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第5章 女神の間にて
亜梨沙の場合 -7-
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そして大学生となった亜梨沙さんは、単位取得とレポート提出、課題提出というハードスケジュールの中、コスプレと “花キミ” に精を出していて、何が1番ビックリしたって。
「ルナさま、マックスさまコスプレーヤーでしたのね……」
「うん! わたし、もともとコスしだしたりゆうって、おしキャラになりたいはだったからなのよね!」
推しキャラになりたい派。
それは乙女ゲーに限らずコスプレーヤーには一定数存在していて、ヒロインキャラになって推しキャラとのコス写に命をかける派とは違い、自分が感じているキャラの理想の姿を自分を使って再現する、言ってみればコスプレをしている間にだけ有効な演劇の1種みたいに俺の目には見えていた。
中にはコス衣装に着替える前も、アフターになってもそのキャラのまま、という筋金入りな子もいたし、元々の性格や言動がそのキャラに近くて、コスをしている、という子も居たりした。
大学生亜梨沙さんのマックスは、彼女がこれまで生きてきて、幅広く吸収・収集してきた雑学じみた知識と技術の集大成みたいなキャラになっていて、本人にそのつもりはなかったようだが、周囲からは「覚醒後の賢者verマックス」と認識されていた。
イベントが終わって、近くのファミレスやカラオケでアフター、となると彼女達は誰からともなく “花キミ” アプリを立ち上げて、デイリーを消化したり、午後の授業をオート設定して走らせたりしていて。
『ありりん! マックスさまイベ起こったけど見る?』
『見る見る!』
そんな感じで互いのプレイを見せあったりしていて、これまで見てきた舞子さんや友理恵さんとは全く違うプレイスタイルだな、と俺は感じていた。
『やっぱ、マックス様、カッコいいのよねー。ヘタレっクスも闇っクスも悪くないけど、この、ヒロインを信じて心を開いて受け入れてくれた時の笑顔スチル、マジ最高過ぎてさー。再現難しいのよねー。どうしても理想通りにはならないわー』
『分かるー。自分ではしてるつもりでも後でコス写見ると、違ぇよ! こうじゃねぇんだよ! ってなるんだよねー』
『その内さ、花ミュとかやんないかな? 人気あるんだし、アニメとか2.5次元舞台とか、やりそうなのに』
『でもきっと、ゲームスチル至高なのよねー』
『まぁ、そこは動かないっしょ。2.5次元は、あくまで2.5次元。キャラ本人じゃないし?』
『そーそー。解釈違いとかあって、そうじゃねぇだろ⁈ とか舞台演出見て思ったりするしねー』
『分かるー! あたしに演らせろ‼︎ とか、そういうの見ると思うしねー』
『あるある!』
ケラケラっと笑いながら会話を交わす彼女達の目と手は、携帯画面から全く離れていなかった。
頭と身体と手と口の神経を全然違うことに振り分けることができるのは、脳幹の太い女性脳ならではだ。
羨ましい。
[彼女は、仕事に就いた後もこうして楽しく過ごしていて、カラオケボックスという場所で、お友達とプレイしている最中、災害に遭って亡くなったのよ]
「……わたしも、フランもルナも、ゲームのプレイちゅうに、さいがいでしんでるのね」
[ええ。おかげでこちらに連れて来やすかったから、災害自体は喜ばしくはないけれど、わたくしとしては、助かったわね。魂を探さずに済んだから]
「エルドレッドさまも、おなじように、さいがいでなくなられたのですか?」
サーシャエールと舞子さんのやりとりに、そうリリエンヌが問いかけを投げた。
[いいえ。でも彼はそのお陰で、わたくしが早期に発見出来たとも言えるから、問題はなかったわ]
ソウデショウネ。
どうせこの後、バラされるんだろうから敢えて今、口にはしないけど。
「前世という概念があること自体は、聖典などで知ってはいましたけれど、こうしてそれを目の当たりにすると不思議な感じがするわね」
「わたくしたちのばあいは、サーシャエールさまのかごがあったから、ぜんせのきおくをあるていど、おもいだしていて、いまみてもらったえいぞうと、せいかくとか、あまりかわっていないから、よけいにそうおもえるのだと?」
「そうだな。俺の知ってるヤツに前世、ダニだったってヤツが居てさ? 住んでた畳が家ごと火事で焼けて、必要な功徳が満タンに貯まって人間に転生出来たってヤツがいたけど、当然ながら、自分がダニだった記憶なんざなくてさ?」
「なくてよかったわね」
俺が例え話し的に出したそれを舞子さんが、端的に肯定した。
「うん、まぁな。でもそいつ、火事はテレビの映像で見てるだけで怖いってよく言ってたし、魂のどっかには、そういうの刻まれちまってるんだろうから、前世って意外と誰もが何かしらの影響受けて、今も生きてるんだと思うぜ?」
魂に刻まれたものは、死んで記憶をリセットされ、転生を繰り返したのだとしても消えることはない。
それは、サーシャエールも言っていたし、俺も今は、真実なんだと知っていることだった。
「ルナさま、マックスさまコスプレーヤーでしたのね……」
「うん! わたし、もともとコスしだしたりゆうって、おしキャラになりたいはだったからなのよね!」
推しキャラになりたい派。
それは乙女ゲーに限らずコスプレーヤーには一定数存在していて、ヒロインキャラになって推しキャラとのコス写に命をかける派とは違い、自分が感じているキャラの理想の姿を自分を使って再現する、言ってみればコスプレをしている間にだけ有効な演劇の1種みたいに俺の目には見えていた。
中にはコス衣装に着替える前も、アフターになってもそのキャラのまま、という筋金入りな子もいたし、元々の性格や言動がそのキャラに近くて、コスをしている、という子も居たりした。
大学生亜梨沙さんのマックスは、彼女がこれまで生きてきて、幅広く吸収・収集してきた雑学じみた知識と技術の集大成みたいなキャラになっていて、本人にそのつもりはなかったようだが、周囲からは「覚醒後の賢者verマックス」と認識されていた。
イベントが終わって、近くのファミレスやカラオケでアフター、となると彼女達は誰からともなく “花キミ” アプリを立ち上げて、デイリーを消化したり、午後の授業をオート設定して走らせたりしていて。
『ありりん! マックスさまイベ起こったけど見る?』
『見る見る!』
そんな感じで互いのプレイを見せあったりしていて、これまで見てきた舞子さんや友理恵さんとは全く違うプレイスタイルだな、と俺は感じていた。
『やっぱ、マックス様、カッコいいのよねー。ヘタレっクスも闇っクスも悪くないけど、この、ヒロインを信じて心を開いて受け入れてくれた時の笑顔スチル、マジ最高過ぎてさー。再現難しいのよねー。どうしても理想通りにはならないわー』
『分かるー。自分ではしてるつもりでも後でコス写見ると、違ぇよ! こうじゃねぇんだよ! ってなるんだよねー』
『その内さ、花ミュとかやんないかな? 人気あるんだし、アニメとか2.5次元舞台とか、やりそうなのに』
『でもきっと、ゲームスチル至高なのよねー』
『まぁ、そこは動かないっしょ。2.5次元は、あくまで2.5次元。キャラ本人じゃないし?』
『そーそー。解釈違いとかあって、そうじゃねぇだろ⁈ とか舞台演出見て思ったりするしねー』
『分かるー! あたしに演らせろ‼︎ とか、そういうの見ると思うしねー』
『あるある!』
ケラケラっと笑いながら会話を交わす彼女達の目と手は、携帯画面から全く離れていなかった。
頭と身体と手と口の神経を全然違うことに振り分けることができるのは、脳幹の太い女性脳ならではだ。
羨ましい。
[彼女は、仕事に就いた後もこうして楽しく過ごしていて、カラオケボックスという場所で、お友達とプレイしている最中、災害に遭って亡くなったのよ]
「……わたしも、フランもルナも、ゲームのプレイちゅうに、さいがいでしんでるのね」
[ええ。おかげでこちらに連れて来やすかったから、災害自体は喜ばしくはないけれど、わたくしとしては、助かったわね。魂を探さずに済んだから]
「エルドレッドさまも、おなじように、さいがいでなくなられたのですか?」
サーシャエールと舞子さんのやりとりに、そうリリエンヌが問いかけを投げた。
[いいえ。でも彼はそのお陰で、わたくしが早期に発見出来たとも言えるから、問題はなかったわ]
ソウデショウネ。
どうせこの後、バラされるんだろうから敢えて今、口にはしないけど。
「前世という概念があること自体は、聖典などで知ってはいましたけれど、こうしてそれを目の当たりにすると不思議な感じがするわね」
「わたくしたちのばあいは、サーシャエールさまのかごがあったから、ぜんせのきおくをあるていど、おもいだしていて、いまみてもらったえいぞうと、せいかくとか、あまりかわっていないから、よけいにそうおもえるのだと?」
「そうだな。俺の知ってるヤツに前世、ダニだったってヤツが居てさ? 住んでた畳が家ごと火事で焼けて、必要な功徳が満タンに貯まって人間に転生出来たってヤツがいたけど、当然ながら、自分がダニだった記憶なんざなくてさ?」
「なくてよかったわね」
俺が例え話し的に出したそれを舞子さんが、端的に肯定した。
「うん、まぁな。でもそいつ、火事はテレビの映像で見てるだけで怖いってよく言ってたし、魂のどっかには、そういうの刻まれちまってるんだろうから、前世って意外と誰もが何かしらの影響受けて、今も生きてるんだと思うぜ?」
魂に刻まれたものは、死んで記憶をリセットされ、転生を繰り返したのだとしても消えることはない。
それは、サーシャエールも言っていたし、俺も今は、真実なんだと知っていることだった。
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