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二、開花
二、開花 ⑧
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「あのう、竜仁さん」
「お、いいですね。名前で呼ばれると新婚みがある」
全く新婚感は感じられなかったが、僕は彼の目の下の隈を指さす。
「僕が寝返りを打つ度に起き上がって、確認してくるのやめてもらっていいでしょうか」
「あれ、気づいてたの」
縛られていたら寝返りを打ちにくいから睡眠が浅くなるのだけど、いちいち心配して一緒に起き上がってくるのはやめてほしい。
しかもこれみよがしに、目の下の隈をアピールして、寝不足だ。
僕はそれほどひどい症状もでなければ、痒くなることはない。
これは運命の番とやらの彼の精を腹が膨らむほど受け止めているおかげなのかもしれない。
流石にだるそうにしている僕を見て躊躇したのか、セックスは毎日ではなくなったけど。
「隣で一緒に眠ればいいじゃないですか」
「まだ、それは無理なんだ。番の私でも君の香りは、隣で長時間嗅ぐのは負担が大きい」
「へえ。一応はちゃんと効いているんですね」
効かない薬か抑制剤を飲んで、効果を薄めているだけなのか。
この花の効果が無いアルファが居るはず無いんだ。
「そう。だから、私を酔わせたいなら貴方から密着してくれてもいいんですよ」
「嫌ですけど」
「でも逃げられるかもよ」
意地悪そうに笑うと、ソファに座って、自分の太ももを手で叩く。
流石に成人した男が、同じく成人男性の太ももなんかに座らないと思うし、座った自分が滑稽だった。
「おいで」
「いきません。はやく朝ご飯でも作ってきたら」
「いいから、ほらほら」
セクハラオヤジか。
なんて思ってしまう。いや、番じゃなくても番でもしないでしょ。
「祖母の形見一つと交換です」
「頭良いなあ」
渋々と胸ポケットから鍵を出して宝石箱を開けた。
信用して良いの。僕に鍵の場所ばれちゃったじゃん。
宝石箱の中にはまだ何十も宝石が鏤められている。彼は少し考えてから、薄い水色のハンカチを僕の手に渡した。
「使った痕跡がないのですが、もしかして気に入らなかったから宝石箱から出さなかったのかもしれないですね」
「え……この宝石箱自体が祖母のものなの」
「ええ。この部屋に置いていってましたがね。ちなみに、この宝石箱と貴方の首輪は同じ鍵でした」
「なんで?」
だから鍵がここにあったから、首輪を開けられてしまったのかな。
いつからここに?
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