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第6章 血戦
6.老獅子の落日
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四方田内蔵助が虎長と佐々木らの間に立ちはだかり、正面から虎長を見据えた。
その目はもう虎長を恐れてはいなかった。
「殿、これ以上の醜態を晒せば、山坂藩を改易に追い込むことになります。なにとぞ、お控えなされませ」
虎長は逆上した。
「戯言を申すな、貴様らこそ謀叛人、逆賊の徒である! 藤田、まだ突っ立っておるのか! 斬れ! この老いた狐めを斬り捨てい!」
藤田重政は、残る数名の味方と共に太刀を構えたが、多勢に無勢である。
佐々木甚介は、太刀を中段に構え直すと、孤立した藤田たちに向き直った。
「藤田殿、お役目ご苦労。貴様の出番は終わった」
藤田派の者が斬りかかった瞬間、佐々木甚介が電光石火の速さで踏み込んだ。
「邪魔立てはさせぬ!」
佐々木の太刀は冴え渡り、一瞬のうちに藤田の配下を二人倒した。
続いて宮田も、残り二人を次々に斬り倒す。
藤田は最後の足掻きで佐々木に斬りかかるが、佐々木の剣の前に一合ともたず、右腕を斬り落とされ、血を噴きながら転倒した。
「ぐっ……おのれぇ……」
藤田が倒れ、敗北を免れないと悟った山本は、縄を打たれる恥辱を避けようと自らの首に刃を当て、その場で自刃した。
最も信頼していた腹心二人の喪失が、虎長の破滅の決定打となった。
もはや武力で抵抗するすべはない。
虎長は、四方を敵に囲まれて孤立した。
四方田内蔵助は、老齢ながら毅然とした態度で虎長の前に進み出た。
「殿。もはや、この場に殿を主君と仰ぐ者は、一人もおりませぬ」
内蔵助の声は、冷徹な響きを帯びていた。
「竹丸殿の惨状が、すべてを物語っております。このまま藩政を預け続ければ、家臣は離反し、幕府の糾弾は避けられぬ。藩の存続のため、殿にはご隠居いただく他、道はございません」
虎長は、したたるような声で呻いた。
「我を……追い払うというのか……この虎長を……!」
その目は憎悪に満ちていたが、周囲を見渡しても、味方は一人もいない。
家臣たちの目は、かつての恐れではなく、竹丸の姿を見たことによる嫌悪と軽蔑に満ちている。
すべてを失ったことを悟った虎長は、大きく肩を落とした。
老いた獅子の咆哮は、ただの弱々しい呻きへと変わった。
「……勝手にせい」
その一言が、山坂藩の歴史を変えた。
虎長は、屈辱と敗北の念を噛み締めながら、隠居を受け入れたのである。
その目はもう虎長を恐れてはいなかった。
「殿、これ以上の醜態を晒せば、山坂藩を改易に追い込むことになります。なにとぞ、お控えなされませ」
虎長は逆上した。
「戯言を申すな、貴様らこそ謀叛人、逆賊の徒である! 藤田、まだ突っ立っておるのか! 斬れ! この老いた狐めを斬り捨てい!」
藤田重政は、残る数名の味方と共に太刀を構えたが、多勢に無勢である。
佐々木甚介は、太刀を中段に構え直すと、孤立した藤田たちに向き直った。
「藤田殿、お役目ご苦労。貴様の出番は終わった」
藤田派の者が斬りかかった瞬間、佐々木甚介が電光石火の速さで踏み込んだ。
「邪魔立てはさせぬ!」
佐々木の太刀は冴え渡り、一瞬のうちに藤田の配下を二人倒した。
続いて宮田も、残り二人を次々に斬り倒す。
藤田は最後の足掻きで佐々木に斬りかかるが、佐々木の剣の前に一合ともたず、右腕を斬り落とされ、血を噴きながら転倒した。
「ぐっ……おのれぇ……」
藤田が倒れ、敗北を免れないと悟った山本は、縄を打たれる恥辱を避けようと自らの首に刃を当て、その場で自刃した。
最も信頼していた腹心二人の喪失が、虎長の破滅の決定打となった。
もはや武力で抵抗するすべはない。
虎長は、四方を敵に囲まれて孤立した。
四方田内蔵助は、老齢ながら毅然とした態度で虎長の前に進み出た。
「殿。もはや、この場に殿を主君と仰ぐ者は、一人もおりませぬ」
内蔵助の声は、冷徹な響きを帯びていた。
「竹丸殿の惨状が、すべてを物語っております。このまま藩政を預け続ければ、家臣は離反し、幕府の糾弾は避けられぬ。藩の存続のため、殿にはご隠居いただく他、道はございません」
虎長は、したたるような声で呻いた。
「我を……追い払うというのか……この虎長を……!」
その目は憎悪に満ちていたが、周囲を見渡しても、味方は一人もいない。
家臣たちの目は、かつての恐れではなく、竹丸の姿を見たことによる嫌悪と軽蔑に満ちている。
すべてを失ったことを悟った虎長は、大きく肩を落とした。
老いた獅子の咆哮は、ただの弱々しい呻きへと変わった。
「……勝手にせい」
その一言が、山坂藩の歴史を変えた。
虎長は、屈辱と敗北の念を噛み締めながら、隠居を受け入れたのである。
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