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二章
二十話
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スープ、魚料理、肉料理、デザートと運ばれ、そのどれもが上品で高そうな料理だった。大雅が普段食べているような物とは見た目も匂いも味も……何もかもが違う。世間一般で言うとそれはミシュランで星を獲得できるほど上等な物であり、美味しいと形容するべき食べ物なのだろう。
――しかし、何故だろうか?
大雅はそれを美味しいと感じることはなかった。
緊張していたということもあるのだろうが、どこか綺麗に着飾った人形のような、面白みの欠片もないそれらに何一つ魅力を感じなかったのかもしれない。
一通りの料理を食べ終え、食後のコーヒーを口に運ぶ。
「それで、あなた達はこれからどうするつもりかしら?」
ナプキンで口元を軽く拭い、春豊が訊く。
「そうですね。とりあえず、美波のお母さんに美波の心残りがある可能性が高いので、これからもそれを当たってみようと思っています」
「…………ふーん、そう……」
そう呟き、春豊が頬杖を突く。
「……そうね……なるほど、そういうことね……」
春豊が一人で何かを納得したように頷きながら再度呟く。
その時、ふと美波の処置に当たった斎藤先生のことを思い出す。
――そういえば、あの先生、斎藤先生って言ったっけな……あの人も一人で何かを納得していたな。
大雅には春豊や斎藤先生が何に納得していたのか、全く分からなかった。ただ、大雅の与り知らぬところで何かが動き出しているのは確かだった。
目を開けた春豊の目が鈍く光る。
嫌な予感を感じていた。そして、経験上、大雅の悪い予感は十中八九当たる。
それは今回も例に漏れなかった。
「それ、私も手伝うわ」
春豊が悪戯な笑みを浮かべながら言う。
『え⁉ 本当ですか⁉』
その言葉にすぐさま反応した美波が目を輝かせる。
「ええ、まあ、それも……そこの大雅君が良ければだけど」
そう言って、春豊が大雅を見る。
美波もそれに倣って大雅を見る。
「僕達とすれば願ったり叶ったりですよ……でも、春豊さんには仕事があるじゃないですか。それはどうするんですか?」
「大丈夫よ。私にはこういう時のための影武者がいるから」
「か、影武者⁉」
「そうよ」
「……影、武者……ですか」
「忙しい時とか今回みたいなことが起きた時に時々頼むのよ。でも、最近段々と質が落ちてきたのよね」
春豊が何事もなく言うが、大雅にはそれが信じられなかった。
何かを考えるように再度言葉を漏らし、眉間に皺を寄せる。
――戦国時代や三国志などで囁かれた噂程度の産物で、今や都市伝説レベルの話だと思っていたが、まさか本当に存在するとは……それを言うと、僕……いや、俺は……。
一度下唇を噛み、言葉を捻りだす。
「いや、でも、これは僕と美波のことであって、春豊さんに迷惑はかけられませんよ」
「あら? おかしいわね。これは美波ちゃんの問題であって、何も大雅君だけが美波ちゃんと関わっているわけじゃないと思うけど……まあ、仮に、美波ちゃんの心残りがあなたの中にあるのであれば……それも納得だけどね」
『ちょっ、春豊さん⁉』
美波が慌てた様子で言葉を挟むが、春豊は意に介さない。
問い詰めるような口調で言う春豊の言葉に大雅は心臓を掴まれるような衝撃を受ける。
突然の衝撃に脈は早くなり、視線は定まらない。
動揺を隠せていないのが自分自身でよく分かった。
「…………美波はどう? それでもいいの?」
『私は……』
そう言い澱み、一瞬春豊を見るが、すぐに明るい声を上げる。
『私は大賛成ですよ! 春豊さんが手伝ってくれれば鬼に金棒ですから! それとも、大雅は嫌ですか?』
そう言って、美波は瞳を潤ませながら大雅を見る。
それが決定的だった。
「…………分かりました。よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、これからもよろしくお願いね」
春豊が笑みを浮かべ、大雅もそれに合わせるが、おそらく上手く笑えていないだろう。
――……どうして、ことはこうも上手くいかないのだろうか……。
――しかし、何故だろうか?
大雅はそれを美味しいと感じることはなかった。
緊張していたということもあるのだろうが、どこか綺麗に着飾った人形のような、面白みの欠片もないそれらに何一つ魅力を感じなかったのかもしれない。
一通りの料理を食べ終え、食後のコーヒーを口に運ぶ。
「それで、あなた達はこれからどうするつもりかしら?」
ナプキンで口元を軽く拭い、春豊が訊く。
「そうですね。とりあえず、美波のお母さんに美波の心残りがある可能性が高いので、これからもそれを当たってみようと思っています」
「…………ふーん、そう……」
そう呟き、春豊が頬杖を突く。
「……そうね……なるほど、そういうことね……」
春豊が一人で何かを納得したように頷きながら再度呟く。
その時、ふと美波の処置に当たった斎藤先生のことを思い出す。
――そういえば、あの先生、斎藤先生って言ったっけな……あの人も一人で何かを納得していたな。
大雅には春豊や斎藤先生が何に納得していたのか、全く分からなかった。ただ、大雅の与り知らぬところで何かが動き出しているのは確かだった。
目を開けた春豊の目が鈍く光る。
嫌な予感を感じていた。そして、経験上、大雅の悪い予感は十中八九当たる。
それは今回も例に漏れなかった。
「それ、私も手伝うわ」
春豊が悪戯な笑みを浮かべながら言う。
『え⁉ 本当ですか⁉』
その言葉にすぐさま反応した美波が目を輝かせる。
「ええ、まあ、それも……そこの大雅君が良ければだけど」
そう言って、春豊が大雅を見る。
美波もそれに倣って大雅を見る。
「僕達とすれば願ったり叶ったりですよ……でも、春豊さんには仕事があるじゃないですか。それはどうするんですか?」
「大丈夫よ。私にはこういう時のための影武者がいるから」
「か、影武者⁉」
「そうよ」
「……影、武者……ですか」
「忙しい時とか今回みたいなことが起きた時に時々頼むのよ。でも、最近段々と質が落ちてきたのよね」
春豊が何事もなく言うが、大雅にはそれが信じられなかった。
何かを考えるように再度言葉を漏らし、眉間に皺を寄せる。
――戦国時代や三国志などで囁かれた噂程度の産物で、今や都市伝説レベルの話だと思っていたが、まさか本当に存在するとは……それを言うと、僕……いや、俺は……。
一度下唇を噛み、言葉を捻りだす。
「いや、でも、これは僕と美波のことであって、春豊さんに迷惑はかけられませんよ」
「あら? おかしいわね。これは美波ちゃんの問題であって、何も大雅君だけが美波ちゃんと関わっているわけじゃないと思うけど……まあ、仮に、美波ちゃんの心残りがあなたの中にあるのであれば……それも納得だけどね」
『ちょっ、春豊さん⁉』
美波が慌てた様子で言葉を挟むが、春豊は意に介さない。
問い詰めるような口調で言う春豊の言葉に大雅は心臓を掴まれるような衝撃を受ける。
突然の衝撃に脈は早くなり、視線は定まらない。
動揺を隠せていないのが自分自身でよく分かった。
「…………美波はどう? それでもいいの?」
『私は……』
そう言い澱み、一瞬春豊を見るが、すぐに明るい声を上げる。
『私は大賛成ですよ! 春豊さんが手伝ってくれれば鬼に金棒ですから! それとも、大雅は嫌ですか?』
そう言って、美波は瞳を潤ませながら大雅を見る。
それが決定的だった。
「…………分かりました。よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、これからもよろしくお願いね」
春豊が笑みを浮かべ、大雅もそれに合わせるが、おそらく上手く笑えていないだろう。
――……どうして、ことはこうも上手くいかないのだろうか……。
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