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第4章 サロキダ戦
7.紫の少年
しおりを挟むノーベの攻撃パターンは、右へ移動で距離を取り、左で移動で斧の攻撃。つまり、長距離で斧の特性である天地逆転を使い、近距離で銀斧を使う…ってわけか。
アダムの攻撃パターンは、近距離型しかないから、どちらも熟るノーベより不利だ。
ヤドクは靄のかかった地上を見下ろす。
「にしても、この靄邪魔だなぁ、これもノーベの力ってことか?」
フラッグの長時間浮遊の特性がなければ、靄が邪魔して無事に着地することはできない。上下高速ジャンプ型のミアナのルーラー、ラビットはこの戦いでは動きにくいだろう。
全体の能力とバランスの構成を考えながら、このルーラーは役に立つ。ヤドクはそっとフラッグの青い額を撫でる。
「…ボクを選んだ理由は……それ?」
一瞬だけ、フラッグが応答したように思えたのは、意思の中か。それとも勝手な妄想か。
ふいにフラッグの動きが止まる。静止し、耳をそばだてるかのようだ。
グギョギョギョギョ!
興奮したように荒ぶるフラッグ。フラッグの体が大きく揺れ、ヤドクは振り落とされそうになる。
「ちょ、どうしたんだよ!フラッグ!」
震えてる…?
フラッグの青く冷たかった額が、生ぬるく、妙な光沢を帯びる。大きく突起した眼がグルリと動き、後方の何かを捕らえる。ヤドクもそれにつられるように後ろを向くが、何もない。
「何もないじゃないか、ビックリさせ…」
グギョギョギョギョ!!!
苦痛の鳴声。落下する体。
ヤバいッこのままじゃ!
地上がどんどん迫ってくる。フラッグの体が指先を滑り、離れていく。思い出す。あの時も…ボクらは、こうして捨てられたんだ。
「あれェ~?諦めが早いのは僕。嫌いなんだけどなァ」
顎が外れんかとばかりの重力中断。ヤドクの体は空中で何者かによって受け止められた。体が投げ出され、フラッグの体に激突し引っかかる。
「だ、誰だ!」
「そんなに不審な者じゃないヨ」
淀んだ霧の情景の中に、鮮やかな紫色の布が揺れた。靄を斬り払うかのように、紫色布が弧を描く。向こう側で、満面の笑みを浮かべる少年が見えた。
「……レブル…ブルー……」
ただのレブルブルーではない。少年の醸し出すオーラは…
『あいつらを見たら逃げろ』
ヤドクはフラッグの上にまたがると、勢い良く手綱をきる。
「あれェ?逃げちゃうノー?」
いつの間にか、数メートルほど離れていたはずの少年が目の前で浮遊していた。少年の薄紫色の柔らかなくせ毛がかった髪が、少年の動きに合わせて揺れる。
宙に……浮いてる…
「ネェネェ、ぼくさァ、暇。なんだよネ」
「…レブルブルーのトップさんが二人…ですか。それはそれは、相当暇なようですね」
「どうしたノ?怒ってるノ?」
少年の表情は、まるで幼いただの男の子のように見えた。こんな子が、なぜ、レブルブルーのトップ格に?
「ぼくの名前ハ、ローレン・クロノスって言うんダ~よろしくね、ヤドク・カーマン君!」
「……なんで、ボクの名前を?」
「エ?だって、ボスが君の話してたかラ」
「レブルブルーの長官さんが、どうしてボクの名前なんかを?君は誰なんだ?」
「だーかーラー、ぼくはローレンだヨー、ローレン!」
ローレンの口元が引き上がり、白い歯が覗く。ヤドクは彼の手に握られた銀の弓矢を横目に見る。
「……そういうことか…」
「ゲームしようヨ。ヤドクくン」
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