私、あなた達の味方ではないから。

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8.sideジージル

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 そんなことがあってからもミルー様と特に関わることもなくそれから半年が過ぎた頃、両親が死んだことでザルコーノ家に引き取られた俺に待っていたものは予想通りというかなんというか…


バシンッッ

『ッっ』


『貴様!!あいつの息子だからとこの屋敷においてやっているのだぞ!!もっと敬意をもって私達に尽くさないか!!』


『貴方みたいな出来損ないを育ててやっているというのにどうして私達にこんな不快な思いをさせるのかしら!?』


『………』


 怒鳴り声と金切り声が耳に障る。


 別にお前らなんかに引き取って欲しいだなんて頼んだ覚えなんかない。勝手に話に割って入ってきて強引に俺を引き取ったのは子爵夫妻の方だ。なのに自分たちの視界に入っただ俺がいるせいで空気が悪いだのなんだかんだと理由をつけて勝手に不快な気分になっている方が悪い。そんなに言うのなら引き取らなければよかったんだ。いや、今からでもいいからここから解放して欲しい。


『……おい。なんだその目つきは何か文句でもあるのかっ!!』


 つい状況の理不尽さに子爵を睨みつけてしまっていると子爵が大きく手を振り上げた。


 …これに当たると痛いんだよな。


 そんな感情を抱きつつも避けることも許されないため、振り下ろされようとしている手を見ていると俺に当たるギリギリの所でその手が止まった。


『……どうしたんだミルー?』


 よく見るとミルー様が子爵の足元にしがみついていた。


『お、お父様!そんな奴放っておきましょう!私ケーキが食べたいわ。一緒に食べましょう?』


『おぉ、おぉそうか?だがな今私は躾中なんだ。こういう生意気な奴には早く自分の立場というものをわからせてやらなければいけない。ミルーもよく覚えておきなさい。我らのような至高の属性の持ち主は此奴らのような出来損ないを正す義務があるのだ』


 …だからどうしてそこまで土属性を崇拝しているのか理解ができない。属性の中で土属性を持っている人間は1番多い。それに比べて水や火の上位互換である氷や炎、他にも光や闇といった属性を持っている人間は少なくまだそっちの方でここまでの選民意識を持っているのならわからなくもないが土属性でここまで威張る意味が全くわからない。世間ではありふれた属性すぎて「ふーん」で終わる属性なのに。


『そ、それでもこれ以上こんな奴を叩いてしまったらお父様が手を痛めてしまうわ!だからもう行きましょう?ね!お母様も!』


『おぉそうかミルーは私の心配をしてくれているのか。ありがとう』


『本当にミルーは心の優しいいい子ね』


 さっきまで鬼の形相で俺を見ていたくせにミルー様を見る時は慈愛に満ちた親の顔をしている。そのギャップに恐怖と嫌悪が湧き上がる。


『ふんっ!ミルーに感謝するんだな!』


『ッぐっ』


 そして最後に子爵は俺を蹴り倒すとミルー様と夫人を連れてこの場から立ち去った。


 …くそっ痛い…油断してた。


『…ジージル大丈夫?』


『…はい。大丈夫です』


 蹴られた箇所を手で押さえていると物陰に隠れていたルルー様が出てきて俺に心配そうに近づいてくる。


『…はい大丈夫です。…でもまたミルー様に助けられました』


 ミルー様は両親と同じく俺達を見下し意地悪もよくしてくる。だが、だからと言って完全に良心がないわけではないようで子爵夫妻が酷い暴力を振るいそうな時にはさっきのようになんだかんだ理由をつけて助けてくれる。


 …これを知っているからこそルルー様はミルー様がいい子だと言っていたのか。


『…ごめんなさい。何もできなくて』


『それは仕方がありませんよ』


 申し訳なさそうに謝るルルー様に微笑む。もしあそこにルルー様が出てくれば事態はさらに悪化するだろう。それは今までの経験からもわかることだ。


『…あのね。ジージル』


『はい。何ですか?』


『最近ミルーの様子がおかしいような気がするの』


『おかしい?…確かにそうですね』


 最近のミルー様は何かに追われているように苦手な勉強に取り組み本を読み漁っていた。今までは勉強の時間になればなんだかんだと理由をつけて両親に甘えて逃げていたのに。それに俺達にも以前のように突っ掛からなくなってきてもいた。


『私はそれが気になって仕方がないの』


『…気持ちはわかりますがミルー様に理由を聞こうにも……』


『ええ。ミルーには常に両親がついているから声なんてかけられないわ』


 この家に来て初めて知ったことだがミルー様には常に子爵夫妻が張り付いている。見ているだけでも息が詰まりそうな光景になんど顔を顰めたことか。


『だから私が何とか両親の意識を逸らすからジージルにはミルーをどこかへ連れ出して話を聞いてあげて欲しいの』


『なっ!?そんなことをすればルルー様がっ!それにそれなら俺でもっ』


『いいえ。私ではミルーの力になれない。私は外にほとんど出たことがないから普通がわからない。でもあなたなら外の世界を知っている分きっとあなたの話はミルーのためになるわ』


『ルルー様…』


 ルルー様は聡いお方だ。ミルー様の悩みも大体の見当がついているのだろう。だからこそ俺がミルー様の話を聞くのに適任だと思っている。だけど…


『ふふ。私なら大丈夫よ。それに自分の妹のためですもの。これくらい平気だわ。だからお願いジージル。ミルーを…』


『……わかりました』


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