セカンドアース

三角 帝

文字の大きさ
100 / 185
第9章 ヤカロザ決戦

3.罠

しおりを挟む

  四年前まで、国同士の貿易中枢部であったヤカロザ国。セカンドアースの中心部に位置し、多くの人々で賑わっていた。アリダン大火災後、そこはレブルブルーの占領下におかれ、今ではアクチノイド人によってヤカロザ国は封鎖状態にあった。

「今回の戦いは、随分と派手なものになるな」

  鬼教官がそう言って、ヤドクの肩をポンと叩く。ずっしりと重たいその手が突然乗せられ、あまりの重さにバランスを崩す。

「しっかりしろよ坊主。あんたのそのお偉い頭脳で仲間を引っ張っていってくれ」
「…はい!」

  鬼教官は、ニカリと汚い歯を見せて笑い、ずかずかとその場を後にした。
  フラッグの索敵サークルが反応していないことを再度確認し、仕舞っていた本を読み返す。
  きっとこの戦いで最後になる。これが始まれば最後、どちらが先に全滅するかの争いだ。圧倒的にレブルブルーよりシーレッドの方が人数は多いが、レブルブルーにはトップ5がいる。奴らの力は驚異的で、先日のハリスナ国王殺害時のフェルとブームの戦闘では、あのブームさえも蹴落とされてしまったのだ。
  それに後の奴らも厄介だ。

「よぉ!ヤドク!」
「あぁ、ブーム……はぁあ!?ブーム!?」

  振り返ると、そこにはいつもと変わらぬブームの姿があった。

「お、お前!まだ傷が……」
「治った治ったぁ~ほらほら!」

  ブームはそう言って、傷口を見せたつもりなのだろうか、右腕を捲り上げ自慢げに見せてくる。それとは反対にヤドクはブームの左腕を無理矢理捲り上げる。もちろん、そこにはぱっかりと開けた酷い傷跡が、回復は少々しているものの、無理に戦闘をするのは危険な状態だった。

「いや、こ、これはぁ~」
「ボクが、お前の傷が何処にあるのか把握してないとでも思ったのか?」
「……はい…」
「危険だ。今すぐカミスナの本部に戻れ」
「えぇええええええ!やだよ!」
「ダメだ!こんな状態で戦闘なんて無理だ」
「無理じゃない!出来るってば!オレ、強いし!」
「強かったらあんなことにはならなかった!」

  突然叫んでしまったせいか、感情的になり過ぎたせいか、ブームはしょんぼりと肩を落とす。しょうがないのだ、そうしなければ、ブームだけじゃなく、ブームが極地に陥った時に助けようとした者も、結果的に組織全体の問題になってしまう。自分が原因だなんて、ブームにそんな悔いが残るような思いはしてほしくない。

「……分かったよ。ヤドクがそこまで言うなら、戻る」
「分かってくれてありがとう」
「…………とでも言うと思ったか!ばぁぁぁあああか!!」

  ブームはそう言うと突然ヤカロザ門に向かって走り出す。

「ブーム!!勝手な行動はするな!」

  そんな言葉は既に遅く、スネークを発動させたブームに追いつける者など誰もいない。

「あぁーもう!!総員準備体勢に入れ!ABE体型!第一部隊は前衛を!後衛部隊は守備が援護を中心に囲って戦闘態勢を!あとは計画通りに実行しろ!ブーム・カーマンを先頭に突入だ!」

  男たちの威勢のいい声を合図に、フラッグを発動させ宙に浮かぶ、20メートルほど上昇し、そこで停止する。下ではヤカロザ門を次々と強引に突破していくシーレッド部隊の姿があった。ふと振り返ると…

「なんだあれ?」

  先ほどまでシーレッドが待機していた場所に、巨大な穴が空いていた。きっとレブルブルーの仕掛けた罠だろう。あらかじめ地下に爆弾を仕込んでいたのだ。

「もしかして……ブームはあれを知ってて…………」

  もしブームがあんな強引な行動を取らなければ今頃は皆、あの爆発に飲み込まれていただろう。
  ヤドクは、目の前に迫っているその危険を改めて実感する。その時だったー
  フラッグの索敵サークルに、何者かの反応があった。赤い点がヤドクの視界を物凄い勢いで突進する。ここまでのスピードを出せるのは、あの金髪しかいない。ふと、ハリスナでのことを思い出す。手に負えないほどの威力、真正面からの回避しきれない攻撃。ブームやミアナの荒れ果てた表情。
  ヤカロザ門に向かうシーレッドに回り込み、その赤い点はたった1人で突進し続ける。

「やばい!このままじゃ……」

  シーレッド全員が、あの威力に押し潰されてしまう!
  ヤドクが団員に報告しようと、右耳の通信機に手を触れる。

「全員直ちに撤退だ!今すぐだ!応答しろ!今す……」

  赤い点が動きを止め、進行方向とは逆に突然動き出す。いや、動き出したのではない……跳ね返されたのだ。

『ヤドク~、言ったろ?オレ、強いからね?』

  ブームのいつもと変わらぬ声が、通信機から聞こえた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...