上 下
221 / 254
連載

376、レジスタンス

しおりを挟む
(でも、それならリカルド、あの男は一体何なの? あの男も精霊王の血を引いていると言っていたわ)

 エリスのその疑問。
 エイジは呟くように言った。

「公爵たちが、あの剣を手に入れたがっているのは分かった。リカルドも目的は同じなのか?」

 ラエサルは静かに口を開いた。

「分からん。だが、あの男は自らを精霊王の血を引く者だと言っていた。だとすれば、求める物は一緒だと考えた方がいいだろう」

(あの男のことだ、それだけが目的だとも思えないが)

 とラエサルは思う。
 少なくとも、公爵やアンリーゼとは別の動きをしている男だ。
 仲間であればアンリーゼがその命を狙っているのも解せない話である。
 それに……とラエサルは思った。

(なぜ奴は俺たちを殺さない? あの門が生じた時、奴にはその機会が十分にあったはずだ)

 殺さずに生かしている理由があるのか。
 だとしたらそれは一体なんだ? どんな理由があるというだ、と。
 ラエサルはエリスを見つめる。
 トラスフィナ王家……いやローゼディア王家の血を引く少女。
 エイジはラエサルに尋ねた。

「ラエサルさん、どうしますか? 隠れ家はリカルドに知られている」

 エリスも頷く。

「ええ、危険だわ! 他の場所に移りましょう!」

 それを聞いてラエサルは頷いた。

「ああ、直ぐに別の場所に移るぞ」

 この場所さえ探り当てた男に対して、それが有効なのかは分からないがこのままここに居るよりはいいだろう。
 ラエサルはそう判断する。
 直ぐに指令室に戻りそのことを皆に話した。
 キーラやアンジェも同意する。

「そうね、移動した方がいいわね。ジーナたちが来るのなら私の蜘蛛を一匹置いていくわ。ジーナなら直ぐに気が付くはず」

「流石ねキーラ」

 こんな時はやはり頼りになる、とアンジェはキーラの指から放たれた黄金の蜘蛛を眺めていた。
 リアナとオリビアは、先程の風呂のことを思い出して少し残念そうな顔をした。
 だが、そんなことを言っている場合ではないことも自覚している。

「行きましょう」

「でも……ララリシアは?」

 リアナの言葉に、ラエサルはララリシアを見つめた。

(確かにな。だがエリスの話によると、リカルドは女王ララリシアの魂の欠片とやらが目的だったはずだ。ならばもう危険はあるまい)

 ところが、ララシリアはラエサルに言った。

「私も行くわ!」

「ララリシア。だが、お前ここを離れることが出来るのか?」

 人工生命体としての彼女の仕事は、ここの管理者のはずだ。
 ラエサルの言葉に、ララリシアはモニターを指さした。
 エイジはそれを見て思わず呟いた。

「これは……あの歌の時に流れていたデータか?」

 真実の門が開かれた時、同時にまるで何かがダウンロードされるかのように画面に次々と現れた文字データ。
 女王ララリシアの魂は消えても、そのデータは残っていたのだろう。
 モニターには次第に、広大な地下都市の地図が浮かび上がっていく。
 ララリシアはラエサルを見つめながら言った。

「あの歌が聞こえた後のことは良く思い出せないわ。でも私の中に流れ込んできた知識があるの。これはかつてレジスタンスと呼ばれていた人たちの施設。感じるの、まだこことリンクしているものもあるって。私が一緒に行けば今でも動かせるはずよ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

令嬢はうたた寝中

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:3,094

失恋の特効薬

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:47

龍帝陛下の身代わり花嫁

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:270

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:887pt お気に入り:307

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,219pt お気に入り:93

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。