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ブーム君とヤドク君の秘密
15.双子と探し物
しおりを挟む杉林を駆けて、何処となく走ってみたが、どうやら彼女はそう簡単にひょいひょい姿を現してくれないようだ。
そういえば、視界に入らないでくれ的発言をしてしまったような気がする。もしかすると、彼女は今もまだボクから姿を隠しているのかもしれない。
「面倒だなぁ」
運動慣れしてないヤドクにとって、ほんの数メートル走っただけでも息切れものだ。足はガクガクと震え、空模様は怪しくなってきた。
気づけば孤児院が随分遠くに見え、ここからまた戻るとなると億劫だ。
確かに、彼女の帰りを孤児院で待つというのも一つの手だったが、何故か体はうずうずして、いてもたってもいられずに外へ飛び出してしまった。
こうなったら、彼女を全力で探し出さなくてはならない。
パンッパパンッッ
短い銃声…いいや、銃声というよりは少し軽い音が林の奥に鳴り響いた。反射的に影に身を隠したが、どうやらその行動は正解だったようだ。
その音が聞こえ、間も無く人の気配が近づいてきた。ヤドクの隠れた木から何メートルか離れたあたりの開けた場所にぞろぞろと集まってきているようだ。
草木を踏みつける音は、どれも重たく、離れたここまで地を伝って振動が届いてきた。
ヤドクは少しだけ木の陰から顔を出し、その様子を伺った。
大柄な男が四、五人…手には重そうな斧を持ち、中にはその斧を何本を腰に垂らして歩いている者もいた。
同じ人間かよ…
ヤドクはふと自身の細身を見下ろし、ため息をつく。
「んじゃ、今日はこの辺で休憩だ」
「オッス」
彼らが一体何者であるかはなんとなく想像できた。この杉林の木を切り、収入源としている…いわば「木こり」という奴らだ。力だけが取り柄の、脳みそが筋肉で出来た男共…ヤドクとは正反対だ。
彼らはここで休憩を取るようで、次々に寝袋を敷き始めた。そのうちの一人がテントを張り、二人が火を起こし始める。
空を見上げるも、さっきと変わらず怪しい雲行き…
ヤドクが孤児院へ戻ろうと肩を落とした時、ふと向こうの木と木の間に人影が走った。確かに映った金髪の色にヤドクは素早く反応し、今までにないぐらいの速度でその人影を追いかけた。
巧みに木と木の間をすり抜け、滑るように走っていく金髪の輝きにヤドクは手を伸ばす。指先が届くほんの僅かな距離で、岩につまづき顔面から盛大に地面にダイブしてしまった。
「痛ッ…」
打った膝をかかえ、額についた泥を払い顔を上げる。
「だ、大丈夫?」
目の前に、探し求めていた少女の姿があった。不安そうな、でも少しだけ優しい表情の彼女は、恐る恐るヤドクに手を差し出した。一瞬、その手を振り払ってやろうかと思うが、何故かその時ブームの言葉を思い出し、少しだけ躊躇った後、少女の白い手をとった。
「……あ、ありがと…ミアナ……」
少女は驚いたように目を大きく見開くも、次に満面の笑みを顔中に浮かべた。その笑顔に何故か体が腫れぼったくなったような気がし、脈拍が上がったようにも感じた。
ピトッ
頬に当たって弾けたその冷たい感触に、ヤドクは空を見上げた。灰色の雲が渦を巻いているようで、ただそこに広がっていた。
「……どっかで…雨宿りでもしよっか」
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