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レオンとアルスの危機
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レオンはアルスを抱えながは、必死で走った。だが、小さなアルスを抱っこした十五歳の子供のレオンが、現役の冒険者に足でかなうはずがなかった。
レオンたちと、背後の冒険者たちの距離はグングン縮まっていく。しびれをきらした魔法使いが、レオンたちに向けて火のかたまりを何個も投げつけた。レオンはジグザグに走って、何とか火のかたまりを回避していたが、足がもつれて転倒してしまった。
このままでは、抱っこしているアルスが地面に叩きつけられてしまう。レオンはとっさの判断で、身体を斜めにひねり、自身の右肩から地面に落ちた。
倒れたレオンたちに向かって、冒険者たちが剣を振り上げて、駆け寄って来る。レオンは無意識に自身の植物魔法を発動した。
レオンの足元から植物の芽が生え出し、その芽はグングン大きくなり、巨大なクスノ木に成長した。レオンがアルスを抱っこしながら、木の下を見下ろすと、三人の冒険者たちが降りてこいと大声で叫んでいる。
腕の中のアルスは、高い所が嬉しいのか、ごきげんで言った。
「籠城作戦とは良い判断だのレオン。このままオレ様の腹が空くまでここにいよう」
「うん、アル。どのくらいでお腹空きそう?」
「そうじゃのう。夕方くらいになれば空くかの」
それではだいぶ時間がかかってしまう。レオンとアルスの次にも試験を受けようとしている受験生がいるのだ。レオンはアルスの目を見て言った。
「ねぇ、アル。僕、考えたんだけど。今回の冒険者試験は棄権しよう。それでさ、また来年試験を受けなおそうよ?」
それまでご機嫌だったアルスの顔が青ざめた。アルスは泣きそうな顔を無理矢理厳しくして言った。
「それはダメじゃ!レオンは冒険者になって、父者を探す!オレ様はグラディウスを探すのじゃ!よし、無理矢理にでもクッキーを食べて元の姿に戻る!あれっ?クッキーが無い」
アルスはオロオロしながら自分の手のひらを見つめていた。どうやらレオンが走って逃げている最中、クッキーを落としてしまったらしい。レオンは優しく諭すような声でアルスに言った。
「アル。ねっ?来年がんばろう?」
アルスは大きな瞳に涙をいっぱいにためながら、口をへの字にしていた。レオンは軽くため息をつきながら、自身の魔法をゆっくり解除した。
クスノ木はスルスルと小さくなり、レオンたちは地上に戻った。レオンたちの目の前には、困惑顔の三人の冒険者たちがいた。レオンはアルスを抱いたままペコリと頭を下げて言った。
「僕たち、棄権します」
それを聞いた審判がレオンに駆け寄って言った。
「君たち、まだ何もしていないじゃないか?いいのかい?棄権で」
「はい。僕の魔法は戦闘向きではないので」
「そうかい?あんな巨大な木を一瞬で育ててしまうなんて、すごい魔法だと思うけどねぇ」
レオンの答えに、審判は困った顔をしながら考え込んでいると、闘技場に闖入者が現れた。それはルーカスとシルフィ、ラウラとフレアだった。彼らはせっついて審判に言った。
「審判さん!ちょっと待ってくれませんか?!レオンとアルスはすごい奴らなんです!」
「そうなんです!もう少し時間をくれれば、きっと冒険者の人たちに勝つ事ができます!」
レオンは驚いてルーカスとラウラを止めた。
「ちょっと!ルーカス!ラウラ!何言ってるの!僕たちは棄権するんだ」
「「それはダメ!」」「だ!」「よ!」
ルーカスとラウラの声が見事に重なった。
レオンたちと、背後の冒険者たちの距離はグングン縮まっていく。しびれをきらした魔法使いが、レオンたちに向けて火のかたまりを何個も投げつけた。レオンはジグザグに走って、何とか火のかたまりを回避していたが、足がもつれて転倒してしまった。
このままでは、抱っこしているアルスが地面に叩きつけられてしまう。レオンはとっさの判断で、身体を斜めにひねり、自身の右肩から地面に落ちた。
倒れたレオンたちに向かって、冒険者たちが剣を振り上げて、駆け寄って来る。レオンは無意識に自身の植物魔法を発動した。
レオンの足元から植物の芽が生え出し、その芽はグングン大きくなり、巨大なクスノ木に成長した。レオンがアルスを抱っこしながら、木の下を見下ろすと、三人の冒険者たちが降りてこいと大声で叫んでいる。
腕の中のアルスは、高い所が嬉しいのか、ごきげんで言った。
「籠城作戦とは良い判断だのレオン。このままオレ様の腹が空くまでここにいよう」
「うん、アル。どのくらいでお腹空きそう?」
「そうじゃのう。夕方くらいになれば空くかの」
それではだいぶ時間がかかってしまう。レオンとアルスの次にも試験を受けようとしている受験生がいるのだ。レオンはアルスの目を見て言った。
「ねぇ、アル。僕、考えたんだけど。今回の冒険者試験は棄権しよう。それでさ、また来年試験を受けなおそうよ?」
それまでご機嫌だったアルスの顔が青ざめた。アルスは泣きそうな顔を無理矢理厳しくして言った。
「それはダメじゃ!レオンは冒険者になって、父者を探す!オレ様はグラディウスを探すのじゃ!よし、無理矢理にでもクッキーを食べて元の姿に戻る!あれっ?クッキーが無い」
アルスはオロオロしながら自分の手のひらを見つめていた。どうやらレオンが走って逃げている最中、クッキーを落としてしまったらしい。レオンは優しく諭すような声でアルスに言った。
「アル。ねっ?来年がんばろう?」
アルスは大きな瞳に涙をいっぱいにためながら、口をへの字にしていた。レオンは軽くため息をつきながら、自身の魔法をゆっくり解除した。
クスノ木はスルスルと小さくなり、レオンたちは地上に戻った。レオンたちの目の前には、困惑顔の三人の冒険者たちがいた。レオンはアルスを抱いたままペコリと頭を下げて言った。
「僕たち、棄権します」
それを聞いた審判がレオンに駆け寄って言った。
「君たち、まだ何もしていないじゃないか?いいのかい?棄権で」
「はい。僕の魔法は戦闘向きではないので」
「そうかい?あんな巨大な木を一瞬で育ててしまうなんて、すごい魔法だと思うけどねぇ」
レオンの答えに、審判は困った顔をしながら考え込んでいると、闘技場に闖入者が現れた。それはルーカスとシルフィ、ラウラとフレアだった。彼らはせっついて審判に言った。
「審判さん!ちょっと待ってくれませんか?!レオンとアルスはすごい奴らなんです!」
「そうなんです!もう少し時間をくれれば、きっと冒険者の人たちに勝つ事ができます!」
レオンは驚いてルーカスとラウラを止めた。
「ちょっと!ルーカス!ラウラ!何言ってるの!僕たちは棄権するんだ」
「「それはダメ!」」「だ!」「よ!」
ルーカスとラウラの声が見事に重なった。
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