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第10章 ハリスナ殿
5.ネタバレ
しおりを挟むフェルの背中が視界を外れ、大きく天井へ登っていく。ヤドクは出せる速度を全力で出し、目の前の男に短剣で斬りかかる。白コートの男は、その丈を長く伸ばし、フェルの巻き起こした風になびかせる。一瞬でフードに隠れたその顔を捉えることは出来なかった。身じろぎもしないその男に、迷う暇もなく突進する。
「やぁ!ヤドクじゃないか~」
その声が背後でし、顔を上げるが、先ほどまでいたはずの男の姿はもう何処にもなかった。勢いよく振り返り、冷静に短剣を突きつけるが、声がしたと思ったところにはその声の者は居ず、短剣から数センチ離れた辺りにニヤケ顔の男が立っていた。
榛色の瞳、黒いコート。シーレッドのものだ。
「……レパート…長官……」
「どうしたんだい?こんなところで」
「え、いや、さっき」
「ん?」
「長官こそ、どうしてここへ?」
「もちろん!このセカンドアースを守るためさ!アクチノイド人の手からね」
おかしい。確かに、あの男は……
ふと天井を見上げ、フェルの姿を探すが、すでにその姿もなく。あるのは美しい模様の天井だけだった。
「で?どんな感じなわけ?」
「え?」
「だーかーらー、状況説明だよ~もしかして、そんなの放ったらかしてここへ来たなんてこと言わないでよね?君、一応、シーレッド全団の全体指揮官なわけだから」
「…いえ、その……」
レパートは、呆れたようにため息を吐くと、ヤドクの背中に背負われた少女を覗き込む。
「…ミアナ……彼女にいったい何があったんだい?」
「…彼女はルーラー開放を行いました。その影響が出ているようで、見ての通り、この状況です」
「ルーラー開放……あぁ、あれか。それは残念だったね」
「ところで…長官は何故、たった一人でここへ?」
「……それ聞いちゃうんだ~分かってないな~ヤドクくんは、男のロマンだよ」
「信じられません」
「出来れば信じてもらいたいところなんだけど、賢い君は到底納得させられそうもないな」
レパートは、それ以上言うつもりがないようで、向きを変え、奥へ奥へと進んでいった。あとを追うべきかどうか考えるが、ここは追っておいた方が良さそうだ、とついていくことにする。
「このクリスタ殿にはね~昔から、国王達との顔合わせなんかによく来てたんだ、四年前を境に、レブルブルーの奴らが占領しちゃったけどね」
その言葉に、ヤドクは不意にハリスナ国王の話を思い出す。
『そいつは…味方か?』
あの言葉を確かめる必要があるのではないか。
「ここでは、とある実験が行われていたと聞いていますが、どういった研究がなされていたのですか?話では、国王方が研究者として実験を行っていたとか」
「…それはいったい誰から聞いた?」
「ハリスナ国王からです」
「……そうか、ここでは主に、セカンドアース内の人工的設備の調節が行われていた。それから、ルーラーシステムの開発もね」
「…一つ質問いいですか?」
「なんだい?」
「……あなたは何故、ルーラーシステムの核を作ろうと考えたのですか?」
レパートは足を止めることなく、無言になった。耳に響いてくるのは、2つの足音と、水滴の滴る音のみ。
「……最強の武器を作るためだよ、セカンドアースを守るためにね」
「でも、それはレブルブルーに奪われてしまった。核を壊すのですか?」
「壊す?そんなわけがないだろう。核は一つしか作り出せない。作ってしまった以上、武器化が完成するまで、待つしかないんだ」
「あなたは知っている……その核作成の実験体が、ボクらの家族であったことを…」
レパートは、その言葉をかき消すように大きく足を踏み鳴らした。
「君に、見せたいものがあるんだ。プロト!もういい。出てこい」
「はい、ボス」
ヤドクとレパートの間を切り裂くかのように、突如、上から青髪の男が降りてきた。青色のコートが風を受け上へ下へと交差し、そして停止する。
「……お、お前!レブルブルートップ5のプロト・ヘルメス!」
「それがどうした?」
「長官!何してるんですか!敵です!」
プロトは、相変わらず変わらぬ表情に、少々の呆れ顏を表示する。深くついたため息のあと、レパートを振り返る。
「そろそろネタバレの時間じゃないか?アク・アルテミス?」
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