性別詐称王女、ノエル殿下の暗躍

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3. 初夜

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 調印式が終わったので、法的には二人は既に伴侶だった。今日は夜伽があるのだろうか、とノエルは考える。普段着に戻るとベッドに倒れ伏した。他人の視線には慣れているノエルも、さすがに疲れていた。
「お疲れですね」
ジョエルがお茶を淹れてくれる。ノエルは唸り声だけで返事とした。
「甘いものもありますよ」
「食べる……」
ジョエルはドライフルーツたっぷりのケーキを一切れ、皿にサーブしてくれた。ノエルはうつ伏せのまま、顔だけを向けてそれを眺めた。こうして見ていると、ジョエルは白髪混じりの、何の変哲もないおじさんに見える。
「男同士の夜伽について、ジョエルが教えてくれた内容だが」
ノエルが口を開くと、ジョエルはぴたりと動きを止めた。一瞬だけ見せた動揺はすぐに鳴りを潜め、また動き始める。
「はい、なんでしょう」
「肛門を使う方は、できるようになるまでに時間がかかるのだったな?」
「……はい」
「夜伽はないだろうと思っていたので考えていなかったが、できるようになったほうがいいのだろうな……」
ジョエルは今度こそ手を止め、「ノエル様」と硬い声で言った。
「ノエル様がしたくないのであれば、お断りしていいのです」
「ん?」
「ノエル様が夜伽にご不安があるのであれば、私が手を回していかようにでも……」
ノエルは慌てて止めた。ジョエルが本気になったら、ベンジャミンに一服盛って不能にしかねない。
「ち、違う、違う! やめろ!」
「違いましたか」
ジョエルは飄々と言った。ノエルは枕に顔を埋める。
「不安は、不安だが……ただの緊張だ」
「緊張、でございますか。ノエル様が」
ジョエルの言葉に、ノエルは小さく笑った。
「この私が、だ。この私が、うまくいくかどうか、やってみる前から悩むなど」
「もし乱暴にされたら大声でお呼びください」
ジョエルが淡々と言った。
「いつでも乱入してお救いします」
ノエルは叫んだ。
「やめろって!」


◆◆◆


 備え付けの浴室には湯が引かれており、いつでも浴槽に貯められるようになっている。ノエルは身を清め、ジョエルの作成した手引き書に従ってあらぬところまで綺麗にして、ベンジャミンを待った。
 そう間をおかず、部屋を隔てる扉がノックされた。ノエルはベッドの上で背筋を伸ばす。
「はい」
ベンジャミンが入ってくる。ベッドの上で待っているノエルに、驚いた顔で固まった。ノエルはナイトガウンだけを身につけている。髪も湿っていた。
「ベンジャミン様?」
ノエルが声をかけると、ベンジャミンはハッと硬直から解かれた。
「あー、その、今日は簡単な触れ合いで、慣れてもらおうかなと思っていたのだが」
ベンジャミンは扉のところに立ったままだ。
「簡単な触れ合い、とは」
ノエルは疑問を投げる。ベンジャミンは視線を泳がせた。
「その……口づけをしたり、抱き合ったり」
「ベンジャミン様」
ノエルははっきりと呼んだ。ノエルが尻を差し出す覚悟をしてきたというのに、大の男がいつまでもモジモジと……と苦言を呈したくなる。ベンジャミンが優しいためだというのはよく分かっていたので、ただ呼んだ。
「早く、いらっしゃってください」
ベンジャミンはごくりと唾を飲み込んだ。


 ノエルが手を引いて促すと、ベンジャミンは大きな犬がお伺いを立てながら近づいてくるような動きで、おずおずとベッドに乗った。
「できるところまで、してください」
ノエルははっきりと伝える。
「ノエル様」
「いいですか、遠慮はいりません。むしろ、ひと思いにやってください」
ベンジャミンは怖い顔をした。困っているようだ、とノエルは察する。
「……やはり、今日は無理でしょうか?」
少し不安になって聞いた。ベンジャミンは肯定する。
「無理でしょう、その……これなもので」
ベンジャミンは自分のナイトガウンを少し寛げて、下半身のものを見せた。ノエルは動揺する。とてもではないが、一朝一夕で入る大きさではない。
「お分かりいただけましたか」
「大変よくわかりました」
真剣な面持ちで頷きあった。ベンジャミンは子どもに言い含めるようにして、ノエルに言った。
「今日は、ほんの少しだけにしましょう」
ノエルは頷いた。


「ちょ、ちょっと待って」
ノエルはまさか男性器を触られるとは思わず、つい待ったをかけた。ベンジャミンは律儀に手を止める。
「あの、触るんですか、それ」
「駄目でしょうか」
「だ、駄目では……ないですが」
女性的な役割を求められるものと思っていたので、男性器に触れられることは想定していなかった。寝転がって尻を差し出せばいいと思っていたのだ。男性同士ではお互いの男性器の愛撫を性交とすることもある、というジョエルの資料を思い出し、なんて仕事のできるやつだと見当違いのことを思う。
 他人に性器を触られるのは想定外の気持ちよさで、ノエルは口を押さえた。
「ぁ、ん、ん、ん」
「声を出していいんですよ」
ベンジャミンは無骨な手で、ノエルの性器を優しく擦り、先端を舐めた。ノエルの腰が跳ねる。すぐに出てしまいそうだった。
「あっ、イヤ、ぼく、ぼく、こんな……」
腰をくねらせて、ノエルがすぐに泣き言を漏らすと、ベンジャミンは口を離し、かすれ声で聞いた。
「逝きそう?」
「い、いく?」
「極める時……男なら、性器から精液が出ることです」
「ん、い、いきそう……」
「そうか」
ベンジャミンは一度、性器への愛撫をやめた。準備してきたらしい香油を手に垂らし、ノエルの陰嚢付近を優しく揉みながら、へそを舐める。後孔を揉まれる感覚に、ノエルは抵抗した。
「あ、あ、いやぁ!」
「嫌?」
お前が言ったんだろうという言葉が言外に聞こえたが、ノエルはいやいやと首を振った。
「嫌か? 本当に? 本当に嫌?」
ベンジャミンはノエルの乳首を口に含み、舌で転がした。ノエルは身体をよじる。ベンジャミンは濡れた指先でノエルの慎ましい部分を優しく揉んでいる。
「い、やぁ、恥ずかしい……」
「やめた方がいいか?」
ベンジャミンの濡れた指が、器用にノエルの性器の先をくるくる撫でる。ずっと優しく撫でられている後孔が気持ちよく、ノエルは少しずつ脚を開き、わずかに腰を揺らした。
「や、やめないで……」
ベンジャミンが荒く息を吐き、深呼吸をする。ノエルに興奮していた。そのことにノエルはこれ以上ないほどの満足感を覚える。ノエルの後ろを揉みこんでいた指が、中に入り込もうとしている。もう片方の手は、陰嚢を優しく触り、その下の何も無い部分、女性なら陰唇があるであろう部分を、まるで性器を愛撫するかのように撫でる。ノエルは下腹が疼く気がして腰を揺らした。雌にされようとしているのかもしれない、と思い至って、さらに興奮した。
 ベンジャミンの太い指が一本、ほんの先端だけ挿入された。にゅるにゅるした先だけをゆっくり出し入れされると妙に気持ちよく、ノエルは熱い息を吐く。指が少しずつ奥に滑り込んできたが、ベンジャミンはノエルの萎えかけた前も可愛がってくれて、ノエルは心地良さに身を任せていた。ベンジャミンは指をゆっくり出し入れする。ムズムズするような不思議な感覚がして、ノエルは腰を揺する。
 ベンジャミンのものが勃っているのには気づいていた。ノエルはもぞもぞと位置を調整して、ベンジャミンのものに触れる。勃起するとさらに大きかった。触れただけでベンジャミンのものはビクリと震えた。
「ノエル……!」
ベンジャミンは唸り声を上げ、ノエルの性器を強く擦り上げた。指を奥まで押し込まれる。犯されている、と思った。ノエルは髪を振り乱し、ベンジャミンにすがりついて泣きわめいた。
「い、いく、いく、ぼく、いっちゃ」
「逝け……!」
「あ、あ、あ!」
ノエルの性器は精液を零した。ノエルは仰け反り、後孔に一本だけ差し込まれた指を食い絞めるように締め付け、快楽を味わうようにしてゆっくり痙攣する。深く呼吸をした。
 ベンジャミンはノエルの膝を割り、腰を押し込んでくる。まさかこのまま犯されるのか、とノエルは思ったが、違った。ベンジャミンの長大な男性器が、ノエルの柔らかい太ももに挟まれた。
 わぁ、これ知ってる、とノエルは思った。ジョエルの資料で見た。
 ベンジャミンは獣のように息を荒げ、ノエルの脚を抱え込むと、腰を打ち付けはじめた。ノエルの竿と玉がめちゃめちゃに擦られ、ノエルは仰け反って喘ぐ。ノエルが二度目の射精をしても、ベンジャミンは止まらなかった。ノエルが男に犯されている錯覚に陶酔しはじめた頃、ぐっと強く腰を突き出して、ベンジャミンは射精した。ノエルの腹に精液がぶちまけられる。
 ベンジャミンが覆いかぶさってくる。重い。分厚い身体に抱き締められ、ノエルは今まで感じたことのない充足感を覚えた。
「ベンジャミン様……」
ベンジャミンは黙って荒い息を繰り返し、しばらくしてからようやく、「大丈夫か」と言った。
「はい」
ベンジャミンは正気に戻ったようにハッと身体を起こし、離れようとしたが、ノエルが首にまとわりついて離れなかったので、元の位置に戻った。二人の腹の間はもう取り返しのつかないくらいグチョグチョだ。
「ノエル」
「はい」
「とりあえず湯浴みだ」
「はい」
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