【完結】幽霊彼女と後悔探しの旅

よーじろー

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六章

六十九話

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 大雅と春豊は春豊の車で朱里の家に向かっていた。
 道中、他愛のない話をしてはいたが、空気は若干湿っており重かった。
 朱里がやんわりと大雅を遠ざけようとしていることは二週間前に会った時もそうだが、美波の葬式の時から感じていた。
 そのため、果たして自分が春豊と一緒に訪れてもいいのか、迷惑になるのではないか、と最後まで悩んでいたのだ。
 決め手は一通の手紙とキーホルダーだった。
 家の中を掃除し、美波の物の整理をしている時。
 その中に見慣れない箱がひとつあり、それを開けると一通の便箋と緑色の硝子で彩られたイルカと青色の硝子で彩られたイルカのキーホルダーが入っていた。
 大雅が美波の誕生日であげた物と似ていたが、微妙に形が異なっていた。
 それは当時売っていた物ではなく、つい最近売り出した物だった。
 
 ――…………そうか! あの時、美波が一時間もいなくなっていたのは、これを調達するためだったのか!
 
 それが分かった瞬間、大雅の流しすぎて枯れていた瞳から涙が流れていた。
 それから二週間、大雅はこれから生きていくための準備に奔走していた。
 新しいバイトを見つけ働き始めた。
 ここ最近書けていなかった小説の続きを書き進めた。
 全く行けてなかったフィットネスジムにも行くようにし、体を動かすようにした。
 忙しく動いて考える暇を与えないようにしないと、どんどん動けなくなってしまう気がして怖かったのもあるかもしれない。
 少しずつではあるが確実に前に進み始めていた。
 そうすればするほど、大雅の中で朱里の問いがより鮮明に繰り返される。

 〝あなたは、美波に言えた?〟

 大雅は二週間、忙しく動きながら常に考えていた。
 仮にその問いに答えなくても曖昧にぼやかして生きていくことは可能であろう。
 整理して出てきた美波の手紙を渡すだけであれば春豊に任せてもよかった。
 それを春豊に話すと、
 〝それは大雅君が直接渡しなさい〟
 一蹴されてしまった。
 そのため、今回同行したのはそれを渡すという目的がある。
 しかし、それ以上に朱里の問いをそのままにしておくことが出来なかったということも大きい。
 
 ――――ピーンポーン。
 
 ドアのチャイムを鳴らすとすぐに家の中を歩く音が聞こえてくる。
 そして、鍵が開けられドアが開く。
「春豊さん、お待ちしてました」
「お久し振りです」
「大雅君もいらっしゃい」
「度々すみません」
 大雅と春豊が家の中に上がると、家の中には多くの段ボールが積まれていた。
「ああ、散らかっててごめんなさい。こちらにどうぞ」
 朱里はそう言って、二つの椅子を引く。
「引っ越されるんですか?」
 椅子に座った後、春豊が訊く。
「そうなんですよ。ここは美波に何があっても安心して帰って来られるように、と住んでいましたが……それももう必要ありませんし、それにちょっと辛くて……」
 朱里が持ってきたお茶をテーブルに置き、寂しそうな表情を浮かべ部屋を見渡す。
「お線香を上げさせてもよろしいでしょうか?」
「はい。是非よろしくお願いします」
 春豊が席を立ち、仏壇の前に座る。
 それに倣って大雅も春豊の後を続く。
 仏壇に飾られた美波の写真は満面の笑みだった。
 明るく周囲を笑顔にする美波らしい素敵な写真だった。
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