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第1章 蜜の罠
2.獲物
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翌日、虎長と藤田は、窓辺から外の通路を見ていた。
その背後では、開脚縛りにされて床に転がされた少年が、無数の針を刺し込まれた性器から血を流して苦痛に喘いでいる。
しかし、虎長たちの関心は、すでに別のところに移っていた。
虎長の閨の玩具として七年間の長きにわたって仕えた実千代が、今春、お役目御免となり、虎長は新たな獲物を求めていた。
その眼差しは、嫡男である澄長の小姓、織部竹丸に注がれていた。
竹丸は、実千代に似た繊細な顔立ちの少年で、早春、鷹狩の手伝いをしていたところ、澄長の目にとまり、小姓に召し抱えられた。
澄長は十八、竹丸は十四、この見目さわやかな主従ふたりは、城内の人々の耳目をひそかに集めてやまなかった。
「例の小姓がおる」
虎長が低く呟いた。
その目は通路を行き交う人々の中から、抜け目なく標的を見つけだしていた。
藤田も竹丸をみとめた。
「はい。あの竹丸なる者、若様のお気に入り。実千代を失い、寂しいお心を紛らわすために、召し抱えられたのでございましょう」
「ふむ。顔立ち、とくに目元が、あの玩具によく似ておる。澄長の気も知れよう」
「仰せの通り。若様は実千代の死を未だ引きずっておられる。あれは代用品でございまする」
「よい、よい。あの玩具が死んで、今度はあの玩具によく似た小僧が、澄長の心の隙間を埋めておるとは。これもまた、我が手の内で踊っておるということよ」
虎長は薄く笑った。
「されば、あやつもいずれは殿の新しいお楽しみに加わる時が来るでしょうか」
藤田の声には、抑えきれない昂ぶりが滲んでいた。
「焦るな、藤田。機が熟すのを待つのだ。あれと澄長がどれほど心を通わせるか、しばし見物するとしよう。ただの代わりなら、いつまでも代わりでしかなく、必ず飽きがこよう」
「しかし……もし飽きる様子が見られなければ、諦めなさるのですか?」
「いや、そうなればなおさら、遊び甲斐がある」
虎長の言葉は、冷たい刃のように鋭かった。
「澄長がなによりも大事にするものを、なによりも汚い形で汚す。これぞ、我らが次の『お楽しみ』よ」
「若様がお心を寄せる玩具を愛でるお楽しみは、また格別でございましょう」
藤田は目を細めて、獲物の後ろ姿を見送った。
その背後では、開脚縛りにされて床に転がされた少年が、無数の針を刺し込まれた性器から血を流して苦痛に喘いでいる。
しかし、虎長たちの関心は、すでに別のところに移っていた。
虎長の閨の玩具として七年間の長きにわたって仕えた実千代が、今春、お役目御免となり、虎長は新たな獲物を求めていた。
その眼差しは、嫡男である澄長の小姓、織部竹丸に注がれていた。
竹丸は、実千代に似た繊細な顔立ちの少年で、早春、鷹狩の手伝いをしていたところ、澄長の目にとまり、小姓に召し抱えられた。
澄長は十八、竹丸は十四、この見目さわやかな主従ふたりは、城内の人々の耳目をひそかに集めてやまなかった。
「例の小姓がおる」
虎長が低く呟いた。
その目は通路を行き交う人々の中から、抜け目なく標的を見つけだしていた。
藤田も竹丸をみとめた。
「はい。あの竹丸なる者、若様のお気に入り。実千代を失い、寂しいお心を紛らわすために、召し抱えられたのでございましょう」
「ふむ。顔立ち、とくに目元が、あの玩具によく似ておる。澄長の気も知れよう」
「仰せの通り。若様は実千代の死を未だ引きずっておられる。あれは代用品でございまする」
「よい、よい。あの玩具が死んで、今度はあの玩具によく似た小僧が、澄長の心の隙間を埋めておるとは。これもまた、我が手の内で踊っておるということよ」
虎長は薄く笑った。
「されば、あやつもいずれは殿の新しいお楽しみに加わる時が来るでしょうか」
藤田の声には、抑えきれない昂ぶりが滲んでいた。
「焦るな、藤田。機が熟すのを待つのだ。あれと澄長がどれほど心を通わせるか、しばし見物するとしよう。ただの代わりなら、いつまでも代わりでしかなく、必ず飽きがこよう」
「しかし……もし飽きる様子が見られなければ、諦めなさるのですか?」
「いや、そうなればなおさら、遊び甲斐がある」
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「澄長がなによりも大事にするものを、なによりも汚い形で汚す。これぞ、我らが次の『お楽しみ』よ」
「若様がお心を寄せる玩具を愛でるお楽しみは、また格別でございましょう」
藤田は目を細めて、獲物の後ろ姿を見送った。
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