私、あなた達の味方ではないから。

タッター

文字の大きさ
9 / 15

9.sideジージル

しおりを挟む


 そこから数日後ルルー様が子爵夫妻の気を引いている間にミルー様を子爵夫妻の元から引き離し、人気のない場所へと連れ出した。


『ジージル?何するのよ!?お姉様が…』


『…ルルー様はたぶん大丈夫です。それよりミルー様に話があるんです』


『…私に?』

 
 俺の言葉に怪しげな視線を向けるミルー様。俺だってルルー様のことが心配だが、ルルー様に頼まれたから仕方がないんだ。


『はい。…最近のミルー様はどこか様子がおかしいですよね?ルルー様がそれをとても心配なさっているんです。何か理由があるのなら話してくれませんか?』


『……お姉様が?』


『はい』


『…お姉様が気になっているから話を聞こうとしているの?』


『はい。そうです』



 俺の言葉に何故か傷ついたような怒ったような表情になりながら、ミルー様は肩を落とした。


『…そうよね。別にあなたはどうとも思っていないわよね。…ほんと腹が立つわ』


『え?』


『…いえ、別に何でもないわよ。…ちょっと最近色々と悩むことがあって疲れていただけよ』


『その悩むこととは?』


『………』


『ミルー様。話して下さい』


 俯いてしまったミルー様に近づき少し屈んでミルー様の顔を覗き込む。するとミルー様の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちギョッとする。


『!?』


 まさかあの高飛車で俺達を見下して虐めてくるミルー様が俺の前で泣くとは思わずあたふたとしてしまう。


『ミ、ミルー様?』


『…ねぇジージル。私の家族って何か変なの?』


『え?』


 慌てる俺に向かってミルー様はそうポツリと言葉をこぼした。


『…この間のパーティの時に仲のいい令嬢に言われたのよ。土属性はありふれた属性だって』


『…それは』


 それは本当のことだ。だけど今のミルー様にそれを言うのはなんだか憚られてしまって言葉が続かない。


『…だけどそんなの信じられなくて屋敷に帰ってから一生懸命本を探して調べてみたけれどお父様達が言っているような特別だってことは本当に一切書かれていなかったわ…』


『……』


『…私、ずっと土属性は特別な属性だって思っていたわ。だからこそお父様達がお姉様を見下すのもそれを持って生まれなかったお姉様が悪いんだと思っていた。だけど土属性が特別でないのならそこまでお姉様を馬鹿にする意味がわからない。それに誰がどの属性を持って生まれるかなんて所詮は運なのでしょう?必ず親と同じ属性の子どもが生まれるかはわからないって本にも書いてあったしジージルも両親とは違ったわよね?…たまたまお姉様は風属性を持って生まれてしまっただけ。それなのにどうしてお父様達はお姉様やジージルを虐めるの?私達は別に特別でも選ばれた人間でもないのに。でもそれを言ってもお父様もお母様も「土属性ではないのだから当たり前の対応だ。土属性以外に価値はない」って言って怒るのよ』


『………』


『どうしてそこまで土属性にこだわるのかわからなくて混乱したわ。でもその時にね、ふと思ってしまったのよ。じゃあ私は?って。価値がないっていうのなら私が土属性じゃなくなってしまったらお父様達はどうするんだろうって。だから私、2人に聞いてみたのよ。私がもし土属性じゃなくなったらどうする?ってそれでも愛してくれる?って。そうしたらお父様達なんて答えたと思う?』


『…なんて答えたんですか?』


『「あり得んな。そうなったらお前もあの出来損ないみたいになるだけだ」「せっかくここまで可愛がってきたのに全て台無しになってしまうわ」」って言って簡単に笑うのよ?あれだけ可愛いだの大切だの言っていたくせに酷いと思わない?』


『っ』


 ミルー様が泣きそうな顔で笑う。


『…ねぇジージル。私って何?今までお父様達の言うことをちゃんと聞いて生きてきたのにお父様達にとって私は土属性を持っていることしか価値がない人間なの?』


『っそんなことは!!』


『……お世辞ならいらないわよ。…私、その時初めてお姉様が羨ましいと思ったわ』


『え?』


『…お姉様はお父様とお母様には嫌われているけれどジージルみたいにお姉様を大切にしようと守ろうとする味方がたくさんいるわよね?なのに私には誰もいないのよ。お父様とお母様だけが私の味方。お父様達が正しいと言っていることを私はしているだけなのにみんな私から離れていく。お父様達の言うことを信じてそれを外で言えばみんなから笑われてみんなが離れていく。もうお父様とお母様の何を信じていいのかわからない。だって言うことを聞けば聞くほど私からみんな離れていくもの。調べれば調べるほどお父様達が言う言葉は間違っているって思ってしまうもの…。…だけどお父様達以外誰も何も私には教えてくれないのよ。何が正しいのか悪いのか誰も私には教えてくれないっ!私はこれから何を信じてどうすればいいのよ!!』


『………ミルー様』


 ミルー様が悲痛な声で叫ぶ。


 屋敷の者達は気軽にミルー様に話しかけないように言われている。それにミルー様には常に子爵夫妻が張り付いていて本当のことを言いたくても言えないし、子爵夫妻からの不興を買いたくないからみんなミルー様には近づかない。こんなにも弱っているミルー様なんて初めて見た。


『…ジージル教えてよ。私って変なの?私は何か間違っているの?…お願いだから教えてよ…』


『……っつ!』


  涙を必死に耐えようとしながらもポロポロとこぼしてしまっているミルー様の姿に胸が締め付けられどうにか泣き止んで欲しい一心で抱きしめる。


『…っジージル?』


『ごめんミルー様。俺ミルー様もあいつらと同じだってずっと思ってた。ミルー様のこと何にも知らなかったのにごめんっ』


 ミルー様も子爵夫妻よりマシだったとしても所詮は土属性主義の頭がおかしな人だと思っていた。だけどやっと本当の意味であの時ルルー様が言っていた言葉の意味がわかった。なんで子爵達と同じだと思ってしまったんだろう。まだミルー様は小さいんだ。両親の言うことが全て正しいと思ってしまっていてもおかしくないじゃないか。あれだけずっと張り付かれているんだから。それでもミルー様はそのまま流されず、おかしいと気づいてどうしてなのかを考えられる人なんだ。…このままミルー様が間違った道に進んでしまう前にちゃんと教えないと。これ以上こんな悲しい顔をしていてほしくない。ミルー様にはこんな顔は似合わない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

婚約者を妹にあげました

あんど もあ
ファンタジー
私の妹ポーリィは、私の持っている物を何でも欲しがってはすぐに飽きて捨ててしまう。そんなポーリィが次に欲しがったのは、私の婚約者ユージン。 「ポーリィ。人間は、飽きても捨てるわけにはいかないのよ」 「今度は飽きないわ!」 「私はポーリィを一生愛すると誓う!」 「ユージン様がそのお覚悟でしたらいいのですが……」 ポーリィとユージンは婚約するのだが……。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

処理中です...