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俺の彼氏には特別に大切なヒトがいる〜A面〜
A面4
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「タスク。ちょっと」
土曜日の部活の基礎練中に、コータ先輩が現れた。
いつもケラケラ笑ってふざけてるコータ先輩が、珍しく表情を出さずに、少し低い声で俺を呼んだから、同期の連中はみんな小さく固まった。
「おい、タスク。何してコータ先輩怒らせたんだよ」
すぐ隣にいた奴が声を潜めて俺に尋ねた。
「さぁ?」
身に覚えはありすぎたけれど、俺は肩を竦めて同期にそう答えてから、コータ先輩のもとに行った。
コータ先輩の後に付いて歩くと、人目に付かないグラウンドの隅にある、体育倉庫の横に辿り着いた。
誰も周囲に居ないことを確認してからコータ先輩は俺を振り返る。
「タスク、どういうつもりだよ? まこちゃん、めっちゃフラフラじゃねぇか。俺以外見てねぇと思うけど、エゲツない痕いっぱいつけやがって」
ふーん。やっぱ、見たんだ。
制服はもちろん、テニスウェアの上からは見えないように付けたんだけどな。
ドコのナニを見たわけ?
「着替えのときに見えただけだよ。やべぇと思ったから他には誰にも絶対見せないように着替えさせた」
俺の疑心暗鬼に苛まれた思考なんてお見通しというように、コータ先輩は言う。
キラキラ眩しいハチミツレモンみたいな髪が眩しくて、普段はおちゃらけてばっかりのくせに、射抜くようなキツイ瞳を向けてくる。
「真琴さん、コータ先輩のこと好きだって言ってましたよ」
はちみつ紅茶みたいに綺麗なコータ先輩の瞳から目を逸らさずに俺が言うと、コータ先輩の瞳は大きく見開かれた。
それから、あー、そういうこと。と呟いた。
「嘘吐け」
そして、理解したあとは間髪入れずに返してきた。
真琴さんのことなら何もかも、分かってるみたいな態度、めちゃくちゃ気に入らない。
不服そうな態度を全面に出す俺に、コータ先輩は逆に強い視線を少し緩めて、仕方ないな、というように苦く笑った。
「……まこちゃん、どっからどう見てもお前のことが好きだろーが。俺のことも好きは好きだろうけど、何て言うの? 友情……? 家族……? 恋愛感情何てもんはなくて、そういった類のもんだよ。お前が誰よりわかってんだろうが」
「そうですよ。コータ先輩に言われなくてもそんなことわかってる」
俺が言い返すと、コータ先輩は再びじっと俺の目を見た。
真琴さんは俺のことが好きだよ。
そんなんとっくに分かってんだよ。
とろんと、俺を見つめる溶けた瞳を見て、俺の電話に寝起きでも嬉しそうなあの声を聞けば、俺に恋していることは疑いようもない。
だけど、じゃあコータ先輩と真琴さんの間にあるのは、なに?
何しても、何やっても嫌われないってお互いわかりきってて空気みたいにそこに在るのが当たり前で、でも無いと生きていけないんでしょ?
「二人の間にあるのは、友情? 家族愛? どうせひと言なんかじゃ説明できないものなんですよね。俺が到底勝てない長い時間が積み重なって出来た、名前も付けることの出来ないその愛情がたまらなく気に入らないです」
ひと思いにぶちまけると、コータ先輩は静かに言った。
「お前が俺のこと気に入らなくても俺とまこちゃんの関係はどうやったって変えることはできねぇよ。俺もまこちゃんもお前に気を使って友達やめる、なんてこともしねぇし。でもお前はまこちゃんの唯一の気持ちを手してるんじゃねぇの? 俺なんかに妬いてないで折角手に入れられたそれ、もっと大事にしろよ」
コータ先輩は髪も目もキラキラしていて眩しいくらいだった。
きっとコータ先輩のそんなところも真琴さんは愛しているんだろう。
土曜日の部活の基礎練中に、コータ先輩が現れた。
いつもケラケラ笑ってふざけてるコータ先輩が、珍しく表情を出さずに、少し低い声で俺を呼んだから、同期の連中はみんな小さく固まった。
「おい、タスク。何してコータ先輩怒らせたんだよ」
すぐ隣にいた奴が声を潜めて俺に尋ねた。
「さぁ?」
身に覚えはありすぎたけれど、俺は肩を竦めて同期にそう答えてから、コータ先輩のもとに行った。
コータ先輩の後に付いて歩くと、人目に付かないグラウンドの隅にある、体育倉庫の横に辿り着いた。
誰も周囲に居ないことを確認してからコータ先輩は俺を振り返る。
「タスク、どういうつもりだよ? まこちゃん、めっちゃフラフラじゃねぇか。俺以外見てねぇと思うけど、エゲツない痕いっぱいつけやがって」
ふーん。やっぱ、見たんだ。
制服はもちろん、テニスウェアの上からは見えないように付けたんだけどな。
ドコのナニを見たわけ?
「着替えのときに見えただけだよ。やべぇと思ったから他には誰にも絶対見せないように着替えさせた」
俺の疑心暗鬼に苛まれた思考なんてお見通しというように、コータ先輩は言う。
キラキラ眩しいハチミツレモンみたいな髪が眩しくて、普段はおちゃらけてばっかりのくせに、射抜くようなキツイ瞳を向けてくる。
「真琴さん、コータ先輩のこと好きだって言ってましたよ」
はちみつ紅茶みたいに綺麗なコータ先輩の瞳から目を逸らさずに俺が言うと、コータ先輩の瞳は大きく見開かれた。
それから、あー、そういうこと。と呟いた。
「嘘吐け」
そして、理解したあとは間髪入れずに返してきた。
真琴さんのことなら何もかも、分かってるみたいな態度、めちゃくちゃ気に入らない。
不服そうな態度を全面に出す俺に、コータ先輩は逆に強い視線を少し緩めて、仕方ないな、というように苦く笑った。
「……まこちゃん、どっからどう見てもお前のことが好きだろーが。俺のことも好きは好きだろうけど、何て言うの? 友情……? 家族……? 恋愛感情何てもんはなくて、そういった類のもんだよ。お前が誰よりわかってんだろうが」
「そうですよ。コータ先輩に言われなくてもそんなことわかってる」
俺が言い返すと、コータ先輩は再びじっと俺の目を見た。
真琴さんは俺のことが好きだよ。
そんなんとっくに分かってんだよ。
とろんと、俺を見つめる溶けた瞳を見て、俺の電話に寝起きでも嬉しそうなあの声を聞けば、俺に恋していることは疑いようもない。
だけど、じゃあコータ先輩と真琴さんの間にあるのは、なに?
何しても、何やっても嫌われないってお互いわかりきってて空気みたいにそこに在るのが当たり前で、でも無いと生きていけないんでしょ?
「二人の間にあるのは、友情? 家族愛? どうせひと言なんかじゃ説明できないものなんですよね。俺が到底勝てない長い時間が積み重なって出来た、名前も付けることの出来ないその愛情がたまらなく気に入らないです」
ひと思いにぶちまけると、コータ先輩は静かに言った。
「お前が俺のこと気に入らなくても俺とまこちゃんの関係はどうやったって変えることはできねぇよ。俺もまこちゃんもお前に気を使って友達やめる、なんてこともしねぇし。でもお前はまこちゃんの唯一の気持ちを手してるんじゃねぇの? 俺なんかに妬いてないで折角手に入れられたそれ、もっと大事にしろよ」
コータ先輩は髪も目もキラキラしていて眩しいくらいだった。
きっとコータ先輩のそんなところも真琴さんは愛しているんだろう。
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