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第7章 ハリスナ国
5.核
しおりを挟む「我らは、確かにこの戦争が始まる前から、奴らアクチノイドの存在は知っていた。だが、我らが奴らに対抗できる武器の開発を始めたのは、他でもない、四年前のアリダン大火災からだ」
「……その武器というのが……ルーラーシステム…」
「ルーラーシステムは、動物型ロボットだ。操縦方法は、機械的操縦方ではなく、意識的…つまり、精神同士の結合によって、そのルーラーそれぞれに搭載された遺伝子プログラムが一致する者…お前たち結合者の意思によって武器化することが可能になる。結合者の意思をなくして発動することのないように、普段はストレージストーンと呼ばれる石の中で保存される」
ハリスナ国王は、そこまで言うと、少し深刻そうな表情を浮かべて見せた。その裏で何を考えているのかは定かではないが、ミアナへ向けられる鋭利な針先と、その腕に絡みつく骨ばった指に、ヤドクは警戒心を強める。
「…もし……結合者の許可なしに、ルーラーが発動すれば…どうなるの?」
そんな質問を口にしたミアナに、ヤドクはふと不安になる。何故そんな質問が可能なのか、彼女の真剣な表情の心理を伺うかのようにヤドクは目を細めた。
同化。その言葉を知ったのは、あの本の中でのことだった。
自身がこのような役割に立たされたことからの責任か、それとも男らしく在りたいと思ったからか。そのどちらもが背を押し、寝る間も惜しんで本を貪った。その言葉はまるで稀に起こる注意書きかのように、小さく片隅に記載されていた。まるで、誰かが後から付け足しかのような、そんな存在感があり、その時のヤドクのように隅々まで目を光らせていなければ、きっと気づく者はなかったことだろう。
「……君は、同化のことを聞きたいのかい?」
心を読み透かしているかのような、国王の言葉に、ミアナは何のためらいもなく、小さく、だがハッキリと頷いた。
「同化現象というものは、普通起こらないものなのだ。だが…起こる可能性を持つ者が何人か存在する。そいつらと結合したルーラーは皆一流物で、その威力はルーラーシステム内でもトップクラスだ」
「…起こるようになった?」
「あぁ、ルーラーの核…それが誕生したんだ。それによって、同化現象が起こるようになった」
「核……つまり、ルーラーシステム全てに搭載されたプログラムの核のことですか?」
「その通り。全てのプログラム…というよりは、全てのプログラムを無効化する…と言った方が正論かもしれない」
「だが、核の法則的思考からしても。その核とやらを攻撃されてしまえば、全てのルーラーシステムは破壊されてしまうのでは?」
ヤドクの質問に、国王は大きく頷く。場面を切り替えたような咳をし、高い天井を見上げた。
「……確か。この話を持ちかけたのは、お前たちのボス…シーレッド長官、レパート・タイという男だったかな。奴は我々研究者にこう言ったのだ。ルーラーの核を作れば、莫大な力となり、アクチノイドの襲撃に対抗できる最強の武器ができる。とな…」
ミアナの眼光が、小さく揺れる。
「……結局、それは、どうなったのです?」
「…………失敗した」
「つまり、核は作れなかったと?」
「いいや、核は完成したんだ。だが、未だに武器化は完了せず、そのままだ」
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