76 / 185
第7章 ハリスナ国
3.出動
しおりを挟む「ハリスナ国王救出を最大目標とする。最後の王だ、慎重にお守りするのだ!」
「はっ!」
張り詰めた空気の中、シーレッド本部の城門が開かれた。朝の寒い時間、革のジャケット同士が擦れ、車に揺られ、窓の外のまどろみを見る。
「……フラッグ…お前が…みんなを守るんだ」
その言葉に反応するように、青い鉱石が光った。ただの幻覚だったのかもしれない、その光に、確かに自分の意思があることを確認し、遠くに見える白色の国に目を細めた。
*
「え~面倒っすよぉ~」
金髪の少年は、木製のその机に両足を乗せ、気怠げにそう言った。
「行儀が悪いんじゃないのか?フェル?」
「だってさ~さっき任務から帰ったばっかだっつ~のに、また任務っすかぁ~?おれ、そろそろ限界っすよぉ~」
「アクからの命令だ、俺達が従わないでどうする」
「……てか、ボスはいつ会議に参加するんすかぁ~?おれ、そろそろボスの顔忘れちゃいそうなんすけどぉ~」
「文句言うなガキ」
プロトは、フェルの頭に金色の囲いを纏うコートを被せ、その上からわしゃわしゃとフェルの頭を鷲掴みにした。
「うわっ痛ッ」
「分かったら、さっさと行動しろ、向こうもそろそろハリスナに到着するころだろ」
「…へえ~い」
フェルは、重い体を起こし、頭のコートを無造作に外し、片腕を通す。髪が摩擦で擦れふわりと浮いていることに気づき、プロトにバレぬように手で押さえつける。いろんなことにウンザリし、ジジイのようなうめき声をあげながら本格的に動き出した。
ふと通り過ぎた鏡の前で、横目に立ち止まり、髪を整えようと顔を寄せる。鏡が顔を近づけるごとに白く曇り、視界が悪くなる。フェルは袖で鏡を拭い、あることに気づいた。
「……なぁ、プロト。そういや、ノーベ…帰ってきたんだよな?」
「あぁ、そうだが?」
プロトは、眼鏡を拭いながら、素っ気なく答える。
「ならさ……なんで…ノーベの銀斧が。ここにあるんだ?」
「ノーベの…?」
鏡の背後に映った、銀の光沢を四方の光で輝かせる、美しい斧。武器を装備しない状態での外出など決してあり得ないことだ。
プロトは、一瞬目を細め、フェルの後ろ姿を一瞥する。不安や恐怖を感じる前兆のような、そんな背中に、プロトは乾いた笑顔を作った。
「ノーベなら、確か、偵察に行くとかいうローレンに連れて行かれてたな。忘れた…というのが妥当な説だな」
「……忘れるのか……ノーベが…」
「……あぁ」
「……やっぱ、そういうことってあるんすよね人生…」
あぁ、こいつが馬鹿で助かった。
0
あなたにおすすめの小説
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる