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イエーリ団の親分

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 レオンはドーグたちの事が心配になり、すぐさま彼らの後を追いたかったが、アルスはレオンがぐるぐる巻きにして伸びている盗賊に話しかけた。

「おい、お前。起きているのだろ?タヌキ寝入りなどせずに質問に答えろ。答えなければこのまま火魔法で燃やす」

 アルスのぶっそうな発言に、タヌキ寝入りを決めこんでいた盗賊が叫んだ。

「まっ、待ってくれ!何でも話す!命だけは助けてくれ!」
「そうそう。素直が一番じゃ。この土人形の魔法は誰がやったのじゃ?」
「親分だよ」
「ほう、貴様の親分はそうとうな魔法使いじゃの」
「親分は魔法使いなんかじゃねぇ。ただの盗賊の統領だ」
「ならば何故このような高等魔法が使えたのじゃ?」
「知らねぇよ。いつの間にかすげぇ魔法が使えるようになってたんだよ。何でも、フードをかぶったジジィから力をもらったって」

 盗賊の言葉に、アルスは考えるそぶりをした。どうやらこの盗賊からはこれ以上、情報を引き出す事はできないようだ。逃してくれとこん願する盗賊を、アルスはカミナリ魔法で気絶させてから言った。

「どうやらイエーリ団の統領は、やっかいな魔法を使う者のようだ。早くドーグたちの所へ行かねばならん。ゴメス、ドーグたちはどこへ向かったと思う?」

 いまだにドンに肩を借りて立っているゴメスが答えた。

「この山はイエーリ団の庭のようなもんだ。俺たちはそこに迷い込んだネズミだ。逃げ隠れしても、すぐに見つかって殺される。きっとドーグさんは隠れる場所のない平地に出て、イエーリ団と真っ向勝負をするだろう」
「うむ。あいわかった」

 アルスはうなずくと、レオンに言った。

「レオン、オレ様を抱っこして高い木を生やすのじゃ」

 レオンはアルスの意図に気づいてうなづいた。アルスを抱っこして、植物魔法を発動させる。レオンの足元から生え出した木は、グングン大きくなり、高い杉の木になった。

 レオンはアルスを抱っこしたまま辺りを見回すと、森一帯が見渡せた。早くドーグたちのいる場所を探さなければいけない。レオンが辺りをキョロキョロしていると、アルスが叫んだ。

「レオン!」

 レオンがアルスの小さな人差し指がさす方向を見ると、確かに森が開けた平地が見えた。レオンたちはその場所に目標を定めて進んだ。

 レオンたちがやっとの事で目的に着くと、平地には誰もいなかった。ここではなかったのかと落胆していると、レオンたちに声をかける者がいた。

「ゴメス!生きていたのか?!」

 仲間の冒険者がゴメスに駆け寄って来た。

「ああ、ドンのバカとアルスの治癒魔法で死に損なった」

 仲間の冒険者は、良かったと言って、涙ながらにゴメスの肩を抱いた。レオンは冒険者たちを誤解していたようだ。冒険者たちは、ゴメスを見殺しにしようとしたわけではないのだ。断腸の思いでその場に残したのだ。
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