私、あなた達の味方ではないから。

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10.sideジージル

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『ミルー様。ミルー様の常識と俺の常識の擦り合わせをしましょう』


『……擦り合わせ?』


『そうです』


 ミルー様が安心できるようにできるだけ優しく微笑む。


『今ミルー様は子爵夫妻から教えられたことと実際との違いに苦しんでいますよね?だから俺の知っていることをミルー様にちゃんと全て教えます。そして今度一緒に外に出てみませんか?』


『……外?外ってもしかして屋敷の外のこと!?』


『はいそうです。ミルー様だって実際見てみないと俺だけの言葉じゃ納得できないものもあるでしょう?』


『た、確かにそうだけど…でもそんなことできるわけが…』


『できます。俺に任せて下さい!』


 不安そうに俺を見るミルー様に胸を張ってできると宣言する。ミルー様を上手く外に連れ出すことができるかはわからない。それでも必ずミルー様を外に連れ出してみせる。ミルー様は外の世界と遮断された生活を送って子爵夫妻から与えられる間違った知識しか持っていない状態なんだ。だからこそミルー様に外の世界を見せてあげたかった。


『…本当に連れてってくれるの?』


『はい』


『ジージルが?』


『はい。俺がです』


『絶対よ?約束よ?』


『はい約束です。絶対に見に行きましょう』   


 確かめるように何度も言葉を重ねるミルー様に大丈夫、必ず俺が連れて行くと伝える。するとミルー様がそんな俺を見て笑った。


『…ありがとうジージル』


『っは、はい』


 その初めて見るミルー様の意地悪な笑顔以外の笑顔にドキッとして言葉が吃ってしまったーー。


 それから2人で会う機会を増やした。ミルー様が何とか両親の隙をつき俺との時間を作り出してくれたのだ。そうして2人で色々な話をした。ミルー様はやっぱり洗脳のような教育を子爵夫妻からされており、本も土属性に関する本がほとんどで他の属性に関しては自分達よりも劣る属性としか教えて貰えていなかったようだ。そして、約束通りルルー様にも協力してもらいながら何とかこっそりとミルー様を街に連れ出し普通の生活というものに触れる機会をつくることができた。初めて触れた外の世界に目をキラキラとさせるミルー様はとても可愛かった。


 そうして外の世界に触れ、話を重ねていったことでミルー様は自分の両親達の異常さを理解し高飛車な態度は相変わらずだが、寂しがり屋の常識人に育っていった。


 ミルー様はすごく不器用な人で高飛車な性格だけど俺もルルー様もミルー様の優しさにはちゃんと気づいている。俺はいつの間にかそんな不器用なミルー様に惚れてしまっていた。いつもいつもこの屋敷に引き取られる前からルルー様のことを1番に気にしていたはずなのに目を離せば部屋の隅で泣いているようなミルー様から目が離せなくなり、ミルー様のために強くなろうとしている自分がいた。そんな俺をルルー様はやっぱりというようにクスクスと笑っていた。


 ルルー様は両親には虐げられてはいるが運は悪くないのかそれなりに日々を過ごしている。それにルルー様の味方は多い。だからこそ俺はミルー様1人に集中できる。今の俺にとって1番大切なことはミルー様が幸せになってくれること。俺がミルー様を幸せにできたらそれが一番いいとは思うがそうなるとミルー様をここから攫わなければならない。俺が子爵夫妻に認められることなど天と地がひっくり返ってもあり得ないことだから。だけどミルー様は貴族だ。俺と逃げるということは両親や貴族の生活すらも捨てると言うこと。


 できるだけ不自由な思いはさせたくない。そのためにも子爵家で働いていても微々たるお金しか渡されないため冒険者として鍛え一生懸命お金を貯めた。それにミルー様は子爵家のご令嬢で、両親から溺愛されている。だからこそ追手を放たれた時のためにも腕っぷしだって必要になるだろうと思い強くなるために努力を重ね準備を整えていった。だけどいざとなるとミルー様に全てを捨てさせてもいいのか悩んでしまって言葉にできない。まず告白すらも出来ていないし、ミルー様が俺を受け入れてくれるかすらもわからない。なのに準備だけはもう万全にしてしまった。


 最近ルルー様から何をやっているんだという無言の圧を感じる。わかっているからもう少し待って欲しい。今の状況でミルー様に告白してオッケーをもらったとしても、ルルー様がこの屋敷にいるのなら一緒に逃げようと言っても絶対に断られるに決まっている。だからこそルルー様が嫁入りするかこの家から出る辺りに告白をと思っていた。もしその間にミルー様が誰かと結ばれることがあればもちろん祝福する気持ちだってあった。だけど…


『お姉様の婚約者であるカーバル様から婚約の打診が来たのよ』


『義務を果たしてくれるのなら浮気をしても気にしないし愛も求めないわ』


 いそいそとミルー様が来るかもしれないと思って毎日この畑に通い、今日は来たんだと心の中で喜んでいる時に放たれたまさかの言葉に固まってしまう。


 …なんだよそれ。誰でもいいと何も望まないと言って最低な奴と結婚するくらいなら俺は無理矢理にでもミルー様を連れてここから出て行く。そんな相手にミルー様を渡したくない。ミルー様には幸せになって欲しいんだ。ずっと好きだったんだ。誰でもいいと言うのなら俺と結婚して欲しい。逃げてもいいと思っているのなら俺と一緒に逃げてほしい。俺は絶対にミルー様を裏切らない。必ずミルー様だけを愛し、幸せにすると誓う。だからどうかこの手をとって俺を選んでくれ。


「ミルー様…。ずっと前から好きだった。必ず幸せにするから俺と一緒に逃げて欲しい」










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