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五章
五十四話
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「虎之助君は無事成仏したのかね?」
拳銃を構えながら斎藤先生が訊く。
美波の意識が戻ったのは、その言葉が聞こえる少し前だった。
数秒だろうか、それとも数分だろうか。
はっきりとした時間は分からなかったが、何かふわふわとした感覚を感じたと思ったら、すぐに現実に戻された。
「さあ、どうでしょう、もうすぐ成仏するんじゃないですか……あなたの思惑通りに、ね」
美波が大雅に銃口を向ける斎藤先生を睨む。
「そうか。虎之助君には本当に悪いことをしてしまったからね。生まれ変わったら、是非とも八千代君と一緒に幸せになってほしいものだよ。まあ、無理だろうがね」
そう言って、くっくっくっ、と不気味に笑う。
「あなたは、本当にどこまでも腐ってますね」
「確かに、そうかもしれないね。自分でもそう思うよ。でも、私は本気で願っているんだよ。虎之助君も大雅君も美波君も、皆、皆、皆、皆……幸せになってほしい。……まあ、それも、私の見えないところで、だがね」
暗がりの公園に再度笑い声が響く。
「少し喋りすぎたかな。そろそろ片付けないと夜が明けちゃうから……終わりにしようか」
そう言って、顔を歪めたまま大雅に向けられた銃の引き金に力を込める。
美波が硬直した体を必死に動かす。
恐怖で頭と心が冷たくなっていたということもあるが、それ以上に急造で得た体を動かすのは難儀であった。
ぎしぎしと軋む筋肉と関節。
ギュイーンという音が聞こえそうなほど速く流れる血液。
それは数十秒にも満たないほんの数秒の出来事だったが、美波にとってはそれがやけに遅く感じた。
――パンッ!
煙をあげて拳銃から発射される銃弾がなぜか異様に遅い。
それでも突っ伏す大雅が起きる様子は全くない。
大雅に手を伸ばすが、到底間に合うような距離ではない。
――そうだな。全て終わりにしよう。
その時、突っ伏しぴくりとも体を動かさなかった大雅がふと顔を上げる。
そして、耳ではなく頭に直接叩き込まれるほどの衝撃が美波を襲う。
遅く流れていた時間が完全に止まった。
発射された銃弾、その周りに飛び散る煙、大雅の元に行こうと伸ばした美波の手。
その全てが完全に停止していた。
拳銃を構えながら斎藤先生が訊く。
美波の意識が戻ったのは、その言葉が聞こえる少し前だった。
数秒だろうか、それとも数分だろうか。
はっきりとした時間は分からなかったが、何かふわふわとした感覚を感じたと思ったら、すぐに現実に戻された。
「さあ、どうでしょう、もうすぐ成仏するんじゃないですか……あなたの思惑通りに、ね」
美波が大雅に銃口を向ける斎藤先生を睨む。
「そうか。虎之助君には本当に悪いことをしてしまったからね。生まれ変わったら、是非とも八千代君と一緒に幸せになってほしいものだよ。まあ、無理だろうがね」
そう言って、くっくっくっ、と不気味に笑う。
「あなたは、本当にどこまでも腐ってますね」
「確かに、そうかもしれないね。自分でもそう思うよ。でも、私は本気で願っているんだよ。虎之助君も大雅君も美波君も、皆、皆、皆、皆……幸せになってほしい。……まあ、それも、私の見えないところで、だがね」
暗がりの公園に再度笑い声が響く。
「少し喋りすぎたかな。そろそろ片付けないと夜が明けちゃうから……終わりにしようか」
そう言って、顔を歪めたまま大雅に向けられた銃の引き金に力を込める。
美波が硬直した体を必死に動かす。
恐怖で頭と心が冷たくなっていたということもあるが、それ以上に急造で得た体を動かすのは難儀であった。
ぎしぎしと軋む筋肉と関節。
ギュイーンという音が聞こえそうなほど速く流れる血液。
それは数十秒にも満たないほんの数秒の出来事だったが、美波にとってはそれがやけに遅く感じた。
――パンッ!
煙をあげて拳銃から発射される銃弾がなぜか異様に遅い。
それでも突っ伏す大雅が起きる様子は全くない。
大雅に手を伸ばすが、到底間に合うような距離ではない。
――そうだな。全て終わりにしよう。
その時、突っ伏しぴくりとも体を動かさなかった大雅がふと顔を上げる。
そして、耳ではなく頭に直接叩き込まれるほどの衝撃が美波を襲う。
遅く流れていた時間が完全に止まった。
発射された銃弾、その周りに飛び散る煙、大雅の元に行こうと伸ばした美波の手。
その全てが完全に停止していた。
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