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男子の引率教師
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狐太郎はあんぐりと口を開けた。狐太郎たち男子の引率する教師を見たからだ。狐太郎たちの担当は、あやかし学園の校長。さわらび童子だった。
今日のさわらび童子はいつもの着物姿ではなく、グリーンのトレーナーに、デニムのオーバーオールを着ていて、とても可愛らしかった。さわらび童子は狐太郎たちの顔から何かを悟ったのか、苦笑しながら言った。
「お主らの言いたい事もわかる。じゃがな、お主らのグループで一番心配なのは狼牙が迷子にならない事じゃ。わしなら狼牙の側にいても不審がられないじゃろ?」
確かにそうだ。狐太郎が手をつないでいる狼牙は、都会が物珍しくて、常にキョロキョロして、いっときも目が離せない状態だ。今日の狼牙はさすがにパーカー一枚というわけにもいかないので、水色のボーダーの長Tシャツに、グリーンのキュロット。こん色のシューズをはかせている。
狐太郎は狼牙の目を見て言った。
「狼牙、今日は校長とずっと一緒にいるんだぞ?」
「おう!俺こーちょーと一緒!」
狼牙は狐太郎の手を離れ、さわらび童子を抱っこして頬ずりをした。狼牙は小さい子供が大好きなのだ。
さわらび童子は苦笑しながら言った。
「さぁ、これから展望台に行くためにエレベーターに乗るぞ?皆ついてくるのじゃ」
狐太郎はうなずいて、クラスの男子たちと共に、エレベーターに乗った。二百八十メートルの高さにある展望台には、あっと言う間についた。エレベーターを降りると、そこは別世界だった。
大きな窓かはら大パノラマが広がっていたのだ。狐太郎はこれまで観光地という場所に行った事がなかった。
幼い頃は明神家の屋敷を出た事がなかった。小学校にあがっても、行動は厳しく制限されていた。
狐太郎は生まれて初めて見た壮大な景色に、我を忘れた。狐太郎の後ろにいた山彦が鼻で笑って言った。
「へっ、人間てのはやたらと高いところが好きな奴らだ。この一面のガラスを破壊してやったら、きっと皆騒ぎ出すぜ?」
山彦の不謹慎な発言に、狐太郎は顔をしかめた。狐太郎の気持ちに気づいた悟が苦笑した。つまり、山彦は口だけなのだ。本気で無関係な人間を傷つけたりしようとはしていないのだ。
山彦は背が低くて景色がよく見えない狼牙を抱き上げていた。さわらび童子の心を読んだ悟も、さわらび童子を抱き上げて下を見せていた。
狐太郎はそんな山彦の姿を見ながらぼんやり考えた。山彦は、狐太郎には当たりが強いが、それ以外の者たちには親切な少年だ。
もし狐太郎が陰陽師の家系などではなく、ただの半妖だったなら、山彦は普通に接してくれたのだろうか。狐太郎はそこまで考えて苦笑した。
考えても仕方ない事だ。狐太郎は陰陽師の家に生まれた半妖。それは変える事のできない事実だった。
今日のさわらび童子はいつもの着物姿ではなく、グリーンのトレーナーに、デニムのオーバーオールを着ていて、とても可愛らしかった。さわらび童子は狐太郎たちの顔から何かを悟ったのか、苦笑しながら言った。
「お主らの言いたい事もわかる。じゃがな、お主らのグループで一番心配なのは狼牙が迷子にならない事じゃ。わしなら狼牙の側にいても不審がられないじゃろ?」
確かにそうだ。狐太郎が手をつないでいる狼牙は、都会が物珍しくて、常にキョロキョロして、いっときも目が離せない状態だ。今日の狼牙はさすがにパーカー一枚というわけにもいかないので、水色のボーダーの長Tシャツに、グリーンのキュロット。こん色のシューズをはかせている。
狐太郎は狼牙の目を見て言った。
「狼牙、今日は校長とずっと一緒にいるんだぞ?」
「おう!俺こーちょーと一緒!」
狼牙は狐太郎の手を離れ、さわらび童子を抱っこして頬ずりをした。狼牙は小さい子供が大好きなのだ。
さわらび童子は苦笑しながら言った。
「さぁ、これから展望台に行くためにエレベーターに乗るぞ?皆ついてくるのじゃ」
狐太郎はうなずいて、クラスの男子たちと共に、エレベーターに乗った。二百八十メートルの高さにある展望台には、あっと言う間についた。エレベーターを降りると、そこは別世界だった。
大きな窓かはら大パノラマが広がっていたのだ。狐太郎はこれまで観光地という場所に行った事がなかった。
幼い頃は明神家の屋敷を出た事がなかった。小学校にあがっても、行動は厳しく制限されていた。
狐太郎は生まれて初めて見た壮大な景色に、我を忘れた。狐太郎の後ろにいた山彦が鼻で笑って言った。
「へっ、人間てのはやたらと高いところが好きな奴らだ。この一面のガラスを破壊してやったら、きっと皆騒ぎ出すぜ?」
山彦の不謹慎な発言に、狐太郎は顔をしかめた。狐太郎の気持ちに気づいた悟が苦笑した。つまり、山彦は口だけなのだ。本気で無関係な人間を傷つけたりしようとはしていないのだ。
山彦は背が低くて景色がよく見えない狼牙を抱き上げていた。さわらび童子の心を読んだ悟も、さわらび童子を抱き上げて下を見せていた。
狐太郎はそんな山彦の姿を見ながらぼんやり考えた。山彦は、狐太郎には当たりが強いが、それ以外の者たちには親切な少年だ。
もし狐太郎が陰陽師の家系などではなく、ただの半妖だったなら、山彦は普通に接してくれたのだろうか。狐太郎はそこまで考えて苦笑した。
考えても仕方ない事だ。狐太郎は陰陽師の家に生まれた半妖。それは変える事のできない事実だった。
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