生まれた国を滅ぼした俺は奴隷少女と旅に出ることを決めました。

柚木

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地の国 ガリクラ

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「それじゃあ、お世話になりました」

 見送りのため地上までついてきてくれたヤグマさんに挨拶をし、くたびれていた機械馬の修繕も昨日終わり新品同様の馬車に乗り込む。

「気をつけてな」

 見送りの時まで甲冑を脱がないヤグマさんの言葉に軽く社交辞令を述べる。

「オレイカは結局来てくれなかったね」

「オレイカが昨日言っていたぞ。湿っぽいのは嫌いだから、最後は会わないで行く。だそうだ」

「そうだね」

 ルリーラが少しだけ悲しそうにしたがすぐに笑顔に戻る。

「じゃあ、もう行きますね」

「達者でな」

 俺達が馬車を走らせるとヤグマさんは再び地下に戻っていく。
 結構ハードな国だった。
 いや、ハードだったのは俺とサラだけか。

「こっちの方向でいいんですよね」

「ああ、ヤグマさんから聞いた。このままいけば時期に壁が見えてくるらしい」

 今日の操舵は俺とアルシェの二人だ。
 普通に走れば二日と言っていたし、アルシェの操舵なら今日中には姿は見えてくるだろう。

「兄さん、ちょっといいですか?」

 荷台からミールが顔を覗かせる。
 その顔はどこか不思議そうだ。
 アルシェに操舵を任せ、荷台に入る。

「どうかしたのか?」

 さっと見渡すが何も変わったことはなさそうだ。
 荷物も積みこんでいるし、全員そろっているのは確認している。

「この荷物なんですが、兄さんのですか?」

 指さす先にあるのは大きな荷物。
 確かに見覚えはない。少なくとも俺の持ち物ではない。
 普段使っている麻袋だが、そのサイズに見覚えがない。

「わからないし、開けよう」

 荷物を開けようと近づくと、荷物が急にもぞもぞと袋が動き出した。

「なんだ!?」

 これはグシャの復讐かと身構える。爆発に機械人形、毒と色々な事態に対抗するように考えを巡らせる。
 しかし、それは杞憂だった。

「あれ? 開かない。そんなに強く縛ってないのに!?」

 中に入っているのが誰か理解した。
 そりゃあ見送りには来れないよな。

「ガルベリウスに送り届ける方法はないのか?」

「なんで?」

 しばらくもぞもぞと動いていたが急に動きは止まる。
 そして袋を開けることを諦めたオレイカは、袋を派手に破き跳び出してきた。

「なんで、ついてきたんだ?」

 形がわからないようになぜか詰められていた紙屑を払うオレイカに聞く。

「実験とか試作。話したでしょ? 馬車じゃない物を作るって」

「言ってたな」

 まだ先の段階だと思っていた。
 魔力の供給で馬を走らせる物ではなく、荷台の方を走らせる物。

「その実験と試作。ここなら人が多いし色々な魔法を使える人たちがいるから」

「そうかよ、好きにしろ」

 本当は知っている。
 俺だけじゃなくてみんなも、だからこそみんな何も言わない。
 要は傷心旅行なのだろう。
 あそこにいると、嫌でもゲイルを思い出す。
 だからこそ、俺達といて実験をして気を紛らわせようとしているんだ。

「それじゃあ、急いで地の国を目指そう」

 空元気のままオレイカは操舵席に座り、アルシェから手綱を奪い取る。

「それじゃあ、いっくよ」

 そして急激に魔力が膨らんでいく。

「ちょっとまて」

 止める間もなく大量に注ぎ込まれた機械馬は、急激に速度を上げる。
 その場で置き去りにされそうな速度を出す馬車は、わずかな段差でも大きく跳ね上がる。
 体も荷物も宙に浮きあがり、文字通り飛びながら進んでいく。

「後ろしっかり止めておけ、荷物も人も飛び出すぞ」

「はい」

 この度が始まってから何度目かの機械馬の全力。
 対処法はわかっているのでミールやフィルに指示を飛ばす。
 二人が必死に荷台の後ろの紐をしっかり締め、荷物が跳び出さないようにする中ルリーラとセルクだけは楽しそうにする。

「すっごい」

「いつやっても楽しい」

 子供二人が楽しんでいる中、他は荷物を外に出さないように気をつけていた。

「オレイカ」

「……はい」

 暴走する馬車が泊まったのは、地の国の外壁が見え始めてからだった。
 急ぐ旅でもなく、馬車を大事にしながら進んできた。たまに全力を出したりはしていたが素人なりに修理をし、今回は職人に修理してもらった。
 だが、今回初めて馬車の荷台についている車輪が崩壊した。

「直せるよな?」

「はい、誠心誠意直させていただきます」

 深く頭を下げるオレイカに修理を任せる中、俺達は荷物の確認を始める。
 幸い荷物はどれも外に出ていないが、壊れている可能性はある。
 それほどまでに激しい操舵だった。

「アルシェの時もこうじゃなかった?」

「あの時は精霊が魔力を食ってくれただろ」

 そのおかげで、荷台は無事だった。
 だが、今回はそんなことが起こるはずもなく、車輪が壊れてしまうまで走り続けてしまったのだ。

「王様、直したよ」

「早いな」

 そして、馬車に目を向けると、そこに馬車はなかった。
 合ったのは荷台のみ。布が張られている四角い箱に車輪が四つ。それだけしか残っておらず、機械馬はどこかに消えてしまっていた。

「直せって言ったよな」

「だから、より強固なものにしてみました!」

 無駄にデカい胸が揺れ、妙にムカつく。

「壊れた車軸の部分は鉄で覆ったから多少の衝撃はものともしないよ。ここみたいに荒れた道でも車輪が傷つかないようにゴムを巻いて耐久性を向上。機械馬の代わりにバーをつけたよ、どっちに進むかわかりやすいように二本付けたから、この二本の隙間の方に進むよ。このバーが手綱と同じ役目を果たすから。車輪の前輪部分は――」

「もういいから、黙ろうな」

「まだ全然話したりないよ」

 こいつがここまで馬鹿だったとは思いもしなかった。
 いや今の短時間で作ったんだから十分に天才なんだけど、やっぱり馬鹿だ。

「これで走れるんでしょうか」

「わかんない」

「よし今すぐにシェルノキュリに戻るぞ。この馬鹿を送り返す」

 俺達は何も言わずにオレイカを担ぎ始める。

「待って、大丈夫だから壊れないから」

「じゃあ、地の国までお前が操舵しろよ。くれぐれも安全にな」

「合点承知」

 元気よく操舵席に座るオレイカに、不満を覚えながら荷物を載せる。

「じゃあ行くよ」

 みんなが各々不安のため荷台の柱を掴む中、荷台が進んでいく。
 ゆっくりと進みだし徐々に速度が上がっていく。
 順調な発進、そして何より驚いたのは振動が少ないことだ。馬車だと馬が走り荷台を引っ張る都合上どうしても連結部からの振動がある。それに馬が走る振動がどんなに荷台を頑丈にしても伝わってしまう。

「馬車よりも揺れが少ないですね」

「それは当然だよ」

 ミールの言葉にオレイカが頷く。
 荷台がそのまま操舵席になっているから、こちらの声もはっきりと操舵席に届く。

「車軸には鉄で覆ってバネもつけてるからね。振動はバネがいい感じに分散してくれてるよ」

「なるほどな」

 衝撃が少なければ、故障の可能性は格段に下がる。そして衝撃が無いということは揺れもない。こうして聞くといいことしかない。

「そうなら別にいいんだ。地の国まで頼むな」

「凄いですね、お尻が痛くないです」

「それは確かにな」

 結構速度が出ているにも関わらず、振動が少ないおかげであんまり尻が痛くない。

「快適だから私は寝るね」

 ルリーラが寝るとみんなも一人ずつ夢の中に落ちて行った。
 結構旅は体に応えるらしい。

「オレイカ、馬車の調子は良さそうだな」

「流石私だね」

「そうだな」

 荷台を移動し操舵席に腰を下ろす。

「結構近くまで来たみたいだな」

「入るのは南門からでいいよね」

「ああ、そう言えばそういう場所だっけか」

 地の国ガリクラは、東西南北で様子が変わる。
 その上で三階層に分かれているせいで、覚えるのに苦労した。
 確か南は宿街だったはずだ。

「荷物を置きたいからな、そこでいいぞ」

「王様は全部の国について知ってるの?」

「流石に無理だ。主要国は覚えているけどな」

 ルリーラを連れて行くのに、どの国がどうかわかっていないと何もできないしな。

「じゃあ、地の神様については知ってる?」

「娯楽が好きな女神だろ?」

 遊びが好きで、民衆と遊ぶこともよくある女神だという情報だけは知っている。

「たぶん、ルリーラとセルクには面白い国だと思うよ」

 実際に地の国に行ったことのあるオレイカに、地の国の説明を聞きながら地の国にたどりついた。

 地の国に着くとオレイカが門番と知り合いだからと勝手に外に出て行き門番に話しかけた。

「オレイカさん。お久しぶりです」

「こんにちは」

 知り合いというだけあり、オレイカは門番の男性と少し談笑をしすぐにこちらに戻ってきた。

「このままでいいってさ」

 そう言い自走する荷台を動かすと、驚いた様子の門番に見送られながら街の中を進んでいく。
 街の中はたくさんの人が行き来していた。
 宿街だから待ち行く人たちはラフな服装が多い。

「行きつけの宿屋があるけどそこでいい?」

「宿屋って行きつけがあるのか?」

 そういうのは普通飲食店とかの店じゃないのか?

「設備もいいし私が居れば安くなるよ」

 身内料金なのか、とりあえず安くなるならいいか。と決め案内を頼んだ。
 行きつけというくらいだから何か特別な施設なのかと思ったが、連れていかれたのは二階建ての宿屋だった。
 オレイカがそのまま入っていくと値段交渉も早々に終わりあっという間に宿が取れた。

 そこから気持ちよく眠るみんなを起こし荷物を部屋に運ぶ。
 この宿は本当の家の様に一つの部屋が複数に分かれている。居間にキッチン、そのほかに三つの部屋がある。
 中々良い所だ。
 ここがこの国にいる間の拠点で問題はなさそうだ。

「早速自由行動でいいか?」

「いいの?」

「この街は広いしな、各々好きな場所に行った方がいいだろ」

 全員で宿屋からもらった地図を持ち地の国の探索を開始する。



「ここが西区の遊戯地域。この国で一番人気がある場所だよ」

 俺とルリーラは、オレイカに案内され遊戯地域に足を運んだ。

「おー!」

 子供らしく目を輝かせるルリーラは興奮しながら叫んだ。

「オレイカ、オレイカあれ、あれ何? すごいスピードだよ! あっちは凄い回ってる!」

「あれは高速で決められたルートを遊具だよ。あっちは高速で回って空を飛んでいる感覚になれる遊具」

「あの機械馬は遅いけどいいの? あっちはカップが回ってる!」

 ルリーラの矢継ぎ早な質問に、オレイカは西区についたばかりなのにすでにぐったりとしている。

「王様、助けて」

「だから道を教えてくれるだけでいいって言ったんだよ」

 もちろん、こうなるのがわかっていたから俺は止めた。
 だが、折角だから遊具についての説明もしてあげる。とオレイカが自ら死地に飛び込んできたのだ。

「まさか、ここまでとは思ってなかったよ……」

 体力が有り余っているルリーラの相手を、体力が少ないオレイカに案内できるとは思えなかった。

「オレイカあれは何?」

 テンションが上がりすぎて、周りが見えていないルリーラは更にオレイカの手を引こうとする。

「あれは高所まで急上昇してそこから落下するる時の浮遊感を楽しむ遊具だ」

 不意にルリーラの質問に答える声が聞こえた。

「よければ我が案内してやろう、ルリーラ」

 女性はオレイカに伸びた手を掴む。
 俺は、その所作から感じた、普通じゃない気配に反応し武器に手をかける。

「慌てるなクォルテ・ロックス」

 俺の名前、誰だ?

 改めて声の主に目を向ける。
 プリズマにも負けない真っ白な肌、その白さを裏返したような黒い髪は肩までと短い。
 整った美貌に、背も高く体の起伏も大きく男の目を引く。
 そんな男を欲情させる自分の造形を理解しているのか、面積の少ないチューブトップとパレオを纏った服装。

「そう見つめるな、我はこの国で一番怪しくないぞ」

「そういう奴が一番信用できないんだ」

「それもそうか、オレイカ、我の身の潔白を証明してくれ」

 ようやく休んでへたり込んでいるオレイカが、声の元に視線を向ける。

「あ、ガリクラ様!」

 たった今へたり込んでいたオレイカは、驚く速さで立ち上がる。

「ガリクラ……って地の神ガリクラ!」

「そうだ、我がこの国の王、地の魔法使いの最高位の神である」

 地の神は胸を張り改めて宣言した。

「失礼しました。そうとは知らず無礼を」

 自分の非礼を詫び頭を下げる。

「そう畏まる必要はない。不躾だったのは我でお前は正しい反応をした」

 そう言うと俺の頭を撫でる。

「流石水の神と火の神に気に入られた人間だ」

「お二方にはよくしてもらっています」

「それでオレイカ、今日は何用でこちらに来た?」

「見分を広めるために国を出ています」

 同じく頭を下げそう報告する。

「ふっ、そんな前向きな理由ではあるまい」

 神は嫌味な笑みを浮かべる。これは駄目だ。そう思い俺はオレイカの手を掴む。

「それでは、俺達はもう行きます」

「話の途中だが?」

 ここからが面白い所だぞ。そう言いたげな顔の地の神に深く頭を下げる。

「ええ、また改めてお伺いいたします」

「案内くらいしてやるぞ」

「もう少し、自分達で周りたいと思います」

「そうかではまた」

 その場を去る時に、地の神はいやらしい笑みを浮かべる。
 やっぱり、知っていて言おうとしやがったな。

「ありがとう」

 俺は気にするなとオレイカの頭をフード越しに乱暴に撫でてやる。

「どうしたの?」

「何でもないから行くぞ」

 何があったのか、わかっていないルリーラの頭に軽く触れ先に進む。

「そうだった忘れていた」

「うおっ!」

 気を取り直そうと一歩踏み出した直後、地の神が再び目の前に現れた。
 そこに今までいたかのような、唐突の登場に大きな声を上げてしまった。

「これをお前達に渡すんだった」

 いつの間にか持っていた数枚の紙をこちらに差し出している。
 細長い長方形の紙切れには、何やら細かく書かれている。

「どうも先ほどは不快にさせてしまったようなのでな、そのお詫びも込めてだ。それでは」

「ちょっと!」

 伸ばした手も虚しく空を切るだけで終わってしまった。

「結局これは何なんだよ」

「フリーパスだよ。それ」

「なんだそれ」

 確かに紙にはフリーパスと書かれている。
 だけど、フリーパスが何なのかはわからない。

「この国での娯楽施設、つまりここの西区と北区で使える券でそれを見せればお金はかからない」

「そんな券がここに何枚かあるぞ」

「きっと王様の仲間全員分だよ」

 数えると確かに人数分がある。

「じゃあ何に乗っても全部タダなの?」

「そうなるな」

 目を輝かせるルリーラは、その身体能力を使って目にも止まらない動きで俺から券を奪い去った。

「奪わなくてもちゃんと全員に渡すから」

「私はこれから全部に挑戦してくるね」

「ちょっと待て」

 またしても伸ばした手は空を掴んでしまった。

「追いかけないの?」

「この人ごみでルリーラを捕まえられると思うか?」

 ベルタの身体能力を全部使ってこの人ごみを移動するルリーラを、一般人の俺が捕まえられるわけがない。

「それに寂しくなったらすぐ戻ってくるさ」

「王様って、過保護なのか放任なのかわからないね」

「基本放任だ。危なそうなら意地でも止める」

 それが子を持っていない俺の父親としての姿だ。
 それでも結構危ない橋は渡らせてしまってるけどな。

「王様がそれでいいならいいんじゃないかな」

「じゃあ、あいつが戻ってくるまで俺は少し眠るよ。オレイカも好きに移動したらいい」

 俺は日影のベンチに腰を下ろし目を瞑る。

「不用心じゃない?」

「フリーパス以外に大したもんは持ってないしな」

 せいぜい食費くらいだ。
 盗られたって一食抜きになるだけだし別に気にしない。

「本当に気にしなくていいぞ」

 隣に一緒に腰掛けるオレイカに声をかける。
 うつむくオレイカの顔はフードで見えない。

「私もそんな気分じゃないから、隣に座ってる」

「そうか」

 あまりじろじろと見ても仕方ないので俺は目を閉じる。

「さっきは、ありがとうございます」

「別に当然のことだ。気にするな」

 明らかに地の神は、オレイカの触れられたくない場所に触れに行った。
 そんな無神経なのを許しておけなかった。

「地の神ってあんななのか?」

「利己主義な神かな、快楽主義の方が正しいかもだけど」

「理解した」

 水の神、火の神とはまた違う神だな。
 あの二柱は人と歩もうとしている節がある、だから今回みたいに神経を逆なでするような真似はしない。だが地の神は違うみたいだった。

「普段は周りも楽しませてくれる神なんだけどね、よっぽど私がシェルノキュリを出て行くのが気に食わないみたい」

「そうか、でも出て行くんだろ?」

「うん。しばらくは旅をするよ」

「じゃあ、それでいいだろ……、人間は神から恩恵を得ているけど、神の奴隷じゃない」

 流石に眠くなってきた。

「そうだね。ごめんね寝るのに話し続けちゃって」

「気にすんな、仲間だろ」

 疲れていたようで思考が途切れ途切れになっていく。
 日陰の適度な涼しさは心地よく、近くにあるはずの雑踏が少し遠く聞こえる。

「うん、ありがとう。おやすみなさい」

 少し、元気になったみたいだ。
 オレイカの声に安心し俺は意識を手放した。

 少しの肌寒さに意識が急激に引き戻される。

「――しちゃおうか?」

「駄目だから」

 ルリーラとオレイカか、ルリーラが戻ってきたのかそろそろ起きないとな。

「顔の落書きがダメなら、口にこの飴を」

「それくらいならいいのかな?」

「いいわけないだろ。下手したら喉に詰まって死ぬぞ」

「起きちゃった」

「最初の目的と変わってない?」

「最初の目的?」

 何か用事があったのだろうか。それとも見せたいものがあったのか。

「気持ちよさそうに寝てたから、たたき起こそうとしてた」

「それはまた、ありがとうよ」

 とんでもない理由で俺の安眠は妨げられていた。

「毎朝の私の気持ちを知るといいさ!」
「どこの悪役だ」
「おっちゃん」
「確かに悪党だったアリルドは」

 盗賊団の親玉だし、最初の時はそんなだった気もする。

「そうなると俺らも悪党か」

 盗賊の親玉の親玉だったな俺。

「どうだ、楽しかったか?」

「うん、最高だった」

 よほど激しく遊んできたのか、闇色の髪がぼさぼさに跳ねている。
 その頭を軽く撫で整えてやる。

「本当に親子みたいだね二人とも」

「そうか?」

「クォルテがおじさんっぽいからね」

「お前が小さすぎるからだろ」

「そうなると私も娘枠になるの?」

「娘枠って、決めたことはないけどな」

 各国で娘を拾って旅するとか、どんな父親だ。
 ふと空を見上げると日はもう沈みかけていた。

「もうこんな時間か」

 そろそろ一度宿に戻らないといけないな。

「じゃあ、そろそろ帰るか」

 いつも通りルリーラが俺の手を掴む。
 そして反対側にオレイカが力一杯手を掴んできた。

「えっと私もいいかな?」

 うつむき、こちらを上目遣いで見てくる姿は、頭についている耳と合わさり愛らしく見えてくる。

「別にいいよ」

「ありがとう」

 そう言うとすぐに隣に立ってしまい、顔は見えないがマントの揺れで嬉しさが伝わってきた。
 二人の身長のせいか、本当に父親になったような感覚になる。
 七姉妹か、大変だけどそれはそれでいいかもしれないな。
 残りの五人を迎えに俺達は街に歩みを進める。



 自由行動の翌朝、ドアを叩く音で起床する。

「はい」

 先に起きていたアルシェが出迎えている間に、俺は身支度を整える。
 わざわざ部屋に来るってことは、それなりの要件があるのだろう。

「少々お待ちください」

 パタパタと足音が聞こえるってことは、やはり俺に話があるのだろう。

「クォルテさん、地の神の御使いの方がいらっしゃっています」

「すぐ行く」

 神の御使いか……、昨日のことを思うとあまり気は進まないが、無視するわけにもいかず入口に向かう。

「クォルテ・ロックス」

 ドアの前には大男が立っていた。
 俺よりも頭二つほど大きく、サイズだけで言えばアリルドと同じ巨漢が立っていた。
 そしてその巨漢はローブで隠れており顔はうかがえない。

「何か御用でしょうか」

「神がお待ちだ、準備をして至急城へ」

 そう言って一つの玉を渡される。
 透き通っていて綺麗な水晶玉。
 これが通行券ってことか?

「転移の魔法が籠っている結晶だ。準備が出来たら割れば城に着く」

「用意がいいな」

 転移の結晶から前に顔を向けた直後、今しがたまで居た巨漢は姿を消していた。

「本当に派手好きって感じだな」

 結晶を手にみんなに声をかけて回った。

「じゃあいいな」

 約三名ほどまだ夢と現実を行き来しているが、気にせず転移の結晶を砕く。
 その瞬間、俺の手の平に周りの空間が飲み込まれたと思った直後、すぐに新しい景色を俺の手は吐き出した。
 そして、俺達は城の中にいるのだと、全てが終わってから認識した。
 水の神が使った転移の魔法とはまた違う現象。
 属性が違えば魔法も変わるか。

「やあ、クォルテ・ロックスとその仲間達」

 声のする方向には、玉座に深く腰掛け座る地の神がいた。
 昨日と変わらず男を虜にする煽情的な服装と態度が、やはり水や炎の神との違いをハッキリさせる。

「昨日の今日で呼び出しですか?」

「昨日改めて伺うと言っていただろ? だからこちらから呼んでやったのだ」

 自己中心的。
 それゆえにこちらに主導権を渡してくれそうにない。
 流石神と言ったところか。

「それに貴様達に頼みがあるのだ」

「なんでしょうか?」

 頼み? 魔獣退治とかそんな話だろうか?
 だけど、魔獣がこんなところに出るはずもない。

「身構えるな、ゲームに参加してもらいたいだけだ」

「ゲーム?」

「そう、ゲーム。国民が参加する祭りのようなものだ、ウォルクスハルクの武道大会のような物だと考えてくれればいい」

「たまにガリクラ様が催しとして開催するの」

 説明不足の言葉にオレイカは補足してくれる。
 なるほど昨日言っていた皆を楽しませてくれるってやつか。

「毎回優勝者には賞金を与えている」

「賞金ですか?」

 なんでそんな話をする? 俺達がそれに乗ると思っているのか?

「そうどこの国でも一年は暮らせる」

「それは凄いですね」

 地の神は意地悪く口角を上げる。

「別に我々は金に困ってはいないですが?」

「お前達には特別にもう一つ賞品をつける?」

「なんでしょうか?」

 俺達に?
 そこまで俺達を、ゲームに参加させたい理由はなんだ?
 地の神の心意を考えるが情報が少なく、わからない。

「貴様達の願いを一つ叶える。例えばこの国で隠している国の娘の旅を許すとかな」

 そういうことか。
 オレイカを渡さないため。
 このゲームに勝てなければオレイカは渡さないってことか。

「その願いよりも、神の座から引きずり下ろすっていう願いなら。一石二鳥じゃないでしょうか?」

「ちょっとクォルテ?」

「そんな願い我が許すはずないであろう」

 地の神は自分の内にある魔力を放つ。
 その力にこの部屋が大きく震える。

 圧倒的な魔力。でも過去にもっと殺意の篭った魔力、それと本気の魔力を見て知っている。
 この程度で気圧されはしない。

「ヴォールが認めた男か、なるほど中々の胆力だ」

 愉快そうに笑うと地の神は魔力を納める。

「では必ず守るべき規則の話に入ろうか。今回のゲームは盗賊と警邏、四人を一組として警邏と盗人に分かれてもらう」

 四人一組、ちょうど俺達で二組作れるってことか。

「警邏と盗人で勝利条件が異なる。警邏側の勝利条件は盗人全員の捕獲とターゲットを確保し続けること。盗人側の勝利条件はターゲットの確保と時間内まで逃げ切ることだ」

「勝利条件に矛盾がありますが?」

 警邏側の勝利条件のターゲットを確保し続ける。と、盗人の時間内まで逃げ切ること。が同時に達成できてしまう。

「それは後で触れる。ターゲットはゲームマップ上のどこかに隠しているので、それを両チーム探してもらう」

「参加は何組が出るんですか?」

 人数次第では逃げたほうがいいだろう。
 逃げ切った方が危険は少ない。

「落ち着きがないな。参加は十組の予定だ。ついでにさっきの回答だが、ターゲット数は三を予定している。もしターゲットを互いに一つずつ確保しているまま制限時間を過ぎた場合は、盗人の残り人数で決まる。半数以上が残っていれば盗人側の勝ち。半数以下しか残っていなければ警邏側の勝ち。同数の場合は盗人の勝ち。それ以外はターゲットを確保している数が多いチームの勝ちだ。そして盗人が全て捕まらない限りは制限時間一杯までゲームをする」

 確保だけが広さにもよるが、そこまで盗人側に不利益があるわけじゃなさそうだな。

「捕獲のルールは何があるんですか?」

「盗人の手首にこの錠を嵌めることだ」

 触れるだけではダメってことか。

「盗人を助けるルールはあるんですか?」

「この錠を同じ盗人が外すことだ」

 それなら、二組で片方に身体能力の高い奴らを固めて挑むのがいいか?

「参加するだろう?」
「しますよ」

「楽しみにしているぞ」
「では失礼します」

「そうだ、二つ言い忘れていた。貴様達が参加できるのは四人一組まで、それとオレイカは必須、魔法は自由だが道具の持ち込みは禁止だ」

 今それを言うのか……。
 いや、確認を怠ったのはこっちの落ち度か。

「そして、ゲームを執り行うのは明日の昼だ」

「わかりました」

 城を出て俺は頭を抱えた。

「くそっ、八人いれば楽勝だと思ってたのにな」

 俺とオレイカが注意を引いて、その間にルリーラとフィルにターゲットを探してもらおうと思っていたが、結構厳しいな。
 オレイカが必須、俺も入ると後二枠、ある程度近距離で戦えないといけないとなると……。
 それに明日の昼……、策を考える時間すらない。

 そうまでしてオレイカを手放したくはないか。

「私が迷惑かけてるみたいだね」

「そんなことは無いよ」

 オレイカの問いにルリーラが答える。

「面倒事に巻き込んじゃったみたいだし」

 そう言うと、オレイカの耳と尻尾は力なくうなだれる。

「ルリーラがそんなこと無いって言ったろ」

「クォルテさんはそんなこと気にしないですよ」

「ご主人はむしろ喜ぶ」

「俺は変態か」

 俺の言葉にみんなが頷き笑い始めてしまう。

「まあ、無茶言ってるのは向こうだ。そんで俺はあの神は嫌いだ」

「兄さん、いつになく真剣ですね。オレイカさんに恋をしたんですか? そうならそうと早く行ってくださいよそんな発情した雌犬を側においては置けないので」

「恋ではないぞ」

 だからその目をやめてください。

「旦那様は、地の神が人を所有物と思っているのが許せないだけだ」

 そう言われると俺が言い人の様になってしまうのが嫌だが、概ねそれで正解だ。
 奴隷を下に見ている連中と、同じ雰囲気に耐え切れなかっただけだ。

「そんな感じだから俺はあの神に一泡吹かせてやりたい」

「ありがとう、王様」

「オレイカは可愛いから気にしないでいいの」

「いや、俺はそんな気はさらさらないからな」

 たまたま面子が綺麗どころってだけだ。
 綺麗だから助けないってわけじゃない。

「それでもやっぱり助けて貰ったらありがとうだよ」

 オレイカが笑顔でありがとうと言うそれは、とんでもない破壊力があった。
 なにせ、可愛いから助けるわけじゃないって気持ちが、嘘になるほどに俺の中で頑張ろうと強く思えた。



「じゃあ行くぞ」

 ゲームの当日、全員で宿を出る。
 正直不安しかない。
 当然勝てるように考えた、規格外の参加がなければ惨敗は無いはずだ。
 それにしても時間が圧倒的に足りないな。

「クォルテ大丈夫?」

「まあ、結構厳しいのは確かだな」

 それにわずかに逃げ切る手段も残っているしな。
 警邏側なら多少は勝利条件が緩い、それと参加者は賞金が目当てだということだ。

「私が素直にシェルノキュリに帰ればいいのかな? って、痛い」

 未だにふざけたことを言っているオレイカにデコピンをする。

「ふざけたことまだいうなら、もう一発するぞ」

 オレイカは額を抑える。
 あんまり俺が神妙な顔してたら駄目だよな。

「おい、お前! 今その美少女に何をした!」

 それなりに、声を張ったのはわかるが距離があるのか叫んだ相手の姿が見えない。

「こっちだ!」

 再びの叫び声から、大きな爆発音が聞こえ誰かが空から降ってきた。
 大きな着地音と共に現れたのは、俺よりも少し身長の高い茶髪の男。
 快活そうな顔に元気が爆発したようなツンツン頭の男。

「誰?」

 男は、いきなり俺の胸倉をつかむ。

「今この美少女に危害を加えたな、クォルテ・ロックス」

 俺の体を片手で浮かせる男は俺を知っているらしいが、やはり記憶にない。
 見た目通りに暑苦しい男に肘まで覆う篭手、ごつい靴。改めて見ても記憶の端にも引っかからない。

「やめなさい!」

 その声と共に、人に当てるには大きなサイズの石が飛んできた。

「いっ……」

 そしてその大きな石は男に当たる。
 鈍い音共に男の首は前に直角に曲がる。
 死んだんじゃないか?

「ってーな。何するんだイーシャ!」

「いきなり魔法で飛んで、人様に迷惑をかけている幼馴染に活を入れただけよ」

「にしてもデカいだろ流石に!」

「あんたを止めるのにはあれくらい必要なの」

 いきなりメガネをかけた女性が割って入ってきてくれた。
 止めてくれたらしいが、混乱が解消されるわけでもない。

「二人とも落ち着いてよ、こちらの人達が間の抜けた顔してるよ。それにフィルムくんが考えなしなのを知ってて鎖をつけておかないイーシャちゃんもイーシャちゃんだよ」

「今鎖っていった? リースの中では俺って獣と同じ扱い?」

 更に人が増えた。
 そしてさらりと全員に毒を撒いたよね?

「そうでした。クォルテ・ロックスご一行ですよね」

 メガネの女性が改めて俺の前に立った。
 純白の髪に眼鏡の奥に空の様な澄んだ青色の瞳が俺を捕らえる。
 凜とした空気は、アルシェとも違った雰囲気を放っている。

「私の名前はイーシャ・フィルグラム。このフィルム・ガーベルトと一緒に旅をしているものです」

「ご丁寧にどうも、クォルテ・ロックスです」

 深く頭を下げたフィルグラムさんに会わせ頭を下げる。
 しかし頭を上げたフィルグラムさんの瞳は、敵意に満ちていた。
 俺は知らない。
 アルシェやフィルに視線を向けるが、二人も知らないらしい。
 そうなるとウォルクスハルクの武道大会の時か?

「イーシャ、後は俺が代わる。クォルテ・ロックス、俺はお前に挑戦する」

「何の?」

「そんなのわかってるだろ! 自分の胸に手を当てて考えてみろ!」

 挑戦すると大々的に宣言した、フィルムと呼ばれた男の言葉に素直に返事をした。
 このタイミングで声をかけてきたということは、おそらくゲームだろうと当たりはつけられるが、正直挑戦される理由がわからない。

「ヴェルス、フィルムを抑えていてください。クォルテ・ロックス氏との話は私がいたしますので」

 後ろの離れたところに立っていた、長身の美女も仲間だったらしく無言でフィルムを抱え再び後ろに下がる。

「フィルムが無駄な時間を取らせてしまい申し訳ありません」

「いえいえ」

 本当に無駄な時間だった。とは言えそうにない雰囲気に俺は適当に相槌を打つ。

「私達も今日のゲーム大会の参加者です。そして、あなた方と同様にガリクラ様から条件付きで一つ願いを叶えて頂けるのです」

「ようやく話は繋がったけど、負けてくれって提案なら飲めない。こっちも負けられない事情があるんでな」

「ええ、ですから正々堂々どちらが勝っても恨みは無しで、そう言いに来ただけです」

「そうなのか?」

 イーシャさんはそう言うが、あまりにも喧嘩腰過ぎる。

「フィルムくんは直情馬鹿で、脳よりも脊髄の方が反応が早いので」

 なんでこの子は発言の度に毒を吐いているんだろう。

「それでは失礼します」

 改めて頭を下げると未だに暴れるフィルムを抱えたまま四人は去って行った。

「ゲーム始める前から疲れたよ」

「全員濃かったね」

「まあ。俺達もとりあえずは向かうか」

 気を取り直して俺達も会場に向かうことにした。
 にしても厄介だな、賞金だけに目を奪われていてくれれば勝率は悪くないと思っていたんだけどな。

 会場に着く。
 闘技場と同じ規模の巨大な建物の中に入り俺達が受付を済ませると、一枚紙を渡された。

「今回あなた達のチームは決まっています。盗人側となっています」

「これって最初から決まってたの?」

「いえ、先ほどフィルムチームの方がくじで警邏側を引かれましたので」

「わかりました」

 最悪だ。
 脱落者の出る盗人で俺達を狙いにくる連中がいる。
 一縷の望みはあいつらが弱いことだけど、あの魔法の威力からすると期待薄か。

「これダメなのか!?」

「はい。道具の使用に当たりますのでダメです」

「私も媒介取り上げられたししょうがないでしょ」

 控えのテントに入るとフィルム達が係の人達ともめていた。
 係の人がフィルムの篭手を持っているところを見ると、防具も駄目ということらしいな。

「賑やかな人達だね」

「あたしは疲れるから、あの人達好きじゃないな」

 のんきにフィルム達の状況を眺めるルリーラとフィル。
 俺が選んだメンバーは俺とルリーラ、フィルにオレイカ。
 身体能力優先のチーム、それは奇しくもフィルム達と同じ構成。

「王様、大丈夫かな?」

「悪いな、絶対に勝てるとは言えない」

 その言葉にオレイカの耳は力なくうなだれる。
 その頭に手を乗せる。

「安心しろ、たとえ負けても仲間を奪わせたりはしない」

「クォルテがカッコつけてる」

「犬耳がいいならあたし達もつける?」

「必要ないからつけるな。それとそろそろ始まるぞ」

 犬耳が無くても仲間なら同じ反応をするんだが、こいつらの中では俺に優しくされた人が居たら、その恰好を真似しようとする変な習慣が出来ている。
 そんなことをしなくても十分にみんな魅力があるのにな。

『さあ、今回も始まりましたゲーム大会! 今回はどこのチームが優勝するのでしょうか! それでは、最初のチームを紹介いたします!』

 実況の語りと共に怒号の様な雄たけびと共に会場を揺らす。
 できるなら、神とは戦いたくはないよな。
 オレイカに言ったことは本心だが、その方法はただ逃げることのみだ。
 それか水の神か火の神に助けを求めるしかない。
 その愚策はできれば取りたくない。

「クォルテ・ロックス、この大会でお前を超えて見せる」

「超えたきゃ勝手に超えろ、でもこの大会の勝ちは譲る気はない」

「上等だ、完膚なきまでに叩き潰してやる」

『続いて、フィルムチーム』

 呼ばれたフィルム達はそのままテントを出て行った。
 それから盗人側の俺達も呼ばれ整列する。

『ご存知の方も多いと思いますが、ルールの説明をしたいと思います! 参加の十組はすでに警邏と盗人に分かれております! そしてその二組で勝利条件は変わってきます! 警邏組の勝利条件は盗人全員の捕獲。逆に盗人は一人でも残れば勝ちとなります! そしてどちらの組でも共通の勝利条件はターゲットの奪取! 制限時間は二時間となっております』

 流石にルールの改変はしないか。それをしたら俺達に付け込まれる理由にもなるしな。

『そして、禁止事項は次の三つです! 他の参加者に過度の危害を加えないこと、これはゲームですので楽しく行きましょう! そして二点目は道具の使用、己の肉体だけで頑張ってくださいね! 最後は会場の外に出ないこと、過去に盗人がターゲットを持って隠れてしまったという事件があったので追加されています! この三点を破った人は失格ですので注意してくださいね!』

 最後の忠告に会場はクスクスと笑い声が聞こえる。
 俺の口も思わず笑ってしまう。もちろん実況の発言のせいではない。

「なるほど、それなら盗人側にも勝ち目があるじゃないか」

「クォルテ?」

「ご主人が悪い顔してるね」

「みんな始まったらすぐ集まれ。盗人側が警邏組を捕まえてやろうぜ」

 これで条件は対等だ、地の神はあえて残したであろうこの穴、ちゃんと使ってやらないといけないよな?
 俺は玉座に座る地の神を見る。
 そこには不敵に笑う地の神がこちらを見下ろしていた。



 地図を一枚渡され指定された位置に向かう。
 地図には自分達の所定位置と収監される場所が記載されていた。
 荒野の真ん中にある街にも関わらず、この会場には草木が生い茂っている。

「よくここまで育てたな」

 外の様子を見る限り、草木が育つ環境ではなさそうだったが。

「ガリクラ様が、大会のたびにステージを毎回変えているから」

「相変わらずなんでもありだな」

 荒野にこんな立派な公園の様な場所を簡単に作り出す。
 そんな滅茶苦茶さに飽きれてしまう。

「ご主人、折角の移動時間だし、作戦を教えてくれる?」

「そうだな、たぶんだがフィルム達は俺達のスタート地点を知っている」

 俺の言葉に全員が驚く。

「それって、あの神様が教えたってことだよね。反則じゃないの?」

「そうだな。でも、俺としてはそっちの方が助かる。乱戦になるよりは遥かにマシだ」

 それに地の神は俺達が直接やりあう様子を見て楽しみたいのだろう。

「じゃあ、あっちが来るのを待ち伏せってことでいいの?」

「そうだな、その理由はもう少し離れてから話すとして。それともう一つ、警邏組を倒す場合には会場の外にぶん投げてくれ、それで警邏の数を減らせる」

「それって反則にならないの?」

「こっちは反則にならない。ルールも会場に出た奴が退場だ」

 これに関しては、向こうも使おうとしていたことだろうし問題ない。

「さて、この辺りだな。それじゃあ時間まで説明しようか」

 知っているとはいえ、流石にここまで木に囲まれていては向こうも見つけるのは簡単ではないだろう。
 一際大きな木に隠れ、俺は開始の合図があるまで作戦の説明をした。

『さて、それでは時間となりました! 皆さん準備はいいですね! それではゲーム警邏と盗人開始です!』

 実況の合図とともに、他の場所から移動の気配を感じる。

「じゃあ、作戦通りに――」

「危ない!」

 動き始めようとした瞬間に、黒い塊が俺めがけて突っ込んでくる。
 ギリギリのところでルリーラが黒い塊を受け止める。

「あんたは、さっきの」

 フィルムを抱えた奴隷だな、確かヴェルスって呼ばれてたな。
 長身で黒髪、細い線の女性、でもその細さは華奢なわけではなく、見ただけでわかるほどに鍛え絞られた肉体美。

「ちょうどよかったよ」

 低い声でルリーラを押しつぶす様に力を込める。

「残念だけどこれは一対一じゃないよ。あたし達も近くに居るんだよ」

「それはこっちのセリフ。フィルムくんじゃないからそのくらいは知ってる」

 援護に向かったフィルに突っ込んできたのは、リースと呼ばれていた口の悪い少女。
 手数の多さでフィルを攻め立てる。
 奇襲の連続でフィルまで動きを封じられる。

「ルリーラ、フィル!」

 ようやく体が動いたが、当然俺にも向かってくる敵がいた。
 茶色髪の男、フィルム・ガーベルト。
 力任せの一撃を避ける。
 避けた先の大木が、フィルムの一撃で倒れてしまう。

「なかなかの威力じゃないか、フィルム・ガーベルト」

「あんたも腑抜けのくせによく避けたな、クォルテ・ロックス」

 流石にこの状況で魔法を使う余裕はくれないよな。
 倒すまではいけないか。倒せれば話は早いんだけどな。

「行くぞ!」

 肘まで覆うように炎を纏うフィルムは、見た目に反して一撃一撃をしっかり当てに来る。
 直接当てられなくても、掠るだけで魔法のダメージを受けてしまう。

 火の魔法の嫌なところはこれなんだよな。
 対人特化。というか、対生物特化の攻撃特化。
 避けても当たってもこちらの体力を削る。

「防戦一方か、少しは反撃してみろよ!」

 でも、防ぐ手立てもある。
 単純に水で受ける。

「俺が水だってのは知ってるよな、魔法を消せればお前に負けない」

 複雑でも何でもない、水を手に纏わせるだけでフィルムの拳を受け止める。

「フィルムくんに何してんのさ!」

 フィルと戦っていたリースがこっちに向かってくる。
 その足をフィルが掴み引き戻す。
 一瞬の安堵。だがその時間が完全に命取りだった、地面で何かが破裂した音。
 その炸裂音とほぼ同時に俺の腹にフィルムの足がめり込む。
 魔法を纏う一撃に、俺は後ろにあった木にぶつかり大きく揺らす。

「これでまずお前から逮捕だ」

 熱い、服には蹴り跡と思わしき焦げ跡が残る。
 フィルムは今の一撃で安心し、こちらに歩いて向かってくる。

「水よ、龍よ、水の化身よ、我の命に従い顕現せよ、水の龍アクアドラゴン」

 もの凄く痛いけど、距離が離れてよかった。なにせこうして魔法の発動に必要な時間を稼げた。
 あの場でやられていたら確実に捕まっていた。
 水の龍はフィルムに一直線に向かうが、突如現れた壁に遮られる。

「私がいるのを忘れていませんか?」

「フィルグラム、それはこっちのセリフだ」

 次の瞬間にフィルムは土に覆われる。
 そしてフィルムが覆われているうちにフィルグラムに駆け寄り、その手を掴む。

「盗人では警邏を捕まえても意味はありませんよ」

「知ってる。だからこうするんだよ」

 フィルグラムを場外まで投げ飛ばす。

「場外で失格、気づいていましたか? ってあれ、結構高いです!」

 諦めた様子のフィルグラムは場外に落ちていく。
 たぶん神様が何とかするだろう。

「卑怯な手を使いやがって!!」

 激怒したらしいフィルムは、覆う土を全部壊し出てくる。

「全員一時撤退!」

 その声にもう一つ声が重なる。

「ルリーラを確保」

 低い声で手錠の掛かったルリーラを持ち上げる。

「よし、どうするクォルテ・ロックス。これでも撤退するか?」

「これはゲームだからな、劣勢なら即離脱するに決まってるだろ。急げ逃げるぞ」

 その言葉にフィルムは、怒り心頭の様子でこちらに叫ぶ。

「仲間を置いて逃げるつもりか! 見損なったぞクォルテ・ロックス!」

 その怒声を聞き作戦の成功を確信する。
 やっぱりそういうタイプだよな、お前は。

「よし、距離を取ったら休憩して合図まで待つぞ」

 二人が頷いたのを確認し、俺達は森に身を隠す。

『始まって早々、驚きの展開です! 一人が逮捕、もう一人は場外で退場! 今のは良いのでしょうか? えっと、ありです。場外に出た人だけが失格、退場です! これは今大会波乱の幕開けと言えるのではないでしょうか!』

 実況のアナウンスを聞きながら、それなりに十分な距離を離れ一息つく。

「合図を待つっていったけど、本当にできるの? 嫌がらせとかあるんじゃないの?」

「フィルの心配は当然だが、俺達を負かしたいならその辺は気にしなくてもいいと思ってる」

「勝ちたいなら、それこそ色々と妨害があるんじゃないの?」

「それはターゲットを探しながら話すよ。それじゃあ移動しよう」

 俺達は改めて移動を開始する。
 森がメインのステージだと、探し物も難しい。

「オレイカは探索の魔法使えるか?」

「得意じゃないけど、それなりには」

「じゃあなるべく広い範囲でかけ続けてくれ、戦闘の時は俺とフィルがやるから、探索だけに集中してくれ」

「わかった。地よ、我が領域の異物を見つけよ、レーダー」

 一瞬だけ、何かが俺の体をすり抜ける不快感は、いつ浴びても慣れない。

「それで、いい加減教えてよ、ご主人」

「ああ、大した理由じゃない。ガリクラは俺達に敗北感を与えたいんだ。例えば負けたら死ぬなんでもありの殺し合いなら嫌がらせも十分に考えられるけど、これは死なないし規則のあるゲーム。そんな
ゲームで、自分が作ったルールすら破って俺達が負けても、俺が負けを認めないのはガリクラも知っている。だから嫌がらせもささやかな精々さっきのスタート地点を教えるくらいだ」

「ルール内で勝たないといけないのはわかったけど……、今回のはルール違反じゃないんだし」

「大丈夫だ、なにせこれは向こうも使う予定があったことだからな」

「つまり、未必の故意ってことだね、王様」

「そう、必ず成功する必要がない嫌がらせの積み重ね、それがわかっていれば一つずつその嫌がらせを回避すれば……」

「ご主人、どうしたの?」

 ターゲットは三つ、嫌がらせ、俺達に負けを認めさせる。

「オレイカ、普段はこの大会ってどんな地形が多いんだ?」

「普段は鉱山とか、平地とかだよ」

「もしかして今回みたいな森がステージって珍しかったりするか?」

「そう言われればそうかも、普段はあっても木箱とか土の山とかだね」

 やっぱりか、そうなるとターゲットは俺達の近くにあったわけだ。

『おおっと、ここでルリーラ選手がフィルム組に掴まり牢屋に入れられた』

「スタート地点に戻るぞ。オレイカ身体強化をみんなに、フィルはオレイカを背負ってくれとにかく急ぎたい」

 二人の準備が終わり、俺達は急いできた道を戻る。
 なるべく、ルリーラの合図が来る前にターゲットを手に入れたい。
 そして全力でスタート地点に生えていた一際大きな木にたどり着く。

「ここに何があるの?」

「オレイカ、この木にターゲットがあるはずだ。探してくれ」

「うん、わかった。地よ、この大樹に眠りし宝を探せ、レーダー」

 必ずここだ。
 最初は、フィルム達を向かわせるため目立つここにしたのかと思ったけどそれだけじゃない。
 スタート地点にターゲットがあったにも関わらず見つけられなかった。そう思わせたかっただけだ。

「あったよ、天辺付近に何かある」

「じゃあ、あたしが行ってくるね」

 俺が声かける間もないまま、フィルは魔法を使い空を駆けていく。

「あれどうやってるの? 空中を駆けあがってるけど」

「風の魔法で空気を固めてそれを蹴ってる。さっきの戦闘でも使ってたぞ」

「不規則な動きをしてるのは、そういう理由だったんだ」

「あったよ、これだよね」

 渡されたのは手のひらサイズの土でできた人形。

『おお、今大会最初にターゲットを手にしたのは、クォルテ組だ! 檻に入れらている、ルリーラ選手の無念を果たす様にターゲットを手に入れた!!』

 俺が人形を手にしたタイミングで実況がアナウンスをし、それに歓声が上がる。

 そしてその歓声を打ち破るのは鈍い音。
 空を見上げると黒い鉄の塊が打ち上げられている。
 一発上がるとすぐに二発目も打ちあがる。

『なんということでしょうか、前代未聞の出来事が起こっています。檻の天井部分が次々と宙を舞う! あの小さい身体のどこにこれほどの力があるのか!!』

「よし、合図だ。行くぞ」

 俺達はフィルム組を倒すために走り出す。



『始まって早々、驚きの展開です! 一人が逮捕、もう一人は場外で退場! 今のは良いのでしょうか? あっと、ありです、場外に出た人だけが失格、退場です! これは今大会波乱の幕開けと言えるのではないでしょうか!」

「確かに波乱だよな、まさかイーシャが即刻退場とはな」

「フィルムくんが退場してくれればよかったのに」

「さらっと酷いこと言わないでくれ」

 私の前を歩く二人が楽しそうに話しているのに、私を抑えているこの人は一言も喋らないな。

「ねえ、お姉さんの名前って何?」

「……」

「質問にも答えてくれないの?」

「……」

 話し相手なしか……、ただ後ろを歩くのってつまらないな。アルシェと最初に会った時でも、もうちょっと話してくれた気がするけどな。

「ヴェルスは無口だよ。フィルムくんが命令しないと話してもくれないの、酷いと思わない?」

「えっとこのお姉さんがヴェルス? じゃあお姉さんは?」

「説明してなかったかな、私はリース・ヤングルさっさと退場したのがイーシャ・フィルグラムちゃんね。それでリーダーっぽいのがフィルム・ガーベルトくん覚えた?」

「ヴェルスにリース、場外に投げられたのがイーシャであれがフィルム」

 一つ一つ指さしで確認すると、フィルムはあれ呼ばわりされたことに落ち込みだす。

「あれはいつもあんなだから気にしなくていいよ」

 さっき会った時もそうだけど、リースって性格が悪そうだ。
 笑顔も作ってる感じがする。

「今が暇だからついでに言っておきたいことあるんだけどさ」

「何? 私も暇だから答えてあげるよ」

 上から目線で腹が立つから、同じように言ってやったけど、結構効いたみたいで目の奥に少し怒りが見えた。
 今更だけど私、この人のこと嫌いだ。

「私達と一緒に来る気はない?」

「……えっ?」

 予想外の言葉に一瞬動きが止まってしまった。
 てっきりクォルテの話を聞きだされるかと思ってたから、驚いてしまった。

「そんなに意外? フィルムくんはハーレムを作りたいんだって。それで可愛い子を集めて理想郷を作るんだってさ」

「それでクォルテを目の敵にしてるのか、そっちよりも人数多いもんね」

「それだけじゃない」

 急にフィルムも話に加わった。
 さっきまでのふざけていた表情が真剣なそれに変わる。

「クォルテ・ロックスは俺の一歩先に居る。自分の国を持っている」

「あの時は大変だったな」

 おっちゃん強かったし、盗賊の人も結構強かった。
 大変だけど楽しかったよ。

「だから俺はこの大会で優勝し、自分の国を持つ」

 そう言えば願い事がどうのって言ってた気がする。
 そういうことか、つまらないな。

「そこで一生美女とともに生きるってこと?」

「そうなるな」

「呆れられてるよフィルムくん。まあ、私としても一生安心できるしね」

 そうなんだな、この人にとってはそれでおしまいか。

「私は今のままでいい。あんた達じゃなくて、クォルテの元に帰る」

 私の言葉に、目の前の二人はため息をついた。

「奴隷根性染みついてるの? あんたが掴まってるのに、イーシャちゃんを退場にしただけで逃げた男だよ」

「私が掴まるのも作戦だしね」

 これは言ってもいいんだっけか? いいよね、そろそろ人の気配が多くなってきてるし。

「それでも、敵陣に女の子を一人で送り込むとか、普通にありえないでしょ」

 やっぱりそう思うよね、私も最初はそう思ったし。

「それを平然とやる男のどこを信じてるのか、私は気になるな」

 怖い目になった。もしかしたら同じようなことがあったのかもしれない。

「私も結構いろんな所に行ったから、わかるようになってきてるんだ」

「何が? 男の良し悪しとか? フィルムくんがあの男に劣るとか言ったら今この場であんたを殺すけど」

「無理なこと言わない方がいいよ、はっきり言ってあんたに負けるとかありえない」

「このっ!」

「はいストップ」

 フィルムが私達の間に立つ。

「リース、挑発だから乗っちゃダメだ」

「ふんっ!」

 一瞬で殺意が消えた。
 本当にフィルムが好きなんだ。だとしたら悪いことしちゃったかな。
 それにもしかしたらこの人は気が付いた?

「ルリーラちゃんも、クォルテ・ロックスの命令かもしれないけど、あんな挑発したら普通は本当に殺されちゃうから気をつけないと」

 やっぱりこの人は何も気づいてないや。
 ただの女好きか。

「リース、ごめんなさい」

 私は素直に頭を下げる。
 あんなに怒るほど好きだなんて思ってなかった。

「リースがそこまでフィルムを好きだって気づか――」

「やっぱりあんたはここで殺して欲しいの? そうなんでしょそうならそうと早く言いなよすぐに殺してあげるから」

 あまりの気迫に、私は首を横に振るしかなかった。
 私達と違ってこの人達はあんまり好きって言うのを表に出さないみたいだ。

「だから何やってんだよ、喉を本気で潰そうとしない。本当に挑発に乗ったらダメだって」

 今のが聞こえてないのか……、クォルテとはまた違う反応で面白い。

「大会が終わったらあんたに決闘を申し込むから」

「いいよ、でもそれは大会中でもいいんじゃない?」

「そのまま本当に私勝てると思ってる?」

「まあ、このままでもいいけどね」

 すると急にヴェルスが私の手を強く掴む。

「ごめんね、ちゃんとした決着はまた今度で、先に性悪女の相手しないと」

「なら、楽しみに待っててあげるわちんちくりん。この大会中にあんたと戦うの」

 それっきリースが私に声をかけることはなく歩いていく。

「じゃあ、ルリーラちゃんを助けに、クォルテ・ロックスが来るんだ」

「むしろ来ないと思ったの?」

「それもあり得ると思ってるよ、イーシャを退場にする。そのための一対一の交換。遠距離の手を塞いで反対に遠距離で有利に立ち回る。そんな筋書きだろ」

 やっぱりフィルムは届いてないな。
 憶測で決めつけて動いてる。クォルテなら、そこからいくつか可能性を考えて動く。

「信じるのは自由だけど、裏切られた時のことも考えておいた方がいいよ」

「フィルムは考えてるの? この三人に裏切られた時のこと」

 フィルムの質問がムカつく。
 クォルテが私を裏切るようなことを言ったことがムカつく。
 それだけは絶対にありえない。

「考えたことはないな、三人共仲間だ」

「私の答えも同じだよ」

「そうか、ごめん。おっと、着いたねそれじゃあ悪いけど終了まで檻の中に居てね」

 黒い鉄製の檻。本当の檻とは違って入口に鍵はないし、格子の間には金網で外から手錠を外せない。
 それで、外開きで一度中に入ったら出られない仕組み。
 その檻が三つ。
 想定通り。それじゃあ、そろそろ打ち上げようかな。

「入ってわかったでしょ? あんたを助けるには檻に入るしかない。でも、その檻の中に入ったら掴まる。これでもまだ私と、ってなにしてるの」

 膝を曲げて溜めを作る、そして限界まで体を後ろにねじる。
 全身の力をくまなく拳に乗せるために。

「危ないから離れてたほうがいいよ」

 限界まで力を溜める、それでその私の全力を檻の天井にぶつける!!
 全力の跳躍と回転の力が拳に宿り天井にぶち当たる。
 拳が黒い鉄に触れめり込み、檻自体が浮く。
 殴った反動を元に床部分を蹴り下ろす。

「何、これ……」

 両極の力に耐え切れなかった檻は、格子の部分から千切れ天井部分だけが空に打ちあがる。
 良かった真直ぐ飛んで行ってくれた。

「でも、一回で行くとは思わなかったな」

 本気だったけどまさか一撃でちぎれるとは思わなかった。
 やっぱりフィルム達にも、この手を使わせようとしてたんだな。

「さて、残りの檻も打ち上げようかな」

「えっ、鉄がちぎれて飛んだ?」

 なぜか呆然としているリースをしり目に次の檻に向かう。

「檻から出たらだめなんだっけか」

 私は両隣の檻引き寄せて、同じように打ち上げた。

「これで全部かな」

 全ての檻に天井の打ち上げが終わり私は檻の端に座る。

「待ってよ、檻を壊したら反則でしょ!」

『なんということでしょうか、前代未聞の出来事が起こっています。檻の天井部分が次々と宙を舞う! あの小さい身体のどこにこれほどの力があるのか!!』

「反則じゃないよ、檻の扱いについてはルールないし。ね、フィルム」

「これが目的ってことか?」

 私は答えの代わりににやりと笑ってやった。

「そのために、敵陣に君一人とはやっぱりクォルテ・ロックスの元に女の子は置いておけないな」

「クォルテから伝言があるよ」

 フィルムがこちらを見つめる。

「神主催のゲームで規則違反ができる阿呆はいない。だってさ」

 クォルテが私を送り込めた理由を納得したらしく、フィルムは歯を食いしばる。

「それと、私からも一言。私達がクォルテと一緒に居るのは自由だから。私は安心より自由がいい」

「そうか、くそっ! そういうことか」

「なんだ、地面が!」

 突然ここの空間を挟むような壁が突如現れた。
 誰の仕業なんてそんなこと考えるまでもなくわかってる。



 檻が打ち上げられた場所に走る。
 場所はそんなに遠くはない。

「フィル、人の場所を確認。オレイカはフィルの指示通りの場所を覆うように魔法で囲んでくれ、囲む壁はできるだけ厚く」

「気配だから誰かまではわからないからね」

「王様って無茶言うよね」

「そこは素直にはい。とかでいいだろう」

 これで、後はあいつらをどれくらいで制圧できるかだな。
 警邏側は全部で五組。フィルム組を倒しても残りは十六人。全員を退場させるのは流石に厳しいな。
 すでに半分くらいは経っているだろうしな。

「ご主人、いたよ。檻の中に一人、外に三人集まってる」

 誰かが脱落した放送はないし、檻の中を含めて四人ならそれで正解だろう。

「檻が最初に飛んだものその辺りだ。オレイカ、派手にやってくれ」

「地よ、巨壁にて敵を分断せよ、ウォール!」

 呪文と共に、今いる場所から二枚の厚い壁が生まれ伸びていく。

「これで一直線でいけるよ」

「なら、最後の戦いと行こうか」

 周りを気にする必要もなく、ただただ一直線に走っていく。
 オレイカの身体強化も合わさり、すぐに目的地には着いた。

「クォルテ・ロックス、お前はどこまでわかってゲームに参加した?」

「負けたら仲間がいなくなる。その程度だ」

「じゃあ、作戦全部その場でくみ上げたのか?」

「そうだな、と言ってももっと狡猾な奴なら負けてたよ」

 それくらい、地の神もフィルムも素直過ぎた。
 自分の作戦を押し付けるタイプ、裏も何もない作戦だったから丁寧に策を潰してこれた。

「俺はお前に憧れて旅に出た。でも、お前のことは嫌いだ」

「俺はそういうことを言える奴は嫌いじゃないぞ」

 馬鹿正直で猪突猛進。
 俺みたいに考えすぎる人間からすれば、憧れるほどに眩しい。

「話をしている場合じゃないよな」

 俺が先に一歩踏み出す。
 何の仕掛けもない水の塊をフィルムに投げる。

「フィルは、ルリーラの錠を外してくれ」

「わかった」

「リース、ヴェルス外させるな!」

「嫌だ、私はちんちくりんを直接潰す」

 雰囲気が変わってるな、何かあったのか?
 まあ、こっちとしては好都合だ。

「フィルムくんを馬鹿にしたこのちんちくりんを直接潰さないと、収まりがつかない」

「よそ見をするなんて余裕だな」

 水を払ったフィルムの視線は、リースに向く。

「水よ、敵を討つ剣となれ、ウォーターソード」

 剣とは名ばかりの水の棒を作り動き出す。

「炎よ」

 フィルムが呪文を唱える瞬間に土を蹴り上げ、詠唱を防ぐ。

「何しやがる」

「詠唱の邪魔だよ」

 一歩踏み出し剣を振り下ろす。
 フィルムは炎を纏った拳でそれを必死にさばく。

「上だけじゃダメだろ」

 更に踏み込み足で横腹を蹴り飛ばし壁にぶつける。
 そしてその後を追うように剣で薙ぎ払う。

「舐めるな!」

 横からくる剣をフィルムは右手で下からはじく。

「舐めてねぇよ」

 弾かれた剣を離す。
 フィルムの弾いた右腕を掴みそのまま左に引っ張る。
 そのせいでフィルムの動きが制限される。
 死角になった右の側頭部を全力で蹴りぬく。

「かはっ」

 そしてそのままフィルムは気を失う。

「オレイカ、こいつを拘束してくれ」

「わかった」

 フィルムとの一戦を終え、ルリーラ達の戦いに目を向ける。
 すでに戦いは佳境を迎えていた。
 奴隷のヴェルスは、フィルの立体的な立ち回りに翻弄され攻撃が当てられず、リースはルリーラの攻撃に防戦一方になっている。

「王様、ここまで差がつくものなの?」

「力量にそこまで違いはない、フィルとヴェルスは同じ黒髪同士だしな。ルリーラとリースは腕力の差は当然あるけど、リースには魔法がある」

 ベルタだからプリズマだから最強ではない。

「でも、ここまでの差があるのは、簡単なことで圧倒的に相手の経験不足だな」

 今も翻弄されているヴェルスは、死角を減らし一撃を貰う覚悟でフィルを捕らえれば翻弄されない。
 リースも落ち着いて魔法を軸に戦えば、ここまで一方的になることはない。

「俺のせいってことか?」

「こんなに早く目を覚ますとは思わなかった。それとそこまで言うつもりはない。これでも俺達はお前達の先輩なんだ、魔獣も倒してるしベルタと何度も戦っているしな」

「だから負けてもしょうがないって慰めか……」

 またリースの攻撃はあっさりと止められ、ルリーラからの反撃を受け壁に衝突する。
 その光景を目にしても拘束され何もできないフィルムは、唇を噛み血が浮き出る。

「慰めじゃない。先輩からのアドバイスだ」

「聞く耳もたねぇよ」

「それで一つ聞きたいんだが、ターゲットの場所知ってるよな?」

「っ!? 知らねぇよ」

 本当に馬鹿正直でわかりやすい。
 一瞬目が一点に向かい、すぐに別を向いた。
 これでおおよその場所はわかった。

「二人とも、全員場外にぶん投げろ」

「了解」「わかった」

 二人に声をかけてからは一瞬だった。
 フィルはヴェルスの足を狙い、転がった瞬間に魔法を使い場外に投げ飛ばす。

「また今度喧嘩しようね、性悪」

「次は負けないから、ちんちくりん」

 何か一言を交わしルリーラもリースの足を掴み場外に投げ飛ばす。

「次やるまでに経験詰んでおけよ、俺達に勝てたならいつでもアリルドをくれてやる」

「そのセリフ後悔させてやる」

 フィルムも場外に飛びそのまま失格になる。

『またしても失格者が出ました! フィルム組の大将フィルム選手が場外に出たことにより、フィルム組全滅です!』

 観客は実況に釣られ落胆と歓喜の声を合わせる。

『残り時間もあとわずか! 盗人側はターゲットを一つ、脱落者は無し! 対する警邏側はターゲットと逮捕者はゼロ、そして脱落者は四人! 圧倒的に盗人有利だが、まだわからないぞ! ターゲットは残り二つある! このターゲットを手に入れたチームの優勝だ!』

「実況の人はああ言ってるけど、このままターゲットを持って隠れてるの?」

「まさか、ターゲットをもう一つ手に入れるさ」

「こっちの方に、ターゲットがあるのはなんでわかるの?」

「ガリクラが最後に仕掛けた嫌がらせだからな」

「さっきフィルムに聞いてたやつだね、王様」

「そう、俺達とフィルム達で過半数のターゲットを手に入れて互いに奪い合う。それで勝った方が総取りってシナリオだ。もっともアナウンスが無かったから、イーシャ辺りがあえて取らなかったんだろうな」

 フィルムも場所は知っていた、自力で見つけたならアナウンスがあって然るべきだが、それもなかった。
 つまり地の神から場所を聞いていたのだろう。

「オレイカ、探索を頼む」

 再び呪文を唱え俺達の体を気味の悪い感触が通り抜ける。

「もう少し先に変な物があるね」

 言われた方向に進む。
 そこには不自然なほどに集められた木葉があった。

「これかな?」

「うん、反応は人形みたいだし」

「じゃあ取るね」

 ルリーラが木葉の中から一体の人形を手にする。

『二つ目のターゲットが見つかった! これはまたクォルテ組だ、この組はどんな魔法を使ってるいるのか! 一組を全員脱落させ、過半数のターゲットを奪取した! なんという凄まじさ、実況をしていてここまで活躍した組を見たことが無い!』

「さてみんな、ここからが最大の難所だ」

 残りの十数分の間、襲ってくる連中からターゲットを守り抜かないといけない。
 残り四組十六人。
 迫りくる地鳴りを耳にし戦った。

『そこまで! なんということでしょうか、クォルテ組まさかの防衛成功! 敵味方全員から襲われながらもターゲットを守り抜きました!』

「流石にしんどいって……」

 オレイカにターゲットを持たせ、ルリーラとフィルに数人単位でまとめてもらい、俺が固める。
 単純だが俺らから奪うために、一致団結しているせいで、固めては溶かし固めては溶かしのいたちごっこ。そのせいで場外には出せず、息つく暇もなかった。

「でも、これで俺達の勝ちだな」

『結果発表! 勝利したのは当然盗人チーム! 最優秀賞はこれまた当然クォルテ組だ!』

 実況の言葉で会場はまたしても腹に響くほどの大歓声に包まれた。

 それから、表彰式を終え賞金を受け取り俺達は宿に向かう。

「クォルテ・ロックス」

 宿の前でフィルム達が待っていた。
 刀に手を乗せたサラを手で制し一歩前に出る。

「俺はいつかお前を超える」

「楽しみにしてる」

 そう一言を交わすとフィルムはすぐに背を向ける。

「クォルテさん、今の何だったんですか?」

「宣戦布告だろうな」

「兄さん、嬉しそうですね」

「そうか?」

 ああいうのは俺の周りに居なくて新鮮だからかもしれない。

「ご主人って男色?」
「違う!」

「お姉ちゃんがいるのにあんな男の事をなんてそうだあの男を消せば全部が上手くいくはず」

「ミール、珍しく意見があったな。あの男を今から」

「物騒な計画を立てるな」

「アルシェママ、男色って何?」

「ふえっ」

「私も知りたい」

「男色って言うのは――」

「フィルはルリーラとセルクに何を教え込もうとしてるんだ!」

 そんなよくわからない会話をしながら俺達は宿の中に入って行った。



 最近は一軒家を借りるようにしている。
 それは当然人数が多いからだ。
 今回みたいに、オレイカの紹介で安くなるという理由でもなければ一軒家、普通の宿屋でも最低三部屋を取っている。
 理由としては、現状を鑑みればわかるはずだ。

「今日はフィルか……、セルクもいるし……」

 毎夜毎夜誰かしらベッドに潜り込んでくる。

「フィルは、最近大人しくなったと思ってたのにな」

 専らルリーラかサラ、たまに寂しいという理由でアルシェとセルクがやってくる。ミールはルリーラを正妻としているだけあり来ていない。

「一応年長者だしね、遠慮してるんだよ」

「起きてるのか」

「起きそうな気配だったから、目を閉じただけ」

 いつものように間延びした声で、俺を抱きしめるために手を伸ばす。

「やめろっての」

 伸びる手を叩くとそのまま手を握る。
 柔らかく温かい手は、決して地面に穴を開けるような力を秘めているようには感じない。

「これくらいはいいでしょ?」

「わかったよ」

 フィルの笑顔は垂れた目がより垂れ、見ているとこちらの頬が緩むほどに幸せそうで、そんな笑顔を向けられたら頷くしかない。

「フィルは俺よりも策士だと思うぞ」

「たまにしか来ないのも、ご主人が断れないようにだしね」

「そうなのか」

 やっぱり俺よりも策士じゃないか。いや、俺が女に弱いってのもあるか……。

「あたしは、他の子ほどご主人を独り占めしたいってわけじゃないから」

「俺としては、そのくらいの距離感が嬉しいけどな」

 夜くらいは静かに寝ていたい。

「でも、やっぱり一緒に居たくないわけじゃないから」

「だから、そのくらいがちょうどいいって言ったんだよ」

 全員が向けてくれる好意は当然嬉しいし、好かれているから頑張れる。
 でも一人で居たいときもある。

「こうやって、ご主人を篭絡するのがあたしの作戦」

「完全に策に嵌ってる自分がいる」

 フィルといると疲れないから楽でいい。
 長年の知恵なのか決して近づきすぎない、暴走もしないわけじゃないけど理性的でいようとする姿勢がある。

「でも、たまにはこうしてもいいよね」

 完全な不意打ち。
 腕が俺の背中に伸び、そのまま俺の体はフィルの体に埋もれる。
 森の中にいる様な安心感のある爽やかな香りが、一呼吸で体に巡る。

「ぎゅうっ」

 フィルの匂いと体温、豊満で柔らかな丸みのある体に抱かれる。
 とくとくと規則正しい鼓動、このまま飲み込まれてもいいとさえ思える楽園。

「ん、んん……」

 その楽園から脱出するために、フィルの体を叩くとすぐに力を緩める。
 わずかに古ぼけた、埃っぽい空気を体内に取り込む。

「息できないよね」

「まったくだ、体格差を考えろ」

「さて、そろそろ戻ろうかな」

 わずかな衣擦れの音を立てベッドから出て行く。

「いや……」

 不意に背中に居たセルクが声を上がる。
 寝言の様でセルクはすぐに寝息を立てる。

「やっぱりもう少し一緒に居てもいい?」

「好きにしろ、俺は寝るぞ」

「うん、それでいいよ」

 フィルは改めてベッドに入り込む。
 流石に三人が横になるには狭い。

「それで、何か言いたいことがあるんじゃないのか?」

「あはは、ご主人の方がやっぱり上手でしょ」

 フィルは照れくさそうに、頬を掻いた。
 それからしばらく無言が続く。

「風の国って行くの?」

「それな、どうするか悩んでる」

「そうなんだ」

「もしかしてフィルって」

「そう、小さい頃は風の国に居た、まあ、すぐに別の国に売られたけどね」

 風の国、奴隷が最下層で奴隷なら遊びで殺してもいいとさえ思っている国。
 人権はもちろんないし、決められた場所以外に奴隷が立ち入ること自体を禁止している町もあるほどだ。

「じゃあ、やっぱりやめるか。あんまりためになる場所でもない」

 行っても嫌な思いをするだけの場所に、わざわざ行く必要もない。

「うん、今はちょっと待って欲しい。たぶんパニックになって迷惑かけちゃう」

「よし、それならやめよう。元からそこまで行く気もそんなになかった」

 世界中を見せると言ったから、神の居る国を見せようと思ったが、嫌がるなら行く意味はないだろう。

「それじゃあ、後数日観光したらアリルドに帰るか」

「うん」

「それじゃあ、寝ろ。今日はここで寝てもいいから」

 フィルの頭を軽く叩く。

「ありがとう、ご主人」

 フィルは体を丸くし俺の体に密着させる。

「おやすみ」

 いつものことながら自分の学習能力の無さが許せない時がある。
 きっとこれも作戦なのだろう。

 フィルは俺の体を完全にホールドした。
 セルクが俺の後ろで寝がえりをしにくい状態なのを確認し、俺の腕ごとフィルが捉え自分の元へ引き寄せる。
 楽園の中に埋もれ、辛うじて俺は顔を逸らし呼吸だけは確保できた。
 だが、吸い込む呼吸はほぼ全てフィルの成分で、呼吸の度に体内がフィルで満たされる。
 そして元から腕力も強く身長も俺よりも大きく、脱出ができない。

「ん、ぅん……」

 頭上では吐息と、寝言なのかわずかに湿り気のある音が聞こえる。
 こちらの身動きは封じているが、当のフィル本人は身動き自由で柔らかい肌を問答無用に擦り付ける。
 フィルの手は背中から腰、臀部へと優しく進む、それ以上下に下がれないのか下りた手はそのまま俺の腰に巻き付き自らに密着させる。
 そしてそれを弄ぶように力の強弱がつく。
 これ以上は流石に無理かもしれない。

 結局学習能力のない俺は、楽園の中一睡もできず朝を迎えた。
 太陽が完全に顔を出したため、俺は二人を起こさないようにベッドから出て、全員がリビング兼荷物置き場に使っている部屋に入る。

「クォルテさん、おはようございます。ってまた眠れなかったんですね」

 先に起きていたアルシェが朝食の準備をしていた。

「まあな、おかげで眠い」

 自然と大きな欠伸が出てしまう。
 俺はそのままテーブルに備え付けられている椅子に腰を下ろす。

「今日はルリーラちゃんですか? それともサレッドクインさんですか?」

「今日はフィルだ」

「珍しいですね」

 調理途中の手を止め、体をこちらに向ける。

「たまには一緒に居たいって言われた」

「その気持ちは私もわかります」

 そう言って調理を完全に中断して、俺の隣に座る。

「わかるのか、そう言えばアルシェも来なくなったな。アルシェも遠慮とかしてるのか?」

「それも当然ありますけど、一番の理由は今のこの気持ちを知りたいってことです」

 そう言って胸元に手を当てる。

「この、ドキドキして体が熱くなるどうしようもない好きという感情、これは変わりません」

 嬉しそうで誇らしげな表情でこちらにほほ笑む。

「でも、クォルテさんが仰っていたように奴隷として主人が好きなのか、それともアルシェという一人の女としてクォルテ・ロックスという一人の男性が好きなのか、この好きという幸せな感情をはっきりさせたいんです」

 胸元から手を少しだけ離しそっと視線を手に落とす。
 その表情は少女の顔ではなく、艶やかな女性の表情をしていた。

「そのために、私はあんまり必要以上にクォルテさんにくっつくことはしません」

 ふっ、とアルシェの表情は女性から少女に変わる。

「フィルさんも、きっと同じだと思いますよ。私みたいにこの感情を知りたい。でも触れたくなる時は当然ありますから。こんな風に」

 ふわりとアルシェの甘い匂いがし、その香りを追うように柔らかな感触が体を包む。
 アルシェの熱が俺に伝わる。

「ア、アルシェ?」

 どうしていいかわからずに、声をかけるとアルシェはすぐに離れ伝わった熱がすぐに冷める。

「このくらいなら、たまにしてもいいですよね」

 アルシェは悪戯っぽく笑う。
 この二人には勝てる気がしない。
 完全に手玉に取られている気がする。

「もう少しで朝食できますけど先に食べますか? それともみんな起こしましょうか?」

「食べるけど、他の連中はまだ起こさなくてもいいよ、セルクはともかくフィルがまだ俺の部屋だ」

「そうでしたね。じゃあ、私も一緒に食べていいでしょうか?」

「そういうのは気にしなくていいぞ。食いたいときに食え」

「すぐに準備しますね」

 そう言うと鼻歌交じりに朝食作りを再開した。



 朝食の後、俺は一人で街の中をうろついていた。

「よう、フィルム」

 偶然見つけたフィルムに声をかける。
 フィルムは心底嫌そうな顔を見せるが、構わず話を続ける。

「こんな朝早くから何してんだ? 歓楽街なら北区だぞ」

「そういう、悟ったみたいに話しかけるお前が俺は嫌いだ」

「俺は、そういう風に顔にはっきり出してからかい甲斐のあるお前が、嫌いじゃないぞ」

 俺を無視して歩くフィルムの隣を歩く。

「ガリクラ様の所に行くのはわかってるんだろ?」

 知ってはいたが、やはりこいつも行先は同じらしい。

「そうだ、言ってやりたいこともあるしな」

「怖いもの知らずだな」

「伊達に他の神にあってないしな」

「はぁ、行く気がそがれた。お前が居なくなった時に行くことにする」

 そう言うと本当に踵を返し、来た道を戻っていく。

「フィルム、一つ言っておくがお前達は本当に弱くないぞ」

 歩みを止めてこちらに顔を向ける。

「知ってる」

 それだけ言いまた歩き出す。

「余計なお世話だったかな」

 昨日のゲームで惨敗しているから、変に心が折れてなければなんて思ったけど、さっきの顔を見る限り平気そうだ。
 あれは次は負けないと燃えていた。

「さて、そろそろ行こうか」

 フィルムが見えなくなってから俺は城の方に進んでいく。
 城の入り口にたどり着いたのは良いが、入ってもいいのだろうか。
 前回は強制的に目の前まで飛ばされたしな。

「何用か」

 背後からの割れたような低い声に振り向く、そこに居たのは俺達の部屋の前に居たローブを纏っている巨漢。

「何用か」

 こちらの返答がないと同じ調子で機械の様に繰り返す。

 なるほど、やっぱりこれは神の使いか。
 魔法か神器かまではわからないが、人間でないことは確かだ。

「何用か」

「神との謁見を所望する」

「やあ、クォルテ・ロックス。昨日はおめでとう、予想以上にお前は優秀だ」

「ガリクラ」

 やはり人間ではないらしく、巨漢の声が地の神に変わる。

「神を呼び捨てか、まあいい入れ。これに触れれば我が前に移動できる」

「助かる。それにこの話は国民に聞かれたくないだろうしな」

 神の応答を聞く前に巨漢に触れる。
 前回と同じように巨漢が空間ごと飲み込み、吐き出されたときには神の前に居た。

「お前は神への礼儀を知らないのか?」

「敬意を払う神くらい選ぶさ」

 俺の言葉に地の神は不機嫌さを隠そうとはしない。
 力ずくで抑えようとしているのか、それともただ漏れ出ているのか魔力が不必要なほどに溢れ出ている。

「ゲームで勝ったから、自分の方が格上だと思っているわけではあるまい」

「もちろんだ。その気になれば瞬きの間に俺の首は、宙を舞うと思ってるよ」

 神と人はそれくらいの差があって当然だ。
 それは今まで目で見て体感したことだ。

「なら、なぜ神経を逆なでする発言ばかりする?」

「私的な理由で、オレイカに嫌がらせしたからな」

「当然だろう、シェルノキュリの大天才が出て行こうとしたら、嫌がらせしてでも止めるさ」

「国益については、世界を回るからオレイカに仕事をさせるさ。その金は各国にいるシェルノキュリの連中に渡すそれでいいだろ。発明品の代金も同じだ。それでも止める理由があるか?」

 俺にはわかってる。地の神がオレイカを旅に出したくない理由は、決して国益だけじゃない。
 もっと個人的な理由だ。

「それでも嫌なんだろ? ガリクラ」

 俺の言葉に地の神の体はピクリと反応した。
 やっぱり俺の想像通りってことだよな。

「国だ。しきたりだ。ってそれは全部建前だろ」

「どういう意味だ?」

 ようやく俺が気づいていることに気付いた。
 俺は地の神に向かって歩き出す。
 さっきフィルムにそうしたように近づいて地の神に告げる。

「ガリクラ、お前はヴォール様が好きなんだろ?」

「――っ!!」

 瞬間沸騰したように、ガリクラの純白の肌が真っ赤に染まる。
 こうなってしまうと、神としての威厳はどこえやら。
 ただの一人の女性になってしまう。

「オレイカが俺と一緒に居るのが、許せなかったんだろ」

 地の神の目が激しく動き、挙句うつむいてしまう。

「大方、自分が水の神と付き合えないのは属性が違うから。他の連中は同じ属性同士だから一緒になれる。そう言い聞かせてきたのに、自分が育ててきたシェルノキュリ一のオレイカがよりによってヴォール様から名前が出た俺と一緒に居た。それが許せなかった。そんなところか?」

「……るさい、うるさい! うるさい!」

 うつむいた顔を上げると、そこには羞恥ではなく憤怒に顔を染めた鬼神がいた。
 やばい、やりすぎた。
 オレイカの仕返しと思っていたのだが、どうも効果がありすぎたようだ。

「何が悪いのさ、私だって好きになるさ! 感情あるもん、恋心を抱いたりするさ! それの何がいけないの?」

 自分の影さえも置き去りにする速さで、地の神は俺の胸倉を掴むと俺の体が宙に浮く。
 神らしい言葉遣いも、堂々とした威厳もない。一人の女性になってしまった。

「神は恋をしちゃいけないの? ヴォールだって手を出してるじゃない! 人間にだって手を出してるのよ、それにウォルクスハルクにも私にも昔は手を出してたの!」

 あの神は何をやらかしちゃってるの?
 っていうか、火の神にも手を出しているのかあの神は……。
 そしてそろそろやばい……、感情に振り回されて我を忘れた状態にも関わらず、身体能力は神の力、そんなもので俺の体は揺さぶられている。

「ただの遊びだったかもしれないけど本気になっちゃダメなの!? そのくせ私の事は、年より扱いするし! なら手なんかだすんじゃねぇ!」

 やばい、そろそろ、死ぬ……。

「こちとら神になってから、経験なんてないんだよ! その初体験を奪っておいて責任も取りやがらないんだぞあの男は! 年寄りが若いのを好きになっちゃいけないのか? おい、聞いてるのか、クォルテ・ロックス!」

「……は、離して、くださ、い……」

 ありえないほどの力で、脳も内臓もぐちゃぐちゃに混ぜられてしまった感覚になる。
 これ、俺死ぬかもしれない。

「ふん!」

 俺の死にそうな姿を見たにも関わらず、壁に放り投げられ俺はめり込むほどに衝突する。
 これは死んだな、俺……。
 俺を殺しかけておいて、何事もなかったかのように玉座に座る。

「こほんっ。お前の言うとおりだ、我はヴォールが好きだ。このことを他に言いふらさないと約束できるなら、優勝したことだしオレイカと旅に出ることを許そう」

「あ、りがとう、ございます……」

 今更取り繕っても意味はないのだが、神としての威厳は残したいらしく神らしく振舞いだした。

「そしてヴォールにあったら良しなに言っておけ。ガリクラは瀕死のお前を癒し救った心優しき神だと!」

 みるみるうちに俺の傷は癒えていく。

「はい」

 返事はしたものの、その原因はお前だろ。と言いたいが今度は本当に命が無くなりそうなので口には出さない。

「よいな、ヴォールにあったら必ず告げるんだぞ、優しく懐の深い慈愛の女神だったと」

「ええ、わかりました」

 さっきよりも増えてる。

「約束を違えるなよ、我の恋心を他言しないこと、ヴォールに我が素晴らしい神だと伝えること」

「二つ目はいつ会えるかわからないのですが」

「今から行けばいいだろう」

 こいつは何を言っているんだ? そんな表情をする。

「あー、はい。わかりました」

「うむ、ではよろしく頼むぞ、オレイカの次の仕事はヴォールにしておく」

 こうして次の行先は地の神の独断と我がままにより久しぶりに水の国ヴォールになった。 



「えー、今度の行先は水の国ヴォールになりました」

 地の神の脅しの様なお願いで決まった、新しい行先をみんなに伝える。

「クォルテおかしくない?」
「何もおかしいことはありません。ルリーラは変なことを言わないように」

「私もそう思います。なんと言うか、嫌々ながら誰かに命令されて仕方なく向かう。そんな感じです」
「そんなことはないぞ、アルシェ俺はまたあの美しい水の国に行きたくなったのだ」

 二人ともどうも腑に落ちない、と言いたげな表情でこちらを見るが何かを悟ったのかそれ以上の追及はしてこない。

「それに、ガリクラからオレイカの仕事も貰ってるし行くしかないだろう」

 神からのお使いのせいで、行きたくはないが行かなければいけない。
 そんな理由づけを無理矢理にする。
 まさか本当の理由が、地の神が水の神に恋をしていて、その間を取り持つように言われているなんて口止めされてなくても言いたくない。

「それに、オレイカがいつも通り仕事をするなら、どこに行っても今後何も手を出さないと確約もしてくれたしな」

「あたし達が大会で優勝したのにね」

「フィル先輩の言う通りですよね、兄さん達が優勝したんですから約束は守ってもらいたいです」

「私はそれでもいいよ、仕事はするつもりだったし王様達に迷惑かけるのは心苦しいしね」

 オレイカの言葉でみんなも静かになってくれて、これでこの件は終わりだ。

「オレイカ、これがガリクラからもらった依頼書らしいけどこれ多くないか?」

 城を出る前に貰った依頼書は、本当に書として成り立つほどに分厚い。
 昔使っていた図鑑ほどの厚さで軽く武器になりそうなほどだ。

「それを全部やるわけじゃないから。依頼はガリクラ様の元に一度届いて難易度ごとに振り分けられるの」

 なるほど、そうやってシェルノキュリへ依頼して、依頼金を地の神が税として徴収するわけか。

「本当はこのくらいの厚さなんだよ」

 見せられたのは十枚ほどの紙の束だ。

「この厚さだと全難易度の全依頼じゃないかな。まあこっちに戻ってこないしね」

「見てもいいか?」

 オレイカが頷いたのを確認してから依頼書をめくると、他のみんなも覗き込んできた。
 一度行ったことのある国からまだ行ったことのない国まで、かなり国が依頼書を出していた。

「本当に多岐に亘るな」

 魔道具の修繕や兵器の修繕などの修理業務や、施設の改装といった拡張や仕様変更。

「オレイカはこれ一人でできるの?」

「一人だと無理なのも結構あるよ。結構グループを組んで作業に当たる人も多いかな」

 ルリーラの質問に答える。
 確かに施設の改装とか一人じゃ無理だろうな。

「それじゃあ数も多いしそろそろ出発するか」

「待ってよまだ荷物がまとまってない」

「そうか、明日出発の予定だったしな」

 地の神に言われたせいで、急いでしまったがまだ大丈夫か。

「兄さん、皆さんの準備ができてから出発でいいじゃないですか」

「そうだな、次の依頼を考えながらいどうするか」

 水の国にたどり着くまでに、何件か依頼をこなせそうだしな。

「では、私と兄さんで進路を考えているので皆さんは荷物をまとめてください」

 みんなが返事をしてそれぞれの作業に戻る。

「オレイカは、自分の大事なもの以外は他の連中に任せてこっちに参加してくれ」

 テーブルに置いた依頼書を見ながら日程を組んでいく。

「テルトアルレシアとオールスは行ったことがあるので外していいですよね」

「そうだな、後はアインズも行ったからルートとしては別方向がいいだろう」

 今までに行ったことのある国を省きながら、行先を考え続ける。

「王様達は、結構色々な国に行ってるんだね」

「目的地があるわけじゃないからな、だからできるだけ行ったことのない国を目指してるんだよ」

「それなら風の国は行かないの?」

「行かない。あそこで見る物は何もない」

 オレイカの言葉にきっぱりと断ち切る。
 その意味がわかったミールも、何も言わず分別していく。

「それなら、ここは? 結構珍しいし、ここの王様はアリルドさんに近いし国防の役に立つと思うけど」

 オレイカが差し出したのはカルラギーク。
 城塞の国として有名で、魔獣さえ通さず、神でなければ落とせないとさえ言われている難攻不落の国。

「いや、ここは無理だろ。警備も凄ければ入国も厳しいはずだ。そんなところに観光で行くのは厳しいだろ」

「でも気になるでしょ?」

「それはな」

 王のシシカ・ウォーカーは、アリルドと対等にやりあえる豪傑だという噂だ。
 そこでの知識は俺の国のアリルドでの国防という点では必要なことだ。

「でも、強国のカルラギークが敵を作りかねない情報をくれるのか?」

「ダメで元々。その時は私が情報を流すし」

「それはそれで、国として戦争の火種になりかねないけどな」

 国家機密の漏洩とか城塞の国としては絶対防ぎたいことだろう。

「いいんじゃないですか? 情報うんぬんはともかくとして警備や関所の対応は見ておいて損はないでしょう」

「そうだな、それじゃあ次の行先は城塞の国カルラギーク。王に断られたら見れる範囲の見学ってことで」

 それから何か所かの国を通り、水の国を目指す道筋を決めたところでみんなの準備も終わった。

 慣れない馬車、にみんなが乗り込む。

「本当は、今日明日でもうちょっと改造したかったんだけどね」

「これ以上どこを改造するつもりだ」

 すでに馬車なのに馬がない。
 荷台も速度が出ても問題ないように鉄製の衝立も増えており、もう最初の時とは別の物になっている。

「これじゃあ、車だな」

「馬車に馬がないからね。うん、王様の意見を取り入れてこれは車ってことで」

「えー……」

 馬なしの馬車はたった今車という名前に変わった。

「私が操舵してもいいでしょうか?」

 アルシェが言い出したことにどうしたものかと、オレイカを見ると親指を立てたので俺はそれを認めた。

「これが、舵。ここに魔力を流すと走り出して――」

 オレイカが車の操舵方法を教えている間に、俺達は荷物を荷台に詰め込む。

「クォルテ、次の国ってどんな国? 城塞の国って言ってたけど」

「そのまんまの国だよ。外敵を寄せ付けない鉄壁の防御、入国者の管理や規制が厳しくて入国に長くて一週間。最長は確か一月だったかな」

「一月って頭がおかしいんじゃない?」

「その気持ちはわかる」

 他の国では最長でもせいぜい数日だ。アリルドは逆に門番が名前を確認するくらいだから誰でも入れてしまう。

「それだけしっかりしていて、王がアリルドみたいに豪傑って話だ」

「おっちゃんと同じ強さ」

「ご主人、そんな国誰が落とせるの?」

「腕試しや、力量がわからない馬鹿どもだな」

 話を聞いていたフィルとサラが話に入ってきた。

「ウォルクスハルクでも一度、演習をしてもらったらしいが資料では惨敗。軍備の大幅な見直しがされたらしい」

「主要国が惨敗か」

 神の居る国はそれなりの戦力を有しているはずなのに、それでも惨敗か。

「その王様にお願いして私と戦ってくれないかな」

「馬鹿じゃないの? それに応じるのは戦好きのアリルド殿くらいだ」

「そろそろ出発するよ」

 オレイカの言葉に俺達は話を中断し、車に乗り込む。
 車が静かに走り出す。

「快適快適」

「馬車とは大違い」

 走り出すとルリーラとフィルはすぐに眠りについた。
 セルクは片づけの最中にすでに夢の中にいる。

「この速度なら三日か?」

「アルシェが本気を出したら一日じゃない?」

「壊れるだろ!」

「壊れたら直す! それに耐久検査もしたいし」

「頼むからやめてくれ。ゆっくりと旅をさせてくれ」

 工具を取り出したオレイカに必死に頭を下げる。

「しょうがないな」

 オレイカは工具をしまい俺達は地の国を後にした。
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 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

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内田ヨシキ
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[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

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