セカンドアース

ブーム君とヤドク君の秘密

4.双子の恐怖

  母さんと父さんが離婚する原因になった男…コナーは、母さんと不倫関係で、父さんと別れてから家計的にも精神的にも追い込まれていた母さんをオレらの家庭から奪った男だ。こいつのせいで母さんは変わってしまったのだ…

  コナーはそのニヤケ顔のまま、オレを別の奴に押さえておくよう命令すると、ヤドクの方にスキップで近づいていく。
  震えるヤドクを掴み上げると何度か振り回し、鉄棒に頭を押し当てた。

「ヤドク！！」

  じわりと滲んだヤドクの血が、音もなく地面に落ちた。赤い液体がヤドクの額を伝っていく。

「…ヤドク……ヤド……」

  視界がボヤけた。ピクリピクリと痙攣する左頬が邪魔で仕方ない。オレを押さえつける男の汚い腕が邪魔で仕方ない。ヤドクを掴み上げ、醜く笑うコナーが邪魔で仕方ない。

  コナーは、雑にヤドクを地面に下ろすと、その青パーカーを剥ぎ取ろうとする。それに対してはヤドクは今までと違う反応を見せ、抵抗しだした。

「あ？なんやお前…」
「駄目……なんだ…この、このパーカーは…母さんが買ってくれた…」
「ぁあ！？あのクソ女が買ってくれただぁあ？ンなわけあるかよバーカ」

  震えるヤドクの瞳が、光を失い、抵抗していた小さな手がコナーによって払われた。
  コナーはヤドクのパーカーを脱がし、うつ伏せにする。酷く傷ついた背中が露わになる。

「やめ…やめろ！やめてくれコナー！！ヤドクにするなら…オ、オレにしろ！オレに！！」
「……ブーム…い、いいんだよボクは…」
「何がいいんだよ馬鹿！」

  コナーは、オレの話など最初から耳に入っていないかのように胸ポケットから小箱を取り出す。素早くライターの火を煙草の先に当て、一瞬強い赤色をもった煙草の吸殻をヤドクのむき出しの背中に落とす。

「痛ッ…」
「ヤドク！！」
「ほらほら～ブーム～お前がお外で遊んでいる時ぃ、頭の良くて賢いヤドク君は～こんな風に俺と一緒に遊んでましたぁ～」

  コナーはしゃがみこむと、軽く舌なめずりをする。薄い唇が毒々しく、それがオレの脈拍となって身体中にこだまするかのようだった。
  
「頼むから……頼むから……やめてくれ…やめてくれ………お願いだから…………やめて…くれ…」

「んじゃ、本番いきますかぁ～」