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プロローグ
3.どうして…
しおりを挟むどうして謝るのですか?何故そんな悲しそうなお顔をして泣くのですか?何故私の言葉を信じてはくださらなかったのですか?
…私がそんな思考の渦に飲まれている時、1人の女性が部屋に入ってきました。
「ーーヨルト様!!っ!!いや…いや!!ヨルト様!!」
部屋に入ってきた女性はとても取り乱しており、その目に旦那様を収めると側にいた私をつき飛ばし、旦那様に縋り付いて狂ったように泣き叫びます。
「ヨルト様!ヨルト様!!あ、あ…あぁあ゛ぁぁ!!」
彼女は旦那様の幼馴染であるロゼリア様です。…そして、旦那様の愛人さんだと思います。
「ああ゛ぁぁあどうしてこんなことに!!」
…どうして?…本当にどうしてなのでしょうか…。私は旦那様から飽きられていたのではないのでしょうか?
初めは旦那様も私のことを愛しているとよく言って下さっていました。でもいつからか言われなくなりました。そして、仕事から帰って来る時間も遅くなり、私と顔を合わせることもなくなりました。結婚当初はよくしていたお茶もお出かけもいつの間にかなくなり、食事の際に顔を合わせることもありません。…そして、いつも幼馴染であるロゼリア様を優先していました…。だからこそ、旦那様は私に飽きてしまい、今度はロゼリア様に愛を囁いているんだと思っていました。それに屋敷に遊びに来たロゼリア様がお2人の関係を匂わせるようなお話をよくしていましたし、たまに顔を合わせた旦那様もいつも何かを堪えるようなお顔をされていましたから…。
…ですが旦那様は私を愛していたと仰っていました。訳がわかりません。それに旦那様は何故、私から嫌われていると思っていたのでしょうか?あんな悲しいお顔を最後になされるくらい私は旦那様に何か酷いことをしてしまっていたのでしょうか…。
「…あ……」
その時、1つのことが思い浮かびました。
…そう言えば私から旦那様に「好き」や「愛している」などの言葉を伝えたことはあったのでしょうか?
「………」
……考えてみれば私は旦那様に自分から声をかけたことなどあったのでしょうか?自分から声をかけるのは恥ずかしくて、どんなお話をしていいのかわからなくて旦那様からお話ししてくれるのを待つだけでした。お出掛けは?お出掛けもそうです。旦那様は「デートだな」と笑って手を繋ごうとしてくれたのに恥ずかしくてその手から逃げてしまいました。食事も旦那様と向き合って食べる事が恥ずかしくていつも下を向いていまし、お話し中も同じです。
あの頃の私は憧れである旦那様と結婚できた幸せとそんな彼から与えられる溢れんばかりの愛にいつも照れて俯いてしまっていたのです。
その時に旦那様はどう思っていたのでしょうか?……私はただ恥ずかしいからといっていつも旦那様を蔑ろにしていなかったでしょうか?
…それに旦那様の笑顔を最後に見たのはいつだったでしょうか?結婚当初はよく見せてくれていました。だけどいつからか全く見る事がありませんでした。それがいつなのかも思い出せません。それ程までに私はいつも下を向いていて旦那様と顔を合わせた事が少なかったのです。
「あ、あ……」
私は最低なことを旦那様にしていたのかもしれません。…何故私はこのような状況でないとこんな愚かな行いに気づかなかったのでしょうか?
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