生き返った俺は、今度こそ親友を救いたい

タッター

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16.花植え

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「んー」

 ここはこの色でこうやって植えて……

 庭のど真ん中で、頭に描いた構想を実現すべくユーグが用意してくれた小さなスコップを使い、魔力を込めて強化しながら固い地面を掘り進め、花を植えていく。

 ひたすら縦、横に色・種類バラバラの花を植えて、今度は黄色の花をと掘った穴に入れて土を被せていると、後ろから声がかかった。

「魔王様の最愛様は一体何をしてるんだ?」

「ああ?」

 なんだその嫌味は。

 揶揄いと笑いを十分に含んだ声に首をもたげると、オレンジの髪をした男がいた。

 上に伸びる尖った角に、ガタイはデカく、纏う戦衣から見える腕の筋肉は羨ましいほど太くてよく鍛えあげられているのがわかる。
 だけど、面白そうに弧を描く金の瞳がどこか子どもっぽい。

「何してんだイグニード」

 軍部を司る一族の直系であり、現在進行形でこの国を護る将の地位に就いているイグニード・ゴルドだ。

「ししっ! いや~ルクスがなんかやってるなって様子見にきたんだよ」

「遊びに来たの間違いだろ。イドラ……親父に怒られんぞ」

「親父は最近机仕事ばっかで現場になんて来ねぇから大丈夫だって。部下には訓練メニュー考えてちゃんと指示も出してるしちょっとくらい平気平気!」

「そうかよ」

 軽いなぁ、と苦笑する。

 実力でいえばこいつ一人で小さな国なら一日で滅ぼせるくらいの力は持ってるはずなのに、茶目っ気に笑う姿からはなかなかに想像できない。

 何事も優等生タイプのユーグと違ってイグニードはわんぱく小僧って言葉がよくあってる気がする。

 軍に入ることになってからも俺に普通に接してくるタイプだ。人前では頑張ってるけど、もともと敬語や畏まったことが苦手な奴だから普通に俺に話しかけては親父さん達に「もっと畏れ!」と拳骨をもらっている。

 でも、イグニードの家系は全員そうだからな? ちゃんとしろって殴る親父もその親父にやられてたし、その前も同じだ。
 血筋ってすごいわ~。

「で、……なにしてんだ?」

「見てわかんねぇのか。庭作ってんだよ」

「庭? あー庭か……ユーグから話は聞いてたけど……なんかルクスって独特な感性を持ってるよな」

「どう言う意味だコラ」

「いや、だってこれさ」

 イグニードは俺の隣に腰を下ろすと、植えたばかりの花をツンツン突き、茎を持ってシャキッと伸ばした。

「「…………」」

 伸びた花はイグニードが手を離せばすぐにシオシオと萎れていく。

「……はじめっから萎れた花だったのか?」

「……手配して受け取ったのユーグだぞ? あいつがそんなヘマするか」

「ならルクスが不器用なだけか……」

 くっ! そうだよ、悪いかよ!!

「全部萎れてんだけど……。これ見てたら花植えて庭を明るくしようとしてんのか、逆に見るものを侘しくさせようとしてんのかわかんなくなるな……」

「ほっとけ!」

「色植えのセンスもないし……」

「わざわざ口に出すな!」

 頭では完璧にできてんだよ! けどなかなか上手くいかねぇんだよ! この固い地面のせいじゃねぇの!?

 同情的に見てくるイグニードは無視して、俺はスコップで地面を刺して土を崩していく。

「あれ全部植えんの?」

「ああ」

「一人じゃ無理だろ。城の連中にも手伝ってもらえよ」

「仕事してる手ぇわざわざ止めるもんでもねぇよ」

 俺が植えるって言って急遽用意してもらったもんなんだから。できるところまでは自分でやるつもりだ。……できるところまでは。

「そうか? 暇なやつもいんだろ。俺んとこの兵も貸そうか? 森の魔物掃討イベントもこの間終わったし、今平和で鍛錬と見回りしかやることがねぇんだよな~。どうせこれも俺達の王様のために必要なことなんだろ? なら全員喜んで手伝うと思うぜ?」

「全員手伝ったらダメだろ」

 お前ら鍛錬好きだろ? ならそっちやっとけ。

 苦笑しつつ、掘った穴に今度はピンクの花を植えようとすれば、横からスコップも花も取り上げられた。

「最愛様が一人寂しく庭いじりしてんだ。そっちの方が見てらんねぇって」

「言い方考えろよ?」

 イグニードはピンクの花を置いて、代わりに隣に植えた黄色い花と同じ色、種類の花を取って手際よく埋めていく。

 俺が植えれば下を向いて萎れるのに、イグニードが植えるとちゃんと上を向く。なんでだ。

 ザクザク土を掘り進め、花を植えていくイグニードからはスコップが返ってきそうな気配はない。
 仕方なく、俺はユーグが用意してくれていた道具入れからもう一本スコップを取りに行った。

「そういえばルクス、この間冒険者逃しただろ?」

「逃したな」

「その理由、教えてもらっといていいか?」

「ん?」

 スコップと、ついでに持ってきた花が入った箱を置いて、イグニードの隣に腰を下ろし直す。

「新入りがすごい勢いで喚いててな。『なんであんな人間共を生かしてルクス様が怪我をしなきゃなんないんだ!!』とかなんとかで、いまだに怒り心頭状態なんだよ」

「ああ。ははは! そんな怒ってんの?」

 頭につい数日前に見た、冒険者達を返すのにスッゲェ不満そうにしていた魔族の子が思い出された。

「そりゃルクスは魔王様の最愛様だからな。魔王様とおんなじくらい人気だし、ルクスが傷つくのをよしとする魔族なんていねぇよ」

「……だからその最愛って言い方やめろよ」

「えー無理だろ? 国民全員の共通認識なんだからさ。ルクスも知ってんだろ?」

「知ってるけど俺はお前に言ってんだよ」

 自分の話が絵本にまでなってて、そういう認識がついちまってるのは知ってる。
 そのおかげで、その辺ふらふらしてるだけの、特になんの役職についても、役に立ってるわけでもない俺が城ならず外でもウェルトと同じような扱いを受けられてるわけなんだしな。

 だから複雑であれど文句を言うつもりはない。ないけどイグニード。テメェのそれは俺をおちょくるためにわざと使ってきてるだけだろうが。

 睨むも、イグニードは「しし!」っと笑って俺が持ってきた箱からまた黄色の花を取り出し植える。
 そこからさっき俺が植えようとしていたピンクの花を取り、今度はその色ばかりを植えていく。

 なるほど。その植え方もありだな。

 ウェルトが俺の墓に植えてくれてた花が、色とりどりで綺麗だったから俺もと思っていたけど、種類を揃えて一緒の色を植えて、そこから変わっていくのも味があっていいかもしれない。
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