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第5章 暗転
5.前夜
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一方、本丸常御殿の中奥では、虎長が満足げに盃を傾けていた。
尿で汚れた畳は、すでに新しいものに交換され、青いイ草の匂いがする。
傍らには藤田重政が控え、主の機嫌を窺っている。
「澄長の奴、ようやく膝を屈したが……あの目が気に入らぬ。あれは、腹の底でまだ爪を研いでいる肉食獣の目よ」
虎長は鋭い嗅覚で、息子の心が完全に折れたわけではなく、反撃の機会をうかがっていることを嗅ぎ取っていた。
「藤田、明日の評定に備えておけ。もし四方田や澄長がおかしな動きをすれば、瞬時にすべてを叩き潰す手筈を整えよ」
「御意。今や竹丸は我らの思いのまま。裏切者の四方田も若様もろとも、一網打尽にいたしまする」
「うむ。絶望の淵から這い上がろうとした指を、一本ずつ踏み砕いてやるのもまた一興」
虎長は、余裕の笑みを浮かべて、盃を傾けた。
尿で汚れた畳は、すでに新しいものに交換され、青いイ草の匂いがする。
傍らには藤田重政が控え、主の機嫌を窺っている。
「澄長の奴、ようやく膝を屈したが……あの目が気に入らぬ。あれは、腹の底でまだ爪を研いでいる肉食獣の目よ」
虎長は鋭い嗅覚で、息子の心が完全に折れたわけではなく、反撃の機会をうかがっていることを嗅ぎ取っていた。
「藤田、明日の評定に備えておけ。もし四方田や澄長がおかしな動きをすれば、瞬時にすべてを叩き潰す手筈を整えよ」
「御意。今や竹丸は我らの思いのまま。裏切者の四方田も若様もろとも、一網打尽にいたしまする」
「うむ。絶望の淵から這い上がろうとした指を、一本ずつ踏み砕いてやるのもまた一興」
虎長は、余裕の笑みを浮かべて、盃を傾けた。
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