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二章
十一話
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大雅は夢を見ていた。
家やビルなどの建物が一切ない草原で大雅と美波は寝転がっていた。
お互いの感触を確かめるように手を握り、天を仰いでいる。
雲一つない空に浮かぶ太陽が大雅達の肌を焼く。
遮るものが何もない光線は暑さよりも痛みを感じてしまうほどの強さであったが、大雅は不思議とその暑さや痛みを感じていなかった。それよりもむしろ心地よさの方が勝っていた。
『大雅は、私とずっと一緒にいてくれる?』
ふと美波が言葉を投げる。
「勿論だよ。未来永劫、何があろうとも僕と美波はずっと一緒さ」
その言葉を聞いた瞬間、美波の表情が強張る。
大雅はそれに気づくことはなかった。
『…………それは、良かった……です』
そう言う美波の表情は安心したようでもあるが、どこか悲しみを含んでいた。
大雅と美波が見つめ合い、やや躊躇いながらも唇を重ねる。
その後、再び見つめ合い微笑む。
これが現実で起きたことの回想なのか、それとも妄想が作り出した幻なのか。
大雅自身は判断できなかったが、これが初めての経験でないことは確かだった。
過去に経験した感覚を頼りにこの後起こることを探るが、この後の見当は何もつかなかった。
それもそのはずなのだろう。
何せ今の大雅は北条大雅であって、北条大雅ではないのだから……。
家やビルなどの建物が一切ない草原で大雅と美波は寝転がっていた。
お互いの感触を確かめるように手を握り、天を仰いでいる。
雲一つない空に浮かぶ太陽が大雅達の肌を焼く。
遮るものが何もない光線は暑さよりも痛みを感じてしまうほどの強さであったが、大雅は不思議とその暑さや痛みを感じていなかった。それよりもむしろ心地よさの方が勝っていた。
『大雅は、私とずっと一緒にいてくれる?』
ふと美波が言葉を投げる。
「勿論だよ。未来永劫、何があろうとも僕と美波はずっと一緒さ」
その言葉を聞いた瞬間、美波の表情が強張る。
大雅はそれに気づくことはなかった。
『…………それは、良かった……です』
そう言う美波の表情は安心したようでもあるが、どこか悲しみを含んでいた。
大雅と美波が見つめ合い、やや躊躇いながらも唇を重ねる。
その後、再び見つめ合い微笑む。
これが現実で起きたことの回想なのか、それとも妄想が作り出した幻なのか。
大雅自身は判断できなかったが、これが初めての経験でないことは確かだった。
過去に経験した感覚を頼りにこの後起こることを探るが、この後の見当は何もつかなかった。
それもそのはずなのだろう。
何せ今の大雅は北条大雅であって、北条大雅ではないのだから……。
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