69 / 185
第6章 ナジプト国
8.誓えぬ約束
しおりを挟む耳を唸る機械音に、アインは肩を怒らせた。耳障りなその声が、アインの決意を揺らがせる。
『何をしている?アイン』
落ち着いた、何処か逆らえない何かを持つその声に、無性に腹が立った。アインは無言で通信機の向こうの、相手の息遣いを聞いていた。銀の小銃を腰に仕舞い、物音一つなく立ち上がる。辺りは赤黒い煙に包まれつつあった、もう少しすれば、この紫色に染められた国も、四年前のあの国同様に燃え尽くされるのであろう。
『勝手な行動は謹んでもらおうか?黒髪はどこだ?』
「……。」
『応答しろ、アイン・アレス』
「……なぁ、アク。俺をなんで…レブルブルーに入れた?」
『そんな事は聞いていない、黒髪はど…』
「聞いているのはこちらだ、黒髪の居場所が知りたければ、それに答えろ」
『僕に逆らうのか?』
耳から通信機を剥ぎ取り、燃え上がる炎の中に投げ捨てる。
「……クソッ」
もう、どうだっていい。
「お兄ちゃん」
後ろから声がした。先ほどの少年と同じ声だ。いや、違うか。この声は…
「なに?」
「……戻ってきて」
掠れた声だ。泣きそうな声だ。
「…何処に戻ればいい?」
「待ってるから」
「本当に待っていてくれるのか?」
「…約束。する?」
アインはふと笑う。
「……しないよ、バーカ」
幻聴でもいい。あいつともう一度会いたい。
「……戻らないのは、お前だろ?イヴ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
254
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる