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ブーム君とヤドク君の秘密
14.双子と言葉
しおりを挟む「お、お前!まーたミアナ泣かせたんだってなぁ!?」
早朝、ブームの激しい剣幕と怒鳴り声に殴り起こされ、またもや非爽快な朝を迎えた。
「仕方ないだろ、しつこかったんだから」
「いーやダメだ!男は何があろうともレディを泣かせてはならない!そういう決まりがある!」
「ないし、ボクそういう思考は苦手だし」
「くそぉ~この分からず屋の天才堅物真面目君ヤローめ!」
「いちいち威力ないよねブームって」
「うるせぇ!」
彼女は言葉通り、ボクの前から姿を消した。いや、その言い方では語弊が生じてしまうが、きっとボクを避けて姿を見られないようにしているのだろう。心底ご苦労なことだが、そんな言葉を間に受ける事すらボクにとって彼女との友好度は0%以下であるということを物語っている。
「だいたいあの子の何が気に食わないんだよ~いい子じゃん!」
「は?どこがだよ、人の気も知れないでテキトーなことばっか吐き散らして、自分の意見を批判されたらベソをかくっていう生態のどこがいい子なんだよ」
「なんだお前?ミアナとそんなに仲良い事してたのか?」
「今の話のどこに仲良い要素があった!?それにブーム!お前がミアナにボクのことを教えたからこんなことになったんだろ!?」
「え、いや…え~っと」
「どーせ本が読みたいだのなんだの言ったミアナに対して『オレの弟、いやここはあえて子分とでも言っておこう…そいつなら本のスペシャリストだぜぇ』とか言ったんだろ!?」
「な、何故分かった!」
本を読みたいなら、自分で勉強すれば良い話なのだ。それなのに…どうして人を頼ってくるんだよ。なんで頼る人がいるんだよ…ボクには……
「違うだろヤドク…」
「……なんだよ」
「お前さっき言ったよな、人の気も知れないでテキトーとか、意見を批判されて泣くとか…そんな小さな事で人を嫌うような奴じゃ…ねぇだろ?ヤドクは」
「…ボクの何を知ってそんなこと言ってんだよ」
「何も知らねぇよバーカ、第一、ヤドクだってオレのこと何一つ知んねぇだろ?」
「……」
「ま、お前の気持ちも分からなくはないぞ~確かに、ミアナとお前は確実にタイプが違う。でも、それを受け入れられずに自分と重ねてしまうからミアナを毛嫌いするんじゃねぇの?」
「か、重ねてなんて…」
「…誰よりも嫌いな自分と…な……」
ブームの瞳が今まで見たことのないような色を帯びる、まるで他人の心の中を読んでいるかのような…そんな眼光がヤドクの視線と絡み合った。
字も読めないくせのブームに言われる筋合いは無いと否定してやりたいが、残念ながらブームの言っていることは全て真実だ。
「ま、ミアナも字が読みたい理由、本読む事以外にあるみたいだしさ~ちょっとは構ってあげて、綴りの一つや二つぐらい教えてやっても良いんじゃねぇの?」
「……」
「あ、まさか~天才ヤドク君は人に教えるの苦手でちゅか~?」
そうか…全部、簡単なことなのだ。
「馬鹿言え馬鹿ブーム、相手が人間以外かブームじゃなきゃ、誰だってボクは完璧に教えられる、明日にはミアナは小説でも書いてるんじゃないか?」
「……た、頼もしいなぁ」
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