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第4話 赤いコートの気配
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いつしか先程までの雪は止み、新宿二丁目に降り積もったその綿化粧は静寂の中、色めくネオンに照らされ、様々な色に染められていた。
この昭和チックな喫茶店のカウンターでは、眠たそうに、初老のマスターが葉巻をふかしている。
俺は壁に掛かる古ぼけた鳩時計に目をやった。
時刻は20時を回ったところである。
「今日は駄目なのかなぁ……」
ため息混じりの諦め気分で窓の外に視線を向ける。
「あっ!」
昨日の路地裏に赤いコートを見つけ、思わず声が漏れた。
「マッキー!?」
カウンターでノンビリしていたマスターに、半ば強引に千円札を握らせ、おつりも貰わず、急いで店の外に飛び出した。
「ちょっと、君、お釣りーっ!」
「また今度来まーす!」
俺は振り向かず一目散に路地裏に向かう。
「マッキー!」
赤いコートの人物がゆっくりと振り返った。
心臓が口から出てきそうなぐらい気持ちが高鳴る。
俺はゴクリとつばを飲み込んだ。
「なにか?」
全くの別人……
「申し訳ありません。
人違いでした」
俺は頭を下げたまま、先程までの雪が残る地面をずっと見つめ、動けなかった。
チクリッ
胸の奥が痛い。
「やっと見つけたと思ったのにな……」
そっと空を見上げる。
一瞬雲の切れ間から月が優しく光を照らした。
――そう言えば、12月の満月はコールドムーンって言うんだっけ?
「月が綺麗ですね。
なんてね……
夏目漱石かってんだよ」
そっとアスファルトに向かって呟く。
「なんて答えてほしいのかしら?」
振り向くと、そこには月の光に照らされた真っ赤な天使が立っていた。
ずっと探していた笑顔。
俺は冷たい大気を力一杯吸い込んだ。
「マッキー!
ずっと探してたんだよ!」
「あなたの言う通りまた会えたわね」
マッキーは優しい笑顔をこちらに向ける。
昨日と同じ赤いコート。
首元を少し押さえながらずっとこちらを見つめている。
「もう、やあねぇ、何驚いてるのよ。
昨日あなたが、また会えるって言ってたんじゃないのさ」
白い息が大気に舞う。
「来るって……わかってたの?」
わかってたなら、もう少し早くに現れてくれてもいいじゃないか……
俺は拗ねたような口調でわざと頬を膨らませ尋ねてみた。
「そんなのわかるわけないじゃない。
でもね……」
「……何?」
「なんとなく、ここに来れば、あなたに会える気がしたの」
「それって、マッキーも俺に会いたかったってこと?」
「さあ、どうでしょうね?」
マッキーはイタズラっ子のように意味深な顔でにニヤリ口角をあげた。
「ずるいよ、マッキー」
「「アハハハハッ」」
俺たちは顔を見合わせて大きく笑った。
「ねえ、開店まで少し時間があるの。
少し私のお店に来る?」
「えっ!?
店に?
いいの?」
俺は驚いて思わず聞き返してしまった。
「今日はね……」
――心の準備がなんとなくできたって言うかさ」
「繊細なもんなんだね」
「あなたほどじゃないかも知れないけどね」
なんとなく心を見透かされているようで、しばらく沈黙していると、マッキーが路地裏の奥へと歩きだした。
「さあ、こっちやで。
着いてきいや」
「待ってよマッキー」
俺は急いでマッキーの背中を追った。
追いつけば、すぐに触れられそうな背中。
それは、近くて遠い、遠くて近い背中だった。
「はよおいでーな。
置いてくでー」
いつしか空からは再び雪が降り始めていた。
白い世界の中、赤い目印が俺の先を歩く。
まるで人生の道標のように。
この昭和チックな喫茶店のカウンターでは、眠たそうに、初老のマスターが葉巻をふかしている。
俺は壁に掛かる古ぼけた鳩時計に目をやった。
時刻は20時を回ったところである。
「今日は駄目なのかなぁ……」
ため息混じりの諦め気分で窓の外に視線を向ける。
「あっ!」
昨日の路地裏に赤いコートを見つけ、思わず声が漏れた。
「マッキー!?」
カウンターでノンビリしていたマスターに、半ば強引に千円札を握らせ、おつりも貰わず、急いで店の外に飛び出した。
「ちょっと、君、お釣りーっ!」
「また今度来まーす!」
俺は振り向かず一目散に路地裏に向かう。
「マッキー!」
赤いコートの人物がゆっくりと振り返った。
心臓が口から出てきそうなぐらい気持ちが高鳴る。
俺はゴクリとつばを飲み込んだ。
「なにか?」
全くの別人……
「申し訳ありません。
人違いでした」
俺は頭を下げたまま、先程までの雪が残る地面をずっと見つめ、動けなかった。
チクリッ
胸の奥が痛い。
「やっと見つけたと思ったのにな……」
そっと空を見上げる。
一瞬雲の切れ間から月が優しく光を照らした。
――そう言えば、12月の満月はコールドムーンって言うんだっけ?
「月が綺麗ですね。
なんてね……
夏目漱石かってんだよ」
そっとアスファルトに向かって呟く。
「なんて答えてほしいのかしら?」
振り向くと、そこには月の光に照らされた真っ赤な天使が立っていた。
ずっと探していた笑顔。
俺は冷たい大気を力一杯吸い込んだ。
「マッキー!
ずっと探してたんだよ!」
「あなたの言う通りまた会えたわね」
マッキーは優しい笑顔をこちらに向ける。
昨日と同じ赤いコート。
首元を少し押さえながらずっとこちらを見つめている。
「もう、やあねぇ、何驚いてるのよ。
昨日あなたが、また会えるって言ってたんじゃないのさ」
白い息が大気に舞う。
「来るって……わかってたの?」
わかってたなら、もう少し早くに現れてくれてもいいじゃないか……
俺は拗ねたような口調でわざと頬を膨らませ尋ねてみた。
「そんなのわかるわけないじゃない。
でもね……」
「……何?」
「なんとなく、ここに来れば、あなたに会える気がしたの」
「それって、マッキーも俺に会いたかったってこと?」
「さあ、どうでしょうね?」
マッキーはイタズラっ子のように意味深な顔でにニヤリ口角をあげた。
「ずるいよ、マッキー」
「「アハハハハッ」」
俺たちは顔を見合わせて大きく笑った。
「ねえ、開店まで少し時間があるの。
少し私のお店に来る?」
「えっ!?
店に?
いいの?」
俺は驚いて思わず聞き返してしまった。
「今日はね……」
――心の準備がなんとなくできたって言うかさ」
「繊細なもんなんだね」
「あなたほどじゃないかも知れないけどね」
なんとなく心を見透かされているようで、しばらく沈黙していると、マッキーが路地裏の奥へと歩きだした。
「さあ、こっちやで。
着いてきいや」
「待ってよマッキー」
俺は急いでマッキーの背中を追った。
追いつけば、すぐに触れられそうな背中。
それは、近くて遠い、遠くて近い背中だった。
「はよおいでーな。
置いてくでー」
いつしか空からは再び雪が降り始めていた。
白い世界の中、赤い目印が俺の先を歩く。
まるで人生の道標のように。
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