【完結】幽霊彼女と後悔探しの旅

よーじろー

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四章

三十六話

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「君、名前はなんていうの?」
「…………虎之助」
「虎之助っていうんだね。うん、うん。いい名前だわ」
 八千代が右隣に座る虎之助の頭を撫でる。
 虎之助は一度びくっと体を跳ねさせると、ご飯をかき込む手を止める。
 その表情からは感じ取れないが、抵抗しないところを見ると満更でもないのかもしれない。
 その横で寛大が口を尖らせ、露骨に不満を表す。
 医者から帰ってきた八千代と寛大、虎之助の三人は風呂に入り、遅めの夕食を取りながら詳細を八千代の父に報告しに行った爺を待っていた。
「それにしても、爺、遅いわね」
「そりゃそうですよ。無断で抜け出した上に、僕があれほど言ったにもかかわらず、ずぶ濡れになって帰ってきたと思ったら、知らない子供を連れて帰ってきたんですから。話も長くなるでしょうよ、そりゃ」
 寛大が頬を膨らませながら言う。
 結果から言うと虎之助は何の病気でもなかった。ただ、中等度の栄養失調と脱水がある為、今後注意は必要であるとのことだった。
 その後、ずぶ濡れになりながら帰ってきた八千代と寛大を見て爺は心底心配、安堵し、その後夜であることもお構いなく、宮廷中に響き渡る大声で「この大馬鹿者!」と怒鳴った。そして、八千代の背後に隠れる虎之助に爺は眉間に皺を寄せ、値踏みするように全身にくまなく視線を這わせる。
「八千代様、そちらは……」
 爺が訝しむように訊くと、八千代は臆することなく言う。
「虎之助よ。道で苦しそうにお腹を抱えていたから、医者に行って診てもらったの」
「そうですか。では、今すぐ」
「雨も降ってたし、とりあえず連れてきたわ。ああ、寒いから、先にお風呂をいただくわね。ほら、二人とも行くわよ」
 爺の言葉を遮り八千代が言う。
 同時に虎之助と寛太に向けられる非難に満ちた視線を遮るように八千代は二人の手を強引に引き、家の中に入った、というのが、現在に至るまでの経緯である。
「いいですよね。八千代様は、気楽で」
 その様子に八千代は小さく溜息を吐く。
「だから、ごめんって。そろそろ機嫌を直して頂戴よ」
 八千代がへそを曲げて口を聞いてくれない寛大に謝る。
「……それじゃあ……僕も……」
「ん? 何?」
「……頭を、撫でてください」
 寛大が小さい声で呟く。
「なんだ。そんなこと……ほら、こっちに来なさい」
 そう言って八千代が向かいに座る寛大に手招きをする。
 寛大は恥ずかしそうに頬を赤らめ、ゆっくり近づき頭を差し出す。
 八千代は虎之助を撫でていた手で寛大の頭を撫でる。
 頭から手を外された虎之助は再度山盛りによそられたご飯をかき込みながら、ちらちらと横目で見る。
 ――なんだかこうしていると、弟がもう一人出来たみたいね。
 ふふふ、と笑いながら優しく寛大の頭を触り、横目で虎之助を見る。
 寛大の髪は硬くしっかりしているのに対し、虎之助の髪は柔らかくしなやかだった。
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