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メイドのレオン

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「キャァ!レオン可愛い!」
「本当だ。レオン、とっても可愛いぞ」

 キャァキャァと嬉しそうにはしゃぐガブリエルとマーガレットに、レオンは引きつった笑顔を浮かべた。結局レオンは、メイドドレスの着方がわからず、ガブリエルとマーガレットのお人形よろしく着せ替えられてしまった。ネイビーのシンプルなドレスに、フリルのついたエプロンドレスを着る。頭にはご丁寧にヘッドドレスがのっかっている。

 レオンは、ガブリエルとマーガレットに、鏡を見てみたらいいとうながされたが、断固拒否した。女の格好をした自分の姿など見てしまったら、ショックで失神してしまいそうだ。

 サスペンダーのズボンをはいた、下男の格好をしたアルスが、ゲラゲラわらっている。

「けっさくじゃのう、レオン。ルーカスとシルフィに見せたいくらいじゃ!きっと大爆笑間違いなしじゃ!」
「ちょっと!ひどいよ、アル!」

 レオンとアルスが騒いでいると、ドアをノックする音が聞こえた。レオンはにわかに緊張する。自分たちがこの屋敷に潜入したのは、他の人々に知られてはならないからだ。

 驚いているレオンに、マーガレットは笑って心配いらないと答え、ドアを開いた。中に入って来たのは、執事の格好をした青年と中年の男性だった。二人共洗練された物腰だった。

 扉を閉めると、マーガレットが彼らを紹介した。

「彼らもこの作戦の仲間よ?彼はポール。そして彼はジャンよ」

 中年の男性はポール。若い青年はジャンといった。二人とも冒険者で、ポールは魔法使い。ジャンは剣士なのだそうだ。彼らの見た目は、冒険者の荒々しさがなかった。

 レオンたちはこれから屋敷の使用人として、仕事をしなければいけない。魔法使いの殺し屋マフサが伯爵を殺害しに来るまで。

 メイドになったレオンの朝は早かった。ぐずるアルスをなだめすかして起こし、朝の身支度をする。ようやくドレスを着るのにも慣れた。

 レオンの朝は、主人たちの朝の身支度の準備から始まる。ガブリエルとレオンはマーガレット嬢の担当なので、洗顔用の湯をわかし、ワゴンに乗せてマーガレットの部屋まで持って行く。
 
 男のレオンが、女の子の朝の身支度の手伝いをしなければならないのは、いたたまれない。だがおかしなメイドとして浮いてしまわないよう、沈黙を貫く。

 マーガレットの身支度が終われば、朝食の用意。それが終われば洗濯、掃除。目の回るような忙しさだ。

 いつしかレオンは、何のためにここにいるのか忘れかけてしまった。



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