57 / 70
五章
五十七話
しおりを挟む
暗闇に灯る光が少しずつ広がっていき、周囲が明るくなっていく。それとともに頭がはっきりして空気が肌に触れる感覚も戻ってきた。
はっきりとしてくる意識の中で美波はこれからやるべきことを整理する。
――まず二発目に撃たれる銃弾を防ぐこと。それが最優先事項。出来ることなら、その後、先生から拳銃を取り上げ、警察を呼べればそれに越したことはないが、自分の力でそこまですることは難しいかもしれない……。
美波はどことなく予感していた。
――大雅の命を救った瞬間、その瞬間に自分の役割は終えた私は……おそらく成仏してしまうだろう。それはもう、何の躊躇も余韻もなくあっさりと消えてしまうのだろう。
美波がこの世に蘇った目的は大雅の中に存在する第三者を排除すること。
最初の目的はそれだった。
生前より大雅の中に別の大雅が存在することを知り、自分の診察と称し、二重人格という病気について、先生に相談をしていた。何が原因でそうなってしまったのか、全く分からなかったが、大雅が苦しむこと未来が来ないように水面下で動いていた。その最中に美波は命を失ってしまった。
目的を達成する前にこの世を去らなければいけなくなってしまった無念。
大雅が無事に自分の人生を送ることができるのかという不安。
その二つが美波の心残り、後悔であった。
その思いが美波の魂を現世に引き留めた。
美波の母の思いに触れ、春豊と再会し、大雅との思い出の地を回りながら、大雅の中にいる虎之助という人物に辿り着いた。
大雅自身の時間を奪い、その後の生活そのものを脅かす存在に美波は嫌悪した。
どうやったら大雅から切り離すことが出来るのか、美波には分からなかった。
考えた挙句、本人と直接話をすることにした。
話をし、どんな人物なのかを見極めた上で、春豊と相談し切り離す方法を検討することにした。
虎之助の事情を知り、何のために大雅の中にいるのかを知った。
美波は悲痛な虎之助の思いに涙を流した。
時代背景や立場が全く違うため、単純に比較できないが、美波は虎之助の思いを自分の環境と重ねていた。
絶対に叶わないと知りながら芽生えてしまった気持ちを無視することが出来ない状況。
それは留まっていてはいけないと知りながら出来るだけ真実から遠回りをしている自分の状況と似ていたのだ。
虎之助の願いを聞き、協力することを選択した。
しかし、虎之助は先生に利用されているだけで八千代と会うことが出来るというのは全くの出鱈目だった。
絶望した虎之助が自らの後悔を抱えたまま成仏しようとした時、目の前に八千代が現れた。
期せずして虎之助は後悔を解消することが出来、今までの償いとしてほんの少し先の未来を教えてくれた。
今までの経緯を振り返り、美波は考える。
――当初の目的を果たすことは出来た。
〝大雅の命を救い、大雅の未来が何よりも幸せなものになるようにすること〟
二重人格を直そうとしたのも、今こうして命を守ろうとしているのも。
その全ての後悔はまさにそこにある。
突き詰めれば美波の望みはそれに行き着く。
それが取り除かれてしまったら、美波がここにいる意味はもうない。
はっきりとしてくる意識の中で美波はこれからやるべきことを整理する。
――まず二発目に撃たれる銃弾を防ぐこと。それが最優先事項。出来ることなら、その後、先生から拳銃を取り上げ、警察を呼べればそれに越したことはないが、自分の力でそこまですることは難しいかもしれない……。
美波はどことなく予感していた。
――大雅の命を救った瞬間、その瞬間に自分の役割は終えた私は……おそらく成仏してしまうだろう。それはもう、何の躊躇も余韻もなくあっさりと消えてしまうのだろう。
美波がこの世に蘇った目的は大雅の中に存在する第三者を排除すること。
最初の目的はそれだった。
生前より大雅の中に別の大雅が存在することを知り、自分の診察と称し、二重人格という病気について、先生に相談をしていた。何が原因でそうなってしまったのか、全く分からなかったが、大雅が苦しむこと未来が来ないように水面下で動いていた。その最中に美波は命を失ってしまった。
目的を達成する前にこの世を去らなければいけなくなってしまった無念。
大雅が無事に自分の人生を送ることができるのかという不安。
その二つが美波の心残り、後悔であった。
その思いが美波の魂を現世に引き留めた。
美波の母の思いに触れ、春豊と再会し、大雅との思い出の地を回りながら、大雅の中にいる虎之助という人物に辿り着いた。
大雅自身の時間を奪い、その後の生活そのものを脅かす存在に美波は嫌悪した。
どうやったら大雅から切り離すことが出来るのか、美波には分からなかった。
考えた挙句、本人と直接話をすることにした。
話をし、どんな人物なのかを見極めた上で、春豊と相談し切り離す方法を検討することにした。
虎之助の事情を知り、何のために大雅の中にいるのかを知った。
美波は悲痛な虎之助の思いに涙を流した。
時代背景や立場が全く違うため、単純に比較できないが、美波は虎之助の思いを自分の環境と重ねていた。
絶対に叶わないと知りながら芽生えてしまった気持ちを無視することが出来ない状況。
それは留まっていてはいけないと知りながら出来るだけ真実から遠回りをしている自分の状況と似ていたのだ。
虎之助の願いを聞き、協力することを選択した。
しかし、虎之助は先生に利用されているだけで八千代と会うことが出来るというのは全くの出鱈目だった。
絶望した虎之助が自らの後悔を抱えたまま成仏しようとした時、目の前に八千代が現れた。
期せずして虎之助は後悔を解消することが出来、今までの償いとしてほんの少し先の未来を教えてくれた。
今までの経緯を振り返り、美波は考える。
――当初の目的を果たすことは出来た。
〝大雅の命を救い、大雅の未来が何よりも幸せなものになるようにすること〟
二重人格を直そうとしたのも、今こうして命を守ろうとしているのも。
その全ての後悔はまさにそこにある。
突き詰めれば美波の望みはそれに行き着く。
それが取り除かれてしまったら、美波がここにいる意味はもうない。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~
水無月礼人
恋愛
私は冒険者ギルド職員ロックウィーナ。25歳の女で担当は回収役。冒険者の落し物、遺品、時には冒険者自体をも背負います!
素敵な恋愛に憧れているのに培われるのは筋肉だけ。
しかし無駄に顔が良い先輩と出動した先で、行き倒れた美形剣士を背負ってから私の人生は一変。初のモテ期が到来です!!
……とか思ってウハウハしていたら何やら不穏な空気。ええ!?
私の選択次第で世界がループして崩壊の危機!? そんな結末は認めない!!!!
※【エブリスタ】でも公開しています。
【エブリスタ小説大賞2023 講談社 女性コミック9誌合同マンガ原作賞】で優秀作品に選ばれました。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】
remo
恋愛
あなたにとっては遊びでも、私にとっては、…奇跡の夜だった。
地味で平凡で取り柄のない私に起きた一夜のキセキ。
水村ゆい、23歳、シングルマザー。
誰にも言えないけど、愛息子の父親は、
今人気絶頂バンドのボーカルなんです。
初めての恋。奇跡の恋。離れ離れの恋。不倫の恋。一途な恋。最後の恋。
待っている…
人生で、一度だけの恋。
【完結】ありがとうございました‼︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる