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第7章 ハリスナ国
2.背高涙燦々
しおりを挟む「アダムをマギダムに送る!?」
「うん…そうするしか手段はないんだ。あそこならシーレッドの眼にも入らずに送るルートがある」
「で、でも……そんな。そんなのアダムを牢獄に入れることとなんの変わりがあるの!?」
「…パラ上官も協力してくれると言っている…ここに止めておけば、アダムは殺されてしまう」
ヤドクは、半べそをかくミアナを横目に、ふぅと長いため息を吐く。沈黙し、押し黙ったミアナを残し、部屋を後にするが、何処か引け目を感じ、扉を閉めるのに一歩遅れる。不恰好なタイミングで、戸惑ったような締め方をし、扉を背にズルリとしゃがみ込んだ。
「そんなに根気詰めんなよ~」
ふと顔を上げると、そこには、あぐらをかき、頬杖をつくブームの姿があった。いつも通りの口調にも関わらず、目元には隠しきれないクマが見えた。
「……別に、ただ……ミアナを泣かせてしまったのが…はぁ」
「お前は悪くないだろ~?正しい選択だった、あのまんまじゃオレら全員アダムに殺させてたしな」
「……殺した…のかと思った」
静寂の後に、唐突に投げられた言葉のようで、ヤドクは瞬間ドキリと脈打つ。
「……正直、そのつもりだった…………アダムがクロウと同化してしまった以上、そこにアダム自身はいないんだって。そう思った。だから引き金を引けたんだ…だけど……」
左胸に空いた穴。確かに命中していた。あれで死なない人間はいない。
剥ぎ取った服の下に、残ったはずだった赤い傷は、アダムの肌には一箇所も見当たらなかった。代わりに残った黒い翼の模様が、クロウの残した救済だと確信し、完全にアダムという名の少年が消えたことへの苦しみが、ヤドクを襲った。
「……同化したんだ…」
「それでもアダムは生きてる」
ミアナの声だった。気づけば、背後の扉はなくなり、開いた扉から充血した目のミアナが立っていた。何度も何度も涙を拭い、ズルズルとだらし無い音を立てる。振り返ったヤドクの頭に自分の足を乗っける。
「……馬鹿。アタシたち家族でしょ!?」
こんなに綺麗な涙は見たことがなかった。
彼女の口から発された、家族という言葉が、昔のそれとは違って、重くて、そして温かいことに気づく。
ヤドクはゆっくりと体を起こし、少しだけ低いミアナの頭を抱いた。止まることを知らない、ミアナの嗚咽を聞きながら、目を閉じる。
『アタシの方が、ヤドクより背高いもん!』
『いつかミアナなんか追い越してやる!』
『やれるもんならやってみなさいよ!』
「……やれるもんだよ…きっと……」
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