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五章
六十三話
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「……くっ! こいつ!」
大雅の頭を狙っていた銃口は天を向いていた。
大雅は斎藤先生の手を下から上に押し上げた勢いそのままに、斎藤先生の腹部を思い切り蹴る。
斎藤先生が嗚咽を漏らしながらその場に尻をつく。
命の危機はすでに脱していた。
しかし、その時、大雅を押し留めていた栓がひとつ抜けた。
大雅は地面に落ちた拳銃を拾い上げ、銃口を斎藤先生に向ける。
――こいつが、こいつが、美波を殺した張本人……殺してやる、殺してやる、殺してやる……。
いくら夜とは言え花火大会でもない日に派手な音が二発も鳴り響いたのだ。
ベランダかどこかから様子を見た人が通報していてもおかしくない。
――……だけど、その短い時間で、事は足りよう。
拳銃を持った右手に左手を添え、斎藤先生の眉間に照準を合わせる。
撃鉄に力を込め、ゆっくりと落とす。
引き金に人差し指を当て、いつでも撃てる状態にする。
一度たりとも使ったことの無い代物なのに、その所作に躊躇いや戸惑いは全く見当たらなかった。
心臓が高鳴ることも拳銃を持つ手が震えることもなく、大雅の心中は意外にも穏やかだった。
――狼狽えるこいつの頭を撃っても美波が戻ってくることはない。それは理解しているが……それでも、美波を奪ったこいつに復讐をすることが出来れば、何かが変わるかもしれない。たとえ、それが異常であっても構わない。
その思いが大雅を占める。
大雅の頭を狙っていた銃口は天を向いていた。
大雅は斎藤先生の手を下から上に押し上げた勢いそのままに、斎藤先生の腹部を思い切り蹴る。
斎藤先生が嗚咽を漏らしながらその場に尻をつく。
命の危機はすでに脱していた。
しかし、その時、大雅を押し留めていた栓がひとつ抜けた。
大雅は地面に落ちた拳銃を拾い上げ、銃口を斎藤先生に向ける。
――こいつが、こいつが、美波を殺した張本人……殺してやる、殺してやる、殺してやる……。
いくら夜とは言え花火大会でもない日に派手な音が二発も鳴り響いたのだ。
ベランダかどこかから様子を見た人が通報していてもおかしくない。
――……だけど、その短い時間で、事は足りよう。
拳銃を持った右手に左手を添え、斎藤先生の眉間に照準を合わせる。
撃鉄に力を込め、ゆっくりと落とす。
引き金に人差し指を当て、いつでも撃てる状態にする。
一度たりとも使ったことの無い代物なのに、その所作に躊躇いや戸惑いは全く見当たらなかった。
心臓が高鳴ることも拳銃を持つ手が震えることもなく、大雅の心中は意外にも穏やかだった。
――狼狽えるこいつの頭を撃っても美波が戻ってくることはない。それは理解しているが……それでも、美波を奪ったこいつに復讐をすることが出来れば、何かが変わるかもしれない。たとえ、それが異常であっても構わない。
その思いが大雅を占める。
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