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プロローグ
2.混乱
しおりを挟む…何故旦那様は謝るのでしょうか?
「今まで君を縛りつけてしまい本当にすまなかった…」
「…縛り付ける?」
「ああ、権力を振りかざし…君の意見を何も聞かずに強引に結婚したことを…いつも後悔していた…」
「………」
…縛り付けられた覚えも権力を振り翳された覚えも全く身に覚えがないのですが…
「…ずっと好きだったんだ…。…結婚してからも君を知れば知るほど愛おしく、愛する気持ちが強くなっていった…」
「………え?」
……え?
…今、旦那様は私のことを愛おしいと言いましたか?
「ふっ…馬鹿だなぁ。君に愛されていないことも…嫌われていることもわかっていても君を愛する気持ちを止めることができなかったんだ…君が側にいてくれるだけで私はとても幸せだったんだ…」
「………」
そう言って何処か遠い目をしながら自嘲の笑みをこぼす旦那様に頭が混乱してしまいます。
旦那様の仰っていることに理解が追いつきません。私は旦那様に飽きられていたのではないのでしょうか?それに私が旦那様を愛していない?嫌っている?どこでそんな間違ったことを?そんな私の混乱に気づかず旦那様は言葉を続けます。
「…だが、君の辛そうな表情を見るたびに申し訳なくなった…。だから…本当は私達の3年目の結婚記念日である今日に、白い結婚を理由に君を解放するつもりだった」
「……白い結婚?」
白い結婚とは何でしょう?それに解放とは……?旦那様は私と今日、離婚するおつもりだったと言うことでしょうか?やはり私は旦那様に嫌われていたのですか…?ですが、先ほど愛していたと言われたばかりです。
…ますます頭が混乱してしまいます。
「旦那様…。仰っている言葉の意味が私にはわかりません。解放とはどう言う意味なのでしょう?それに私は……」
それでも何か言わなければと言葉を紡ぎますが、最後にこんな言葉を言ってもいいのかと戸惑いに下を向いてしまいます。それでも…
「……私は旦那様を愛しています…」
旦那様の仰りたいことは分かりませんが、私は私が思っていることを伝えました。私だってずっと旦那様のことが好きなんです。
「…嘘は吐かなくてもいいんだ…ユユ」
…嘘?その言葉に跳ねるようにして顔を上げた私の目に映った旦那様は傷ついたような…とても悲しい表情をしていました。
「っ嘘ではありません」
何故、今嘘をつく必要があるのですか?私はただ本当の気持ちを伝えただけです。それなのにどうしてそんなお顔をなさるんですか?
「…そうか」
私が嘘ではないと言っても旦那様のお顔は晴れず、どこか諦めているようにも見えました。
「…ユユ…本当に私は君を愛していたんだ。こんな形で君を解放することになってしまってすまない…もう私から解放されて…幸せになってくれ」
「っ!旦那様?どうしてそのようなことを仰るのですか?意味がわかりません!旦那様がいなければ私は幸せになんてなれませんっ」
何故そんな風に仰るのですか?まるで最後かのような言い方を。旦那様がいなくなって私が幸せになれるわけありません。お願いですからそんなことを仰らないで下さい…。
そんな想いから涙があふれでる私の頬を旦那様が触れます。そして、
「…ユユ…今までありがとう。君が私の妻となってくれてとても幸せだった…愛している。……本当に…ずっと…すまなかった…__」
「……旦那様?……っ旦那様!!」
旦那様は最後にまた、私に謝り、その瞳から一粒の涙を流すともう二度と目を覚ますことはありませんでした。
私はそんな旦那様を見て愕然とします。だって幸せだと言いながらその表情は依然として悲痛なものだったんです。
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