性奴隷に堕ちた小姓は『針の檻』に囚われて 〜若君に寵愛される小姓に、藩主の魔の手が迫る〜 【小姓残酷物語 II】完結

丸井マロ

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第4章 散り椿

6.密約(2)

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「我が父、虎長は、藩主の器にあらず。あのような狂人が家中のいただきにあれば、いずれ山坂藩は滅びよう。私は、父を藩主の座から追う覚悟を決めた」

それは、謀叛の宣言であった。

ぴりぴりとした静寂が落ちた。

「……少々、席を外させていただきたく存じます」
内蔵助が緊張に強張る声で言った。

「あまりに重き御決意。少しばかり考える時間を頂きたい」

「よかろう」

澄長が頷くと、四方田父子は一礼し、座敷を後にした。

御厨に近い小部屋に入った途端、小十郎が口を開いた。

「父上、これは謀叛への加担でございますぞ。失敗すれば四方田家は断絶、我らは切腹ならまだましで、下手すれば磔……いや、殿のことだ、我らには想像もできないほどの惨刑に処されるに違いない」

「落ち着け、小十郎」
内蔵助は腕組みをし、厳しい顔で虚空を睨んだ。

「若様のおっしゃる通りだ。殿のご乱行、もはや看過できるものではない。針の話がまことならば、殿の心は病んでおられる。このまま放置すれば、いずれ幕府の耳に入り、お取り潰しは免れぬ」

「し、しかし……」

「どちらに転んでも修羅の道なら、未来のあるほうへ賭けようではないか。若様は、心根は正しく、ご気性は穏やか。担ぐ神輿として悪くない」

内蔵助の目は、すでに策士の色を帯びていた。

「遅かれ早かれ若様は藩主になられる。それが早まるだけのこと。若様に恩を売る絶好の機会ぞ。竹丸ごとき小姓一人のためではない。四方田家の安泰と、藩の未来のために、我らは若様の刀となるのだ」

父の言葉に、小十郎はゴクリと喉を鳴らし、覚悟を決めたように頷いた。

再び座敷に戻った四方田父子は、澄長に向かって深々と頭を下げた。

「若様、御意、承りました」
内蔵助の声は低く、力強かった。

「四方田一族、不肖この内蔵助、若様の御覚悟に命をお預けいたしまする。殿のご乱行を正し、藩の膿を出し切る所存」

「かたじけない」
澄長の顔に、安堵の色が広がった。

「ただし」
内蔵助は顔を上げ、鋭い眼光で釘を刺した。
「決して事を荒立ててはなりませぬ。刀を交えるような騒ぎとなり、それが外へ漏れれば、二の丸殿のご実家である湯浅家や、ひいては幕府より咎めを受け、山坂藩お取り潰しの口実を与えかねませぬ」

「うむ……」

「あくまで、表向きは、殿ご自身で『隠居』を決められたという形を取らねばなりませぬ。これを円滑に進めるためには、重臣たちの総意による進言が必要でございます」

そこで息をつき、内蔵助は先を続けた。

「近々、評定を開きまする。そこで私が主導し、他の重臣たちを説得、あるいは恫喝してでも、殿に引導を渡す流れを作りましょう。若様は、その時まで、決して表立って動いてはなりませぬ。すべて隠密に進めることが肝要と存じまする。とくに二の丸殿には決して気取られぬよう、くれぐれもお気をつけくださいませ」

「わかった。すべて内蔵助、そなたに任せる」

「御意。──佐々木殿」
内蔵助は佐々木に顔を向けた。
「貴殿は殿のお馬廻ゆえ、怪しまれずに中奥に出入りできる。なにか変わった動きがあれば報せてほしい。殿や藤田らが、最後のあがきに出るやもしれぬ。評定まで、なんとしても持ちこたえよ」

「承知つかまつりました」

密約は成った。
虎長を藩主の座から引きずり下ろすための、静かなる戦の火蓋が切って落とされた。

    
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