おばさんですが、今日からヒロインらしいです。

まぐ

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第一章

ヒロインとして

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 手紙を読んでから、数日の間『ヒロインとして』私は何をしたらいいのか分からず途方に暮れていた。
 私の知る『ヒロイン』は要するに、物語に登場する女性のうち、最たる人物ってことなのよね。普通恋愛ゲームって言ったら、そんな私が攻略者と恋をしたら終わりじゃないの?でも悪役令嬢が主人公になる物語がみたいのよね、神は。

「ますますワケワカメ…」
「ワカメ??」

 思わず口から出た言葉をきいて、隣にいた私をのぞき込む。

「お嬢様、お腹でも空かれましたか?」

 幸いにもこの世界の食物は、私が元いた世界と同じものだ。出てくる食物も日本食が多い気がする。パーティーとかになると洋食になったりするのかな?私はまだこの家から出たことないから分からないけど。

「んーん、そんなことないわ」
「分かりました、また何かあったら言ってくださいね」
「んー」

 ふわりと微笑む侍女をみて、私もほっこりとした。
 産まれた時からずっと私の傍にいるこの侍女、恐らく歳は10代前半くらいだろう。茶髪の髪をおさげにかなり分厚いびん底のメガネをかけている。姿自体は地味~な感じなのだが、やはりそこはメガネマジック。一度メガネを外した姿をみたが、絶世の美少女といっても過言でないレベルの少女だ。そんな侍女の名前はメル。詳しくは聞いていないが、元々行儀見習いとしてやってきた男爵家の女の子なのだそうだ。

「メル、聞きたいことがあるのだけれど…」
「はい、お嬢様、なんなりと」
「メルは、恋愛ゲームとか悪役令嬢とか…聞いて何かわかる?」
「ええ、もちろん!今流行りでございますから!」
「そうよね、分からないわよ…え!!流行り!?」

 この世界でもそれって流行りなの!?
 流行らせたってことよね、どんだけ恋愛ゲーム好きなんだこの世界の神は!

「そうですよ、流行りなのです。今主流なのは、やはり悪役令嬢が主人公の物語ですね」
「そ、そこ…もっと詳しく…」
「悪役令嬢はですね、大体そのゲームの知識を持った異世界からの転生者だったりしますね!で、本来の悪役令嬢ならヒロインと攻略者を取り合って、悪いことをしてですね。それを断罪されて、追放されたり死んだりする役なのですよ」

 ほお、悪役令嬢ってだから悪役なのね。それが物語の主人公になるって悪逆非道を貫いた上に追放されたり死んだりしないってことなのかしら?

「でも最初に言った通り、ゲームの知識を持った異世界からの転生者であることが多いので、追放されたりすることのないようになんとか恋愛フラグを回避しようとするのです。
 悪いことをしていない悪役令嬢は、むしろ大変に魅力的であることも多いので、最終的にハッピーエンドを迎えることが多いですね」
「ふーん…なるほどね…。でもヒロインと取り合ってるのよね?ヒロインはどうなるのよ」
「最近は、わりとヒロイン側もゲームの知識を持った異世界からの転生者であることが多くてですね。攻略者と結婚しようとしているのに邪魔するはずの悪役令嬢が、何にも邪魔しないものですから、自分で色々しでかしてかえって悪役ぽくなること多めですね」

 私はそのヒロインなのよね?つまり私が悪役ってこと??

「そもそも悪役令嬢は、元々攻略者と婚約関係があったりすることが多いですし、ヒロインは男爵家とか身分が低いことも多いですので、悪役令嬢の方が悪役であるという点をのぞけばどう考えたって勝ち目があるのですよね~」

 ヒロインは身分が低い、か。でも私公爵家の人間だし、身分は高いんだけど。

「ヒロインも身分が高い場合は…?」
「その場合、ヒロインも悪役令嬢も同じ身分でしょうね!王子の取り合いでもするのかもしれませんよ!」

 キラキラとした笑顔で、侍女が笑う。めっちゃ詳しいな、ほんとに流行ってるんだ…。
 となると、私は本当にどうしたらいいんだろう。

 カイラスは攻略者でしょ?まだ会ったことないけど、カイラス含め4人の攻略者と悪役令嬢が存在するのよね。
 悪役令嬢が、仮に第一王子のカイラスと婚約したとしたら、いとこで仲の良い私が邪魔になってきて私に悪いことするって感じなのかしら。そうこうするうちに、カイラスと私に恋愛感情が芽生えて悪役令嬢は追放される…こんな感じ??
 そのことを知っている悪役令嬢は、追放されるのを回避するために私に対して悪いことをしない。だからヒロインとして私は悪役令嬢とカイラスがひっつくようにしていけば…良いのでは!?
 私やっぱり天才児なのかもしれない。

「あれよね、私がもしヒロインだとしたら悪役令嬢の恋を応援したらみんな幸せってことよね」
「ん?なんだかそれはちょっと違うような…?」

 侍女の言葉を無視し、私はソファから勢いよく立ち上がり、ガッツポーズをとる。

「いいえ!違うことないわ!きっとこの道でいいのよ!ヒロイン道!このまま突き進んでやろうじゃない!」

 そうと決まれば、さっそく私は悪役令嬢が誰なのか突き止める必要があるわよね!
 これからみんな幸せになるためにがんばるぞ~!!

 気づけば私は困惑する侍女の傍でドヤ顔でふんぞり返り、高笑いをしていた。のちに、侍女にはしたないと叱られたのは言うまでもない。

 見てろよ神、お前が最高に楽しいと思える物語にしてやるからな!


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