら亜梨沙さんが歌い踊る様は、アニメ作品関連が多いものの実に幅広く、男性・女性・ソロ・グループの別もなく歌い上げていて、採点機能付きのカラオケボックスでも常時90点代をキープし、時には100点も叩き出していたので、上手いことは確かだろう。
舞子さんや友理恵さん同様、両親が共働きだった亜梨沙さんは保育園でもオタク全開で、男の子達とヒーロー戦隊ゴッコに興じ、女の子達と魔法少女ヒロインゴッコに興じ、そのまんま小学生になっていた。
その環境に1度だけ変化が生じたのは、亜梨沙さんが小学校5年生になった時だった。
『やぁねぇ。いつまでもアニメだマンガだって子供っぽーい』
『他に楽しみないのかしら。カワイソー』
そう言って、クラスの女子数名がクスクス笑いながら亜梨沙さんを貶めるようなことを言い出したんだ。
「この女ども、殺していいですか?」
「落ち着け、マックス! 多分、高確率で俺達死んだ時にこの女も漏れなくくたばってる筈だから‼︎」
殺気全開で真っ黒マックスが再降臨したことに、俺は思わずそう叫んで、全力でマックスを制止したんだけど。
『おかしなこというのね? アニメを作ってるのもマンガを書いてるのも大人の人よ? それにわたし達は小学生よ? 小学生ってまだ大人じゃないわよ? どれだけ大人の真似したって、背伸びしたって子供だもん。それの何が笑えるようなことなの?』
不思議そうな笑顔で亜梨沙さんが、笑った子達に問いかける。
『好きなことや好きなものを誰が相手だろうと、好きって言えることの何が可哀想なのか全然分かんない。その対象が、芸能人でもスポーツ選手でも好きなら好きでいいじゃない。わたしはこれが大好きっ! って全力で気持ちよく言える方が、好きなものを我慢するより、ずっといいわ!』
強い。
ホントマジで尊敬する。
前世の俺には、このメンタルの強さがなかったから余計に亜梨沙さんのスパンと竹を縦に割ったような、潔い主張に感心してしまった。
多分、俺だけじゃなくオタクな趣味を周囲に隠し通すことになった人達の大半が、こんな風に笑われたり、馬鹿にされたり、仲間外れにされたり、何かしら恥ずかしいと思うような経験があってのことだと思う。
だけど亜梨沙さんは、それを恥ずかしいことだとは認識していなかった。
好きなことを好きだと笑顔で言い切れる、それだけの、だけど難しいこと。
亜梨沙さんが、明るく言い放ち、決して隠すことも悪びれることもなくオープンオタクとして過ごすことで、彼女の教室だけでなく、他の教室でも、それまでこっそりオタクだった子達や隠れオタクだった子達が亜梨沙さんと共に「好きで悪いか! 誰にも迷惑かけてないわ!」とばかりに立ち上がり、お互いが友達になることで孤立や孤独から逃れられるような環境が出来上がっていた。
「ルナルリア王女殿下は、流石のカリスマですわね。民を導く者としての片鱗が既にお有りのようにお見受けいたしますわ」
「そうですわね。弱き者、少なき者へも自らがその立場へと立ち、救いの手を差し伸べる。素晴らしいですわ」
「えっと……そんなつもりは、ぜんぜんなくてですねー、ホント、わたくし、じぶんのすきなようにいきてただけなのですけれど、なんかきがつくと、ちゅうしんにおしやられていたというか、せんとうにされていたというか……」
ああ、あるある。
別に目立とうとか思ってる訳じゃないのに、気がつくとリーダーとかやらされてんだよな。
王妃様と宰相夫人に、もにょもにょと言い訳じみた応答をする亜梨沙さんへ勝手に共感しつつ、俺は中学生へと成長していく彼女の姿を眺めていた。
親世代組もエンディミオン殿下、アルフレッドの2人も何が起こっているのか、よく分かっていない感じで瞬きながら亜梨沙さんを眺めている中、マックスとリリエンヌだけが、彼女のオン・ステージを拍手と笑顔と共に楽しんでいた。
「ルナさま、おうたもおじょうずだったのですね。すごいです!」
「歌姫と呼ばれる方々に匹敵する歌声です、ルナ様!」
それは褒め過ぎ。
でも映画が変わり、家でのDVD鑑賞に変わり、数家族合同でのカラオケ風景に変わりしながら亜梨沙さんが歌い踊る様は、アニメ作品関連が多いものの実に幅広く、男性・女性・ソロ・グループの別もなく歌い上げていて、採点機能付きのカラオケボックスでも常時90点代をキープし、時には100点も叩き出していたので、上手いことは確かだろう。
舞子さんや友理恵さん同様、両親が共働きだった亜梨沙さんは保育園でもオタク全開で、男の子達とヒーロー戦隊ゴッコに興じ、女の子達と魔法少女ヒロインゴッコに興じ、そのまんま小学生になっていた。
その環境に1度だけ変化が生じたのは、亜梨沙さんが小学校5年生になった時だった。
『やぁねぇ。いつまでもアニメだマンガだって子供っぽーい』
『他に楽しみないのかしら。カワイソー』
そう言って、クラスの女子数名がクスクス笑いながら亜梨沙さんを貶めるようなことを言い出したんだ。
「この女ども、殺していいですか?」
「落ち着け、マックス! 多分、高確率で俺達死んだ時にこの女も漏れなくくたばってる筈だから‼︎」
殺気全開で真っ黒マックスが再降臨したことに、俺は思わずそう叫んで、全力でマックスを制止したんだけど。
『おかしなこというのね? アニメを作ってるのもマンガを書いてるのも大人の人よ? それにわたし達は小学生よ? 小学生ってまだ大人じゃないわよ? どれだけ大人の真似したって、背伸びしたって子供だもん。それの何が笑えるようなことなの?』
不思議そうな笑顔で亜梨沙さんが、笑った子達に問いかける。
『好きなことや好きなものを誰が相手だろうと、好きって言えることの何が可哀想なのか全然分かんない。その対象が、芸能人でもスポーツ選手でも好きなら好きでいいじゃない。わたしはこれが大好きっ! って全力で気持ちよく言える方が、好きなものを我慢するより、ずっといいわ!』
強い。
ホントマジで尊敬する。
前世の俺には、このメンタルの強さがなかったから余計に亜梨沙さんのスパンと竹を縦に割ったような、潔い主張に感心してしまった。
多分、俺だけじゃなくオタクな趣味を周囲に隠し通すことになった人達の大半が、こんな風に笑われたり、馬鹿にされたり、仲間外れにされたり、何かしら恥ずかしいと思うような経験があってのことだと思う。
だけど亜梨沙さんは、それを恥ずかしいことだとは認識していなかった。
好きなことを好きだと笑顔で言い切れる、それだけの、だけど難しいこと。
亜梨沙さんが、明るく言い放ち、決して隠すことも悪びれることもなくオープンオタクとして過ごすことで、彼女の教室だけでなく、他の教室でも、それまでこっそりオタクだった子達や隠れオタクだった子達が亜梨沙さんと共に「好きで悪いか! 誰にも迷惑かけてないわ!」とばかりに立ち上がり、お互いが友達になることで孤立や孤独から逃れられるような環境が出来上がっていた。
「ルナルリア王女殿下は、流石のカリスマですわね。民を導く者としての片鱗が既にお有りのようにお見受けいたしますわ」
「そうですわね。弱き者、少なき者へも自らがその立場へと立ち、救いの手を差し伸べる。素晴らしいですわ」
「えっと……そんなつもりは、ぜんぜんなくてですねー、ホント、わたくし、じぶんのすきなようにいきてただけなのですけれど、なんかきがつくと、ちゅうしんにおしやられていたというか、せんとうにされていたというか……」
ああ、あるある。
別に目立とうとか思ってる訳じゃないのに、気がつくとリーダーとかやらされてんだよな。
王妃様と宰相夫人に、もにょもにょと言い訳じみた応答をする亜梨沙さんへ勝手に共感しつつ、俺は中学生へと成長していく彼女の姿を眺めていた。
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